並ぶだけで「4時間1万円」の報酬…“転売ヤー”が暗躍し続ける背景に「中国の転売組織」の存在。企業が“利用する”事例も

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2024年12月09日 16:31  日刊SPA!

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メルカリで転売される「PlayStation 30周年アニバーサリー コレクション」。元値16万円台が、60万〜70万円で出品されている(発売日は11月21日、写真撮影時は11月25日)
近年、転売関連のニュースをよく耳にするようになった。
直近では11月21日、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが、初代プレイステーションの発売から30年を記念して、PS5の特別モデルを12,300台限定で発売した。価格は168,980円と高額ながら、たちまち商品は売り切れた。

しかし、購入者の一定数は転売ヤーと見られている。事実、メルカリでは、本体が60万〜70万円の高値で売り捌かれていた。

◆厳しい購入制限を実施するも…

販売側のソニーも、予約応募や購入条件として、

・日本で登録されたソニーアカウントでPlayStation Networkをご利用の方
・ご応募するソニーアカウントでサインインした状態で、2014年2月22日(土)から2024年9月19日(木)23:59までの期間に、PS5とPS4いずれかまたは双方の起動時間が合計30時間以上あること
・ご応募するソニーアカウントがMy Sony IDとサインインID共通化されていること

と厳しく制限を設けていたものの、転売ヤーを封じることはできなかったようだ。

また、11月初頭には、ハローキティの誕生50周年を記念した展覧会が開催され、限定品に群がる転売ヤーが殺到したことも記憶に新しい。

昨今、これだけ転売ヤーが跋扈するのはなぜか。『転売ヤー 闇の経済学』(新潮社)を上梓したフリーライターの奥窪優木氏が解説する。

◆買い子を“闇バイト”に勧誘するケースも

「転売ヤーが跋扈する背景には、中国の転売組織の暗躍が挙げられます。彼らは、日本の高く捌けそうな商材を大量に買い漁り、関税法を掻い潜りながら、本土に転売する集団です。

厳しい購入制限がある中で、大量に商品を購入できるのはなぜか。それはLINEのオープンチャットを通じて、“取っ払いの日雇いバイト”と詐称して、商材を買い付ける『買い子』や、店頭に並ぶ『並び屋』を募っているからです。

日雇いバイトに応募したSさんに聞けば、転売組織は店舗近くの駐車場に車を停め、応募者は駐車場まで指定の商品を運ぶよう指示される。一連の任務が完了すると、購入代金に1万円を上乗せした報酬がその場で渡されるそうです。Sさんと同じような買い子は、列を成して駐車場に待機しており、すぐにトランクは商材でパンパンになったとか。

また、買い子や並び屋を募集して転売組織に派遣する『人材業者』も存在します。そうした業者は、転売組織だけでなくさらに犯罪性の高い組織とも繋がっています。彼らのもとで買い子や並び屋の仕事を何度かこなすと、『もっと儲かる仕事あるよ』とスマホ契約や銀行口座解説の名義貸しといった、いわゆる“闇バイト”への参加に誘われることもあるようです。

中国人の転売集団は、表向きは貿易会社として登記していますが、内情はかなりグレーです。いわゆる犯罪集団が、犯行を指示する『指示役』、人員を集める『リクルーター』、犯行を行う『出し子』や『タタキ』といった階層に分かれているように、転売集団も構造が分かれているのです」(奥窪優木氏、以下同じ)

◆「稼働4時間で即金1万円」…誰が飛びつくのか

こうした「買い子」や「並び屋」のバイトは、「稼働4時間で即金1万円」のように割りのいい案件が多い。

そこで、時間を持て余した大学生や、リモートワークで融通が効くギグワーカーなどが応募に申し込む。そうした入り口から、国内でも個人の転売ヤーが増えていくという。

「最初は買い子や並び屋をしていた日本人が、転売で稼げることを知り、次第に自分で転売を始めるケースが増えていきます。特に20〜30代は、起業して手っ取り早く成り上がりたいと夢見る人も以前より多い。そうしたマインドに刺激され、転売に身を染めていく若者も一定数います。

また興味深いのは、転売にはある種のゲーム性があることです。限定品の発売時期を常時監視しながら、タイミングを逃さず商品を購入し、旬が過ぎないうちにフリマアプリなどで捌き切る。こうした一連の流れを経て、利鞘を獲得するのに、狩猟のような成功体験を感じているのでしょう。

加えて、商材が売れ残った時のリスクを回避できたと考えると、ギャンブルに勝った時のような快感も味わえる。そうして気付かぬうちに、転売ビジネスにのめり込んでいく人もいるのです」

◆企業が転売ヤーをリクルートする理由

転売が蔓延する一因には、企業側の黙認も大きい。当然、転売が横行するほど商品が捌けるため、企業からすれば儲けもんだ。

もっと言えば、企業側が話題作りの一環として、転売ヤーを利用する事例も見られるという。奥窪氏が続ける。

「企業側が、供給量を絞ってプレミア感を演出し、品薄情報を出す事例は散見されます。それで『発売5分で完売』『転売ヤーが殺到!』などと発信すれば、話題作りの一環にもなりますよね。そういう意味では、企業側と転売ヤーが、ある意味マッチポンプのような関係を築いているケースもあるのでは、と思います。

それからデパートの外商が、顧客が転売すると分かっていながら、希少なウイスキーや日本酒を提供している話もありました。デパートからしても、高額を使う太客との関係は切れないうえ、外商自身の営業実績にも影響してくる。転売を通じて蜜月関係を結ぶ巧妙なスキームです。

あと中国の話ですが、自社の商材を転売して儲けるインフルエンサーを高額で雇う企業もあります。要は、インフルエンサーが抱えているフォロワーは、企業にとってそのまま顧客になるので、転売ヤーと敵対するより囲い込んだ方が得策なんですね」

◆世の中から転売が根絶することはない

商材を大量に購入して、市場経済を大きく回す転売ヤーは、企業側も無視できないほど大きな影響力を持つ。それに購入者も、限定品であれば高値でも良いから手に入れたいという心理から、転売ヤーを経由して購入するケースは珍しくないはずだ。

こうした背景からも、転売が蔓延するのは必然と言える。事実、奥窪氏も「世の中から転売が根絶することはない」と断言する。

とはいえ、転売は決して推奨される行為ではないことも事実だ。

これまでもせどりや中古品販売ビジネスは栄えてきたものの、それらと転売が決定的に異なるのは、同じ商品を大量購入して市場を独占することだ。グッズなどの限定品も、一部の転売ヤーが買い占めることで、本当のファンに届かなくなる弊害がある。

加えて、転売は犯罪の加担にもなりかねない。一例を挙げると、酒類や医薬品など販売許可が必要なものを無免許で横流しした場合や、転売した格安スマホがフィッシング詐欺で抜き取った個人情報で契約していたケースなど、転売に付随する行為で法を犯しているパターンも考えられる。

我々のような一般人に必要なことは、転売のスキームや弊害を理解して、節度ある消費行動をとることに尽きるのかもしれない。

<取材・文/佐藤隼秀>

【佐藤隼秀】
1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬

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  • 転売ヤーは人海戦術や複数アカウントでのログインなどをやっているので、正当化は出来ない。
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