女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「猫」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2022年12月11日 記事は取材時の状況)
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「生きるため、必死になって辿り着いたのが、我が家だったのかなと。仕事が休みで、たまたま外に出ていたからこそ、この出会いは奇跡であり、運命だったと思っています」
そう語るのは、エキゾチックショートヘアのしろちゃんと暮らす、しろママ(@46no_mama73)さん。
甘えん坊で人懐っこいしろちゃんとの出会いを通し、飼い主さんは動物と暮らすことの重みを考えさせられました。
◆ガリガリに痩せた迷い猫を保護
2022年1月2日の夕方。飼い主さんが隣に住むおじいさんと話をしながら、雪だるまを作っていると、どこからか猫の鳴き声が。声が聞こえるほうに目を向けると、白くて小さな猫が物陰から現れました。
「一生懸命鳴きながら、私の足元を歩き回りました。骨が手に当たって痛いくらい、ガリガリでした」
保護したい。でも、明日から仕事もあるし、私はこの子を本当に救えるだろうか……。迷った飼い主さんは動画を撮り、近所に住む猫に詳しいMさんに相談。迷い猫ではないか、調べてもらうことにしました。
そして、家の中にいた旦那さんに事情を説明し、ひとまず、しろちゃんを保護。動画を見たMさんは、すぐにフードやトイレシート、猫砂などを持ってきてくれました。
「お隣さんも、差し入れを持ってきてくれました。我が家は山奥にあり、お店に行くには30分ほども車を走らせなければならないため、とても助けられました」
◆元野良猫であることが判明。生きるために我が家に辿りついた
結局、飼い主さんらしき情報に辿りつくことはできませんでしたが、調査をする中でしろちゃんは12月半ば頃から野良猫であったことが判明。
「お隣の息子さんが出会ったという、バス停から着いてきた猫に特徴が似ていました。その子は、息子さんが『うちには猫がいて、もう1匹は飼えないんだよ、ごめんね』と謝ると、付いてこなくなったそうです」
目撃情報があったバス停から、飼い主さん宅までは徒歩で15分ほどもかかる距離。
「どのように過ごしてきたのか分かりませんが、しろは我が家の前まで辿りつき、私たちは出会うことができたんです」
◆どこか気を遣っているような愛猫の姿に心を痛めた
出会った当初、しろちゃんの体重はわずか1.7kgほど。
飼い主さんは保護後、動物病院へ連れていき、抗生物質や駆虫薬を投与してもらい、自宅で止血剤や眼軟膏などを投薬しました。
「とりあえずは体力が戻るのを待ちましょうとの診断で、純血種だったからか、こんな子が本当に外にいたのかと驚かれました。この時、生後半年から1歳未満だろうと言われましたが、1ヶ月後くらいに避妊手術のために健康診断をした際、実は4歳から7歳であることが判明しました」
どこかで飼われていたからか、しろちゃんは保護当初から人のそばにいたがり、撫でてもらうのも大好き。
しかし、気を遣っているのでは……と感じるほど、大人しかったのだそうです。
そこで飼い主さんたちは安心してもらおうと、とにかく話しかけ、優しくナデナデ。すると、甘えてふみふみしたり、体の上に乗ってきたりしてくれるようになりました。
「また、体臭がすごかったのですが、冬の寒い時期に体力が落ちている状態でシャンプーをするのは危ないと言われたので、毎日ドライシャンプーで体を拭いてあげていました」
◆今では帰宅するとお迎えしてくれるまでに
すっかり心を許してくれたしろちゃんは甘えたい時や空腹時、トイレの報告、撫でての催促など様々な時に鳴いて、気持ちを表現するようになっていきます。
今では飼い主さんが帰宅すると、玄関までお迎えにきてくれます。
「私たちが家に入るのを確認すると、真っ先にリビングへ入り、お気に入りの場所で私か夫が撫でてくれるのを待っています」
眠る定位置は、旦那さんの頭側に置かれた机の上。朝は4時に起床し、飼い主さんのアラーム音が鳴ると、部屋に起こしにきてくれます。
「私たちが起きてリビングに向かうと、ダッシュで追い越して、お気に入りの場所へ行き、撫でられ待ちをするんです」
◆心の支えになったしろちゃん
そんなしろちゃんは、食事の時にも甘えん坊さんな姿を見せてくれます。
「はじめはお皿からご飯を食べるものの、半分ほど食べるとスプーンで食べさせてほしがります。おやつのちゅ〜るも、スプーンから食べています」
ただし、抱っこはちょっぴり苦手。
「鼻が低い猫種なので、毎日、朝晩、食事の後に抱っこをして目の周りを拭いていたからです。今はちゅ〜るをあげつつ、目を拭いています」
全幅の信頼を寄せてくれるしろちゃんは、飼い主さんにとって心の支えだといえる存在。
「仕事などでストレスを感じた時でも、しろの姿を思い浮かべると頑張れます」
◆飼育放棄問題について考えるようになった
そして、しろちゃんとの出会いを機に、「動物を飼う」という行為について考えるようになりました。
「いつか動物と暮らすなら、保護犬や保護猫を……とは思っていましたが、しろと出会い、純血の子も捨てられてしまうという現実や身勝手な飼育放棄が多いことを初めて知りました」
そして同時に、悲しい現実の裏で小さな命を守ろうと奮闘している人たちがいることも痛感。
「しろの避妊手術でTNR(※野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元の場所に戻すこと)のサポートをしている病院にお世話になり、大勢の方が猫の未来や幸せを考えて活動していることを知りました」
無責任な飼育放棄を行う人と、それを阻止しようと努力する人。その両方が存在していることを実感したからこそ、飼い主さんはより一層、しろちゃんを大切にしようと思うようになりました。
「救われる命と救えない命があることを心に置き、目の前の命を守っていく。それが、自分たちにできることだと思っています」
「動物に優しい社会」を実現するには、まず自分の手が届く範囲の命を守っていくことが大切。そう気づかせてくれるしろちゃんと飼い主さんの日常が、これからも笑顔で埋め尽くされていくことを願います。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291