会議資料を一目見ただけで、その上司が「できる人」か「残念な人」かが分かる。そのように聞いたら、あなたはどう思うだろうか?
これは単なる感覚の話ではない。会議資料には、上司としての能力や姿勢が如実に表れるものだ。資料の質が高いか低いか。それだけで会議の生産性が変わり、組織全体の成果にも影響を与える。
なぜなら、会議資料は単なる情報の羅列ではなく、組織内コミュニケーションの重要な道具だからである。
組織マネジャーは自分の部署やチームで日ごろ使っている会議資料が本当に機能しているか、一度立ち止まって考えてみるべきだろう。資料の作り方一つで、組織の成果、生産性が劇的に変わることがあるのだから。
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今回は、残念な「ムダ資料」に共通する3つの特徴と、その改善ポイントについても解説する。ムダ資料をなくし、組織全体の生産性を高めるヒントを知りたい方は、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
●ムダ資料3つの特徴とは?
残念な上司が作る「ムダ資料」には、3つの特徴がある。
1. 入力項目が多すぎる
2. 何が問題なのか一目で分からない
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3. 上司が変わるたびに資料のフォーマットが変わる
それでは、一つ一つ解説していこう。
入力項目が多すぎる
多くの上司は、自分が知りたい情報だけを反映した資料を作りたがる。
例えば何が問題なのか、どの施策が成功しているのか、進捗状況はどうか。これらの情報を知りたいがために、多くの項目を資料に盛り込んでしまう。
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このように、多くの情報を求めた結果、資料が冗長になり、要点が分かりづらくなる。特にフリーフォーマットの資料の場合、具体性に欠ける内容になりがちである。
例えば「今月の売り上げが予算を下回った理由は何ですか?」といった問いに対し、部下が「多忙で十分な営業活動ができなかった」とだけ記載する場合がある。この曖昧(あいまい)な記述では、原因や具体的な改善策を見いだすことは困難である。
特に文章力が低い部下が作成した資料は、上司が読んでも内容が理解できず、会議中に説明を求めた結果、さらに混乱が生じることが多い。
何が問題なのか一目で分からない
残念な資料は、何が問題なのか一目で分からない。
文章がだらだらと書かれている、もしくは数字が羅列されているだけの場合、資料を読み解くために余計な労力が必要になる。これでは、資料が本来持つべき「建設的なコミュニケーションの道具」「意思決定を支援するツール」としての役割を果たせない。
例えば、異常値や課題がどこにあるのか、改善すべきポイントがどこなのかが分からない資料は、コミュニケーションを円滑にするどころか、かえって混乱を招く。
上司が変わるたびに資料のフォーマットが変わる
上司が変わるたびに資料の形式や内容が変更される。これは本当にマズい。組織全体のルールが確立されていない証拠である。
属人的な資料で運用されている組織では、上司が自身の好みに合わせて資料を変更し、前任者の形式を無視することが多い。
例えば新任のマネジャーが「このフォーマットは見づらいから変える」と言い、別の形式を導入する。この結果、過去のデータとの比較が困難になり、長期的な視点での分析や改善が難しくなる。
資料は、組織全体で一貫したルールに基づいて運用されるべきであり、上司個人の好みに依存するべきではない。
●生産性をアップする資料へ 3つの改善ポイント
では、どうしたら組織の生産性を上げられるのか? 資料を改善するには、以下の3点を意識すべきである。
1. 入力項目は最小限にする → 本当に必要な情報だけを集める
2. 問題点を分かりやすくする → 折れ線グラフ、帯グラフを使い、色分けや記号で異常値を可視化する
3. 組織全体で統一する → マネジャーが変わっても継続して使用する
一つ一つ解説していこう。
記入する項目は最小限にする
資料の項目は、最小限に抑えるべきである。必要なのは、本当に議題に関連する情報だけだ。余計な項目を盛り込むと議論の焦点がぼやける。
例えば、売上データを提示する際には、「期間」「売上額」「目標とのギャップ」など、議題に直接関連する項目だけを記載するのが望ましい。
「特記事項」や「反省点」など、個人の主観的な思いや認識などは記入させない。バイアスのかかった個人の意見に振り回されてしまうことになる。
問題点を分かりやすくする
会議資料では、問題点を一目で把握できるように工夫すべきだ。
例えば売り上げ推移を示す際に、折れ線グラフを使用して月ごとの増減を可視化すると、どの時点でどのような問題が発生しているかが一発で分かる。
さらに、目標未達の箇所を赤色で強調したり、異常値に矢印や吹き出しを加えると、見落としが防げる。同様に、プロジェクト進捗を示す場合も、進行が遅れているタスクに黄色や赤色でハイライトを付けると、問題箇所が視覚的に分かりやすい。
ここで、筆者が作成したスライド例をご覧いただきたい。KPIマネジメント資料においては、(1)空(事実:現状の説明)(2)雨(解釈:現状がこのまま続くとどうなるか)(3)傘(対策:現状への打開策)を、グラフと文章で相互につなげることが重要だ。
組織全体で統一する
資料のフォーマットや作成ルールは組織全体で統一することがキホンだ。効率的な情報共有のために欠かせない。
例えばAmazonのWebサイトを見てほしい。本を買うとき、家電製品を買うとき、おもちゃを買うとき、どんなシチュエーションでも同じような色合いと配置をしている。画面が遷移してもユーザーが迷うことがない。これは他のWebサイトでも同じだ。
資料も同じように、資料のフォーマット、タイトルのつけ方、記入項目の配置など、できる限り統一しよう。
各部署で異なる資料形式を使用していると、データの比較が難しくなるし、よけいなノイズが入って、会議中に不必要な説明が増えてしまう。ある企業では資料のテンプレートを導入した結果、資料作成にかかる時間が削減されるだけでなく、議論の質までもが向上した。
●ムダ資料を減らし、会議の質を上げるために
会議資料は、上司と部下をつなぐ重要なコミュニケーションツールである。この資料が適切に機能しなければ、組織全体のパフォーマンスは低下する。経験の浅い若者を早期に戦力化することも難しいだろう。重要なのは、部下が作成しやすく、上司が理解しやすい資料を作ることだ。
そのためには、まず今回紹介した「ムダ資料3つの特徴」をしっかり頭に入れること。過剰な情報を盛り込まず、見る人にとって何が重要なのかを明確に示すことだ。それに資料は一度作ったら終わりではない。必要に応じてアップデートしよう。
意識して資料を改善し続けることで、組織内コミュニケーションの質が劇的に向上し、組織全体の成果にも良い影響を与えるだろう。ぜひ、次回の資料作成から意識して取り組んでみてほしい。
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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