「”先生”って呼ばれると反応しちゃう」小説発表で注目浴びるNMB48・安倍若菜が描く夢の追いかけ方

2

2024年12月10日 16:01  日刊SPA!

  • 限定公開( 2 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

写真
デビュー小説『アイドル失格』がドラマ化やコミカライズされ、注目を集めたNMB48のメンバー・安部若菜。アイドル・作家・現役大学生という“三刀流”の生活を送る彼女が、12月6日に待望の小説第二作『私の居場所はここじゃない』(KADOKAWA)を発売した。今作は、アイドルオーディションに挑む男女5人の高校生の苦悩と成長を描いた青春物語。その完成に至るまでの2年間を振り返りながら、彼女自身の「夢」に対する向き合い方などを聞いた。
――前作『アイドル失格』から2年が経ちましたが、作家としての環境に変化もありましたか。

安部若菜(以下、安部):そうですね。自分としてはまだ実感がないところもあるんですけど、「先生」って呼ばれるほうが多くなったような気がします。デビュー作品はさまざまなことが未知数のなかでやらせてもらっていたのですが、ありがたいことに私の作品を楽しみにしてくださっている方がいるのは嬉しいなと思いますね。

――「先生」って呼ばれたときはどう返すんですか?

安部:最近は慣れ過ぎてしまっていて。NMBのレッスンのときに、メンバーがダンスの先生を呼んだときも私が振り返ったりしちゃうぐらい「先生」というワードに反応しちゃうようになりました(笑)。

――『アイドル失格』がドラマ化されるにあたって、NMB48のメンバーが主要キャストとして演じてました。

安部:NMBのメンバーが出れるっていうことになって、誰にどの役をやってもらうかを決めさせてもらったんです。普段から1番近くで見ているメンバーやからこそ、この役を演じられるんじゃないかなって。ドラマを始まったら想像以上に全員が役にハマっていて、すごく嬉しかったです!

――安部さんが指名されたんですか。

安部:そうなんです。

――となると、今作もこれからいろいろな話が進みそうですが、メンバーたちは浮足立ってるんじゃ?(笑)

安部:ん〜どうでしょう。ただ、楽屋で話してると冗談交じりに「次は主演でお願いします!」と言われたり、気のせいか「先生〜!」って呼んでくるメンバーが増えたり(笑)

――あからさまなゴマ擦りは面白いですね(笑)。三刀流の生活だと、執筆時間を確保するのも大変そうです。

安部:楽屋の待ち時間で書くことが多いので、今は静かすぎると逆に集中できないんですよ。あとは執筆に入るときには流す曲を決めていて、「この音楽を聞いたら書く」っていうのを脳に紐付けるようにしてます。飲み物は必ずアイスコーヒー。食べると眠たくなっちゃうので、お腹は空いてるほうが筆は進むような気がしてます。

――ほかに執筆中のマイルールは?

安部:集中力がないので、こまめに休憩を挟みながらやっています。30〜40分のタイマーをセットして、音が鳴ったら休憩を入れる。効率が悪くなるので、夜通しで書いたりはしないですね。あとは、例えば公園のシーンがあったら実際に公園を歩きながら、スマホで書いたりもしますね。なるべく現場には足を運びたいタイプなんです。

――そして、2年ぶりの新作『私の居場所はここじゃない』が発売されますが、前回に比べてだいぶ難産だったと。前作のインタビューでは「次はアイドル以外のことを書きたい」と仰っていましたが、今回もアイドルを題材に選んだ理由は?

安部: 処女作が“アイドルとオタクの恋愛”というストレートに自分の職業を描いた作品だったので、次は何を書いたらいいんだろうと悩みました。でも「アイドル」という題材は自分にとってもアドバンテージになる部分ですし、それも盛り込みながら、今回は芸能界の一歩手前にあるオーディションに挑戦する高校生の話に落ち着きました。

――取材などもされたんですか?

安部:NMBのメンバーにグループに加入する前の話を聞いたりしました。今回はタイプの異なる5人の登場人物がいて、私とは真逆に性格の人物でもあったので。例えば、ギャルの美華というコがいるんですけど、私は陰キャのタイプだから「ギャルって何を考えて生きてるんだろう」って細かいところまで取材したりしてました。

――安部さんの中にギャル要素がないからメンバーを捕まえて。

安部:はい(笑)。1つ作品を書き上げているから、「次の作品のために」っていうと、どんどん協力してくれたので助かりました!

◆最後に指名されたこともいい経験

――5人の高校生を男女にした理由は?

安部:「夢を追いかけてる」というのは共通したテーマなんですけど、いろいろな面から書きたいと思ったので、性別も境遇もバラバラな5人を集めようと思ったんです。

――男性にも話を聞いたり?

安部:そこは、お父さんに……(笑)

――昔はアイドルを目指してたとか。

安部:全然です(笑)。「高校生のときにどんなんやった?」とか「どんな夢を持ってた?」とか聞いたら、今は40代後半なんですけど照れながら喋ってくれました。そういう話を聞くことはなかったので面白かったです。

――ちなみにお父さんが学生の頃に抱いてた夢はなんでしたか。

安部:政治家になりたかったらしいです(笑)

――5人のなかで自分を投影しやすかった人物は誰でした?

安部:純平という男の子なんですけど、自分が「普通」であることにコンプレックスを持っていて、「特別な存在」になりたいと葛藤するんです。私も中学生ぐらいから同じような悩みを持っているので、共感もあって時間をかけて書きました。私は第一印象で、「大人しそう」とか「真面目そう」と言われることが多くて。でも、自分の心の中では尖っていたのでそれが嫌だったんです。そういう周りから見たら普通な自分に対する悔しい経験も、この人物に反映されています。

――安部さんは「第3回AKB48グループ ドラフト会議」で最後にNMB48から指名を受けてアイドルになりました。当時の心境と照らし合わせた部分はありますか。

安部:私はオーディションを受けるときは、本当に自信がなかったんです。でも、周りの子も自信のない子が多くて意外だなと思いました。それで最後の最後に指名を受けて加入することができて、「アイドルになったら人生バラ色」と思ってたんですよ(笑)。でも実際は、なかなか人気が出なくて悩んで落ち込むこともあって、アイドルの現実的なことを経験できたこともこの小説に活きてると思います。

――今作では5人が夢を叶えるために、もがきながら努力するわけですが、安部さんが「これは誰にも負けない」と思えるぐらい努力してきたことはありますか。

安部:努力かどうかわからないんですが、病んでから立ち直るという経験は人よりも多かった気がします。グループに加入した当初は、「もういやや! NMB辞める!」って何度も思うことがあったんですけど、経験しているうちに、悩んでいるときは決断することを放棄するという結論に至って。気分には波があるから、上がるまでは無理をせずに、生きるハードルを低くしながら過ごすのがええやんって。自分との向き合い方がわかってきたというか、辞めないで続ける努力をしているうちに染みついてきました。

――壁の乗り越え方が身に付くんですね。

安部:それから思い返すと、嫌なことや苦しいことがあったときは文章にしていたかもしれないです。オーディションに挑んでいたときは、できるだけ自分をさらけ出さないといけないと思って、自分はどんな強みがあって、自分にしかできないことを考えてノートに書き出してました。その自己分析していたノートが何冊か出てきて、それも良い方法だったかもしれないですね。

――夢の話でいうと、安部さんが「アイドルになっても夢を追い続けないといけない」と仰っていました。

安部:NMBのメンバー同士でご飯に行ったら、終盤のほうに「将来どうする?」っていう話題になるんですよね。アイドルになる夢を叶えたはずなのに、また別の夢を追うことをスタートさせないといけない環境で。「夢」に対する悩みや疑問はずっと考え続けていますね。

――夢を追うときに大事にしていることを教えてください。

安部:マイナスな気持ちを理由にしないこと。しんどいときって1番辞めたくなるんですけど、それで諦めるのは悲しいし、将来の自分が後悔すると思う。だから、何かを決断するときは必ずポジティブな理由にしようと決めてますね。

――今はどんな夢を追ってます?

安部:こうして本を書き続けることですね。小学生の頃はいつも図書室で借りれる上限まで借りて、ランドセルに教科書じゃなくて本を詰め込んでたんですよ(笑)。それぐらい何度も本の世界に救われてきました。ありがたいことに私の地元の図書館には、『アイドル失格』が置かれていたりしているので、誰かにとってそういう意義のある一冊になったら嬉しいですね。

――次回作のテーマも気になります。

安部:いくつかあって。これまでは高校生が主役でしたが、今大学に通っているので大学生の話も書いてみたいです。あとは、舞台に出ているNMBメンバーも多いので、いつか舞台の脚本に挑戦したい気持ちもあります!

――日常が退屈だと嘆く人は多いですが、安部さんだったらどう面白くします?

安部:自分のことを物語の主人公に変換しながら過ごすのは楽しいですよ。例えば、電車に乗っているときに、「電車の窓から木々が揺れている。それをぼんやり見つめる若菜……」みたいな感じでナレーションを脳内再生してみたり(笑)。小説っぽいことを考えるだけで、同じ景色でも視野が広がって新しい発見に繫がるので、“主人公ごっこ”はおすすめです。

取材・文/吉岡 俊 撮影/後藤 巧

    ニュース設定