体制を変えて挑む野尻智紀、前代未聞の乗り替わりテストを実施した牧野任祐【鈴鹿テスト初日インサイド】

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2024年12月11日 22:50  AUTOSPORT web

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体制発表会に参加した太田格之進の6号車でセッション中に乗り替わりを繰り返した牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
 スーパーフォーミュラのシーズンオフに鈴鹿サーキットで行われている公式テスト/ルーキーテスト、初日は今シーズンのレギュラードライバーたちが参加し、その中でも今季のランキング2位の野尻智紀(TEAM MUGEN)、今季のランキング3位の牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がチームメイトのマシンと乗り替わってテストをする行う姿が見られた。野尻、そして牧野に、その狙いや2025年シーズンに向けたの手応えについて聞いた。

⚫︎野尻智紀「予想したとおりのクルマの動き方でした」

 今季、3度目のチャンピオンを狙いながらランキング2位となった16号車の野尻陣営。早速、このテストでは大きな体制変更が見られた。これまで2度のチャンピオン獲得を共にした担当エンジニアの一瀬俊浩氏が本人の意思でチームを離れ、これまで岩佐歩夢の15号車でパフォーマンスエンジニアを務めていた田口顕人氏が16号車野尻担当のトラックエンジニアとなったのだ。まずはこの件について野尻に聞く。

「彼(一瀬エンジニア)が無限に来て一緒にやり出して……ただ、これが10年、20年続くということではないなとは思っていましたし、おそらく彼の中では3回チャンピオンを獲ったら辞めようみたいなところもあったんじゃないかなと思います。僕らだけではなくて、この記事を読むみなさんもいろいろなきっかけやタイミングで働く場所とか職種が変わったりするわけで、そういうタイミングが彼に来たということかなと思います」

「ただ、長く一緒にやってきたから当然、寂しい気持ちはありますし、今年チャンピオンを獲れなかった悔しさも僕と同じように彼も感じているでしょうし、ただもう、新しいTEAM MUGENとして、新しい16号車としてスタートするしかないので、そこに振り返らず、新しく担当してくれる田口だったり、新しいスタッフたちと一緒にさらに強いチームを作っていこうというところです」

 その新しく担当となった田口エンジニアと迎えた初の現場テストは、どのような感触だったのだろう。

「まったく違うチームから来たわけではないので、共通言語みたいなものに関してはある程度チームの中に出来上がっているので、そんなに苦労はしないかなと。ただ、細かい詰めをしていったところで『もうちょっとこうだったら』というところとか触って欲しいポイントだったり、その辺は今回のテストを通じて、これからお互いの意思疎通ができるようにいろいろトライしないといけないかなと思います」

 その野尻はこの鈴鹿テストで午前にこれまでの16号車、そして午後はチームメイトの岩佐の15号車で走行して比較を行った。

「僕の方からチームにお願いしました。やっぱり、ところどころ違いは感じていたので。それが本当にドライバーの好みのものなのかを含めて考えないと、彼らのデータをどう使うかというところにも影響してくるので、より細かく把握しておきたいなとはありましたね」

 15号車は岩佐が最終戦の鈴鹿で乗ったセットアップの状態で走行を行った。

「基本、15号車には前回の鈴鹿の予選、レースのセットアップで乗せてもらって、そこからいろいろアジャストしていったという感じです。アジャストと言っても、コンディションに合わせると言うのではなくて、新しいコンセプトの中でやってみましょうと言う感じですね」

 その比較については今の段階では細かくは話さないが、野尻とチームにとっての収穫は大きかったようだ。

「基本的なバランスで言うと、やっぱり目指している方向性だったりデータ共有もしているおかげで、そんなには変わらないかなと思うのですけど、なんとなくですけどグリップする瞬間がちょこちょこ違うかなと言う印象がありますね」

「(それぞれの特性は)SF go(オンボード映像)で見たまんまだなと。やっぱりそうだなと。予想したとおりのクルマの動き方でしたし、逆に16号車の方がいい部分がありました。と言ったところです」

 TEAM MUGENの2日目は、アブダビのF1テストから帰国する岩佐が15号車、野尻は16号車の体制でテストが行われる予定だ。

⚫︎牧野任祐「大きくステップアップするネタ集めはいろいろとできた」

 チーム内での乗り替わりが多く見られたテスト初日の中で、異彩を放っていたのが5号車の牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。野尻が午前、午後とマシンを乗り替わるのに対し、牧野は午前に2台に乗り、午後にも2台を乗り替わり、同条件、同コンディションにこだわって比較テストを行った。

「僕がチームにリクエストをしたのもあるし、チームも乗り替わりをやろうと言ってくれた。午前、午後、それぞれ同じセッションでタイヤの状況も同じようにして僕は乗り替わりをやりたくて。やっぱり、そういう同じコンディション、タイヤの状況じゃないと本当の比較にならないし、わからないので。午前、午後とセッションを変えるとコンディションも変わってしまいますからね」

「ですので今日、両方のクルマで新品タイヤでアタックして、そのワンアタック落ちのタイヤで最初5号車でアタックして、次に6号車でアタックして、6号車(太田格之進車)でアタックしている間に5号車を(レース用の)ロングランのセットにして、すぐに5号車でロングを走っている時に6号車をロングランのセットに変えてもらって、6号車でロングランをやってと。だから今日、無茶苦茶疲れました。めっちゃ走りましたね」

 セッション後のメディア・ミックス会見では多くのドライバーが登壇して取材に答える中、牧野はさすがに疲弊した様子で、椅子に座りながら質問に応えていた。

「そもそもこの鈴鹿のベースは僕らはレベルが高い位置にあると思うので、タイム順の上に行くのはそれはそれでいいことなのですけど、もっと詰めていけるところもあるだろうと。もちろん5号車にも新品一発とかいいところはあって、乗り替わることでもっと相対的に良くすることができるんじゃないかなと感じています。まあでも、やっぱり明確な違いはあったなと感じています」

「6号車はめちゃくちゃ安定していましたね。その違いがわかっただけでも収穫かなと思うので、それを5号車でどうやって活かすのかが課題かなと思います。やっぱり鈴鹿に関しては6号車が圧倒的なスピードがあった。そこに一番近いところに僕がいて、今日は(都内での体制発表会に参加のため)格之進がいなかったので、できたことがいっぱいあった。大きくステップアップするネタ集めはいろいろと今日はできたんじゃないかなと思います」と牧野。

 その言葉のとおり、牧野にとってオフのテスト1日目は、とにかく充実した内容となったようだ。

「充実はしたのですけど、非常に疲れました。午前、午後では分けたくないというのはすごいあって、そうじゃなくて同じセッションでシートだけ持って行って変えて、ペダルも合わせておいてというのをずっと今日一日やっていたので。フォーミュラEみたいな(以前はバッテリーがなくなるのでレース中にピットでマシンを交換していた)感じでマシンを乗りかわっていました(苦笑)」

 その牧野はちょうどこの日の夕方に、2025年の参戦体制が発表され、スーパーフォーミュラでは引き続きDOCOMO TEAM DANDELION RACING、スーパーGTではSTANLEY CIVIC TYPE R-GTから山本尚貴との継続コンビで参戦すること決まった。
 
「今年と何も変わらなくて、安定感抜群な感じがありますけど、SFもGTも同じ環境で長くやれるというのは本当にチームとの関係性も深めていけると思います。2024年のSFはキャリアハイ(ランキング3位)、GTもチャンピオン(2020年)に次ぐランキング2位の成績を残すことができて充実したシーズンを過ごせていると思うので、その素晴らしい環境を引き継げる。今年はSFもGTもチャンピオン争いをしてタイトルが獲れなかったので、来年はダブルチャンピオン、やり返したいなと思います」

 今季のチャンピオン、打倒坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)に向け、2025年も今季と同じチームで戦う野尻に牧野、新シーズンに向けた戦いは、すでに始まっている。

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