10日(日本時間同)にノルウェーの首都オスロで開かれるノーベル平和賞授賞式。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)には賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億5000万円)が贈られるが、この賞金は非課税だ。理由を探ると、戦後間もなく日本人初のノーベル賞に輝いた湯川秀樹博士にたどり着く。
生理学・医学賞や平和賞などの賞金は、株や債券などの金融資産を運用するノーベル財団の基金から支払われる。税が課されないのは、所得税法が非課税所得の一つとして「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」を挙げるためだ。
この規定は、1949年に湯川博士が中間子理論でノーベル物理学賞を受賞したことで誕生した。同年11月の衆議院大蔵委員会議事録によると、課税を巡って議論が巻き起こったが非課税とすることで「各党とも意見が一致」した。
一方、日本人受賞者がゼロの経済学賞は、賞金がノーベル財団ではなくスウェーデン国立銀行(中央銀行)から支払われる。所得税法の規定には同銀行が含まれず、日本人が受賞する際は議論になるかもしれない。
賞金額は時代とともに変遷してきた。2001〜11年は1000万クローナだったが、12年には2割減の800万クローナになった。これは08年のリーマン・ショックなどが影響した可能性がある。
資産の運用はその後成功したとみられ、20年には1000万クローナに回復し、23年には過去最高の1100万クローナになった。今年は23年と同額で、円換算で見ると約1億5000万円となる見通し。日本被団協は賞金の使途について「詳しくは決まっていないが、今後の運動に役立てたい」としている。