「悔しいですよね、一言で言えば」。
ロッテの西村天裕は移籍2年目の今季、17試合に登板して、0勝0敗7ホールド、防御率6.62と悔しい1年に終わった。
昨季開幕前にトレードで加入した西村は、帝京大時代のチームメイト・青柳晃洋(阪神)と行った自主トレで、“アウトの取り方”について助言をもらい、少ない球数でアウトを取ることを意識した結果、自己最多の44試合に登板、14ホールド、防御率1.25の成績を残した。
今季に向けては昨季取り組んできた“アウトの取り方”にプラス、キャッチャーミットを突き抜けるようなイメージのストレートの質を求め、自主トレからこだわってきた。
開幕前の取材でストレートについて、「球速はまだ出ていないですけど、強さ的にはいい感じかなと思うので、そこでもっとファウルを多く取れればなと思います」と話し、開幕してからも4月25日の取材で「球速が出ていないのは気になりますけど、数字的には回転数、そこまで変わっていないので、別にいいかなと。(4月23日のソフトバンク戦で)牧原さんに打たれた真っ直ぐはコースが甘かったりしていたので、真っ直ぐ待っているバッターに真っ直ぐだったら、甘いところに行ったら打たれるという感じですかね」と振り返った。
西村は4月終了時点で9試合・8回2/3を投げ、5ホールド、防御率3.12だったが、5月3日の楽天戦で1回・6失点と打ち込まれ、翌4日に一軍登録抹消となった。
「(ストレートが)弱くなっている感じがあった。打たれて落ちた時も簡単に打ち返されていた、そこの質を追求していこうと体を作り直して、強さというのを求めてやりました。(自主トレで)やってきたことを見直して、もう1回自分のフォームを見直して、追求していってという感じですね」。
「足をついてから投げることに対しての慣れというか、そこがもうちょっと意識が薄くなってきたのかなと思ったので、もう1個さらに意識を強くして投げるようにしました」。
再昇格を目指す過程において、ファームで結果を残すことも重要だが、一軍で通用するための準備も必要。6月4日の日本ハム二軍戦がまさにそれに当てはまる。結果から言えば、1回・38球を投げ、3被安打、2奪三振、1与四球、2失点という不安定な投球内容だった。
「真っ直ぐとスプリットの見分けがつけられていたので、真っ直ぐとスプリットしかないとわかっていて、どうやって抑えられるのか、だから(6月4日の日本ハム二軍戦で)スライダーをあんまり投げなかったんです。スプリットでいって次真っ直ぐ行った時の反応というのは今どんな感じかと色々やっていたら2点取られたという感じですね」と、6月4日の日本ハム二軍戦でストレートとスプリット中心の投球だった意図を説明。
「真っ直ぐとスプリットの見分けが簡単につけられているんだろうなと思ったので、そこからもう1個リリースの時のポイントをしっかり一緒になるようにフォームをちょっと微調整していたという感じですね」と、この登板で出た課題を見つめ直した。
6月7日の楽天二軍戦から3試合連続無失点に抑え、昇格前最後の登板となった6月17日のオイシックス戦は1回を15球、3奪三振に抑えた。特にこの試合、2−0の6回二死走者なしで左の知念大成を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めたスライダーが良かった。「スライダーは僕の中でどちらかと言ったらカウントがメインなんですけど、あそこで空振り取れたというのはいい感じなのかなと思いました」と本人も納得の1球だった。
6月21日に再昇格を果たし、同日のソフトバンク戦から6月30日のオリックス戦にかけて4試合連続無失点。1回を無失点に抑えた6月23日のソフトバンク戦、6−6の11回一死走者なしで川村友斗を「差し込めていたのでいい球だったかなと思います」と、2ボール2ストライクから5球目の149キロ真ん中ストレートで空振り三振に仕留めた。
暑い夏場に向けてさらに調子をあげ、ブルペン陣を支えていきたいところだったが、7月2日の日本ハム戦で3失点すると、今季初のイニングまたぎとなった7月9日の楽天戦は1イニング目はわずか6球で抑えるも、2イニング目に失点し翌日に一軍登録抹消。
チームがCS争いをしている中でその後、一軍から声がなかなか掛からなかった。「毎回いつあがってもいいようにテレビはずっと見ていた。映像とかも、その中で自分がいないというのは悔しかったですし、苦しかったですね」。
そこで腐ることなく、自分のやるべきことをファームでやっていた。ファームでは「年齢も上の方ですし、去年あれだけ投げさせてもらって、悪いところというか、自分がマイナスのところは見せられない。しっかりやりました」と、先頭に立って練習し若手の見本となった。
投球面でも、8月1日の日本ハム二軍戦、阿部和広を1ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めた外角146キロストレートは素晴らしいボールで、8月7日の西武二軍戦では陽川尚将をストレートで2球で追い込み、3球目の空振り三振を奪った外角の148キロストレートも良かった。
夏場以降は147、8キロのストレートを投げ込み、スプリットも8月7日の西武二軍戦、モンテルを1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた137キロのスプリット、8月31日のヤクルト二軍戦、高野颯太を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めたスプリットがストライクゾーンからボールゾーンに良い落ちだった。
「空振り取れたり、真っ直ぐを待ってくれているカウントでスプリットを投げて振ってくれたり上手いこと自分のピッチングができていたというのはありましたね」。
9月25日の巨人二軍戦、ティマを3ボール2ストライクから空振り三振を仕留めた8球目のスプリットも、ストライクゾーンからボールゾーンに良い落ちだった。
「フォークは良かったんですけど、全体的に真っ直ぐの回転が弱かった分、フォークとわかりやすかったのかなというのもありますし、データでもあると思うんですけど、フォークでカウントを取りにくるとかもあったと思うので、なかなか振ってくれないというのがあった。(シーズンの)最後の方は真っ直ぐが活きてきたので、スプリットも振ってくれたと思う」。
シーズンを終えて、キャンプの時に話していたキャッチャーミットに突き刺さるストレートを投げたいと話していたが、そこはどうだったのだろうかーー。
「スライドするような感じになっていたので、高めに投げた時の真っ直ぐを常にいい感じに投げられたら良かったんですけど、それがなかなかできなかったかなというのがありますね」。
悔しいシーズンではあったが収穫もあった。
「まっすぐがダメな時はスプリットがダメというのがわかったので、スライダー頼りになってそこが打たれるというのがあった。1個ダメだと全部ダメになるというのが改めてわかったので、1個ダメでもどれか使えるようにしっかりやっていけるような球を確立していきたいのもありますし、調子が悪い時にどれだけ良いのを見つけていけるかというのを見つけて。スライダーが一番今年助けてもらったので、打たれた中でも助けてもらったのでそれをもう1個レベルアップできたらなと思います」。
それを踏まえて、シーズン終了後に行われた秋季練習では「怪我しなかったのが今年は良かったので、それを継続するにあたってもう1度体の強さ、もう一段階しっかり上げていってボールの質を上げていけるような体づくりをもう1回していきたいなと思います」と体づくりに励んだ。
「チームが3位だったので、もっと上にいけるようなピッチングを自分が抑えてそこを狙えるようなピッチングを。西村って任せてもらえるようなピッチングをしていきたいと思います。来シーズンの勝負は始まっているので、しっかり1日1日大切にやっていきたいと思います」。来年に向けた戦いは始まっている。
取材・文=岩下雄太