いろいろなことがめまぐるしく変化していく現代、世間の考え方や法律など情報を積極的にかき集め、自身も順応できるようにしておくことは大切といえるだろう。「自分は大丈夫」などと思っていると、その言動により周囲に迷惑をかけてしまうかもしれない。
百瀬加代さん(仮名・20代)は、結婚を機に新築住宅を購入。お互いの親戚、そして別日には友だちも呼んで新築祝いをするなど幸せなひとときを過ごしていた。ところがこの頃から、家のすぐそばにある電柱への放尿を発見するようになっていったとか。
◆電柱への放尿被害が相次ぐ
「土地を購入するときは何度も時間帯を変えて現場へ行きましたし、新築工事のときは業者の方に飲み物を差し入れたり、手抜き工事などあとで後悔したりしないよう毎日のように足を運んでいたんです。でもそのときには、電柱が濡れているのを見たことはありません」
そう夫に訴えても、「電柱が濡れているかどうかなんて、土地を買ったり家を建てたりしているときには気づかないもんだろう」「そこまで見ている人なんて、普通はいないよ」とスルー。それでも犬・猫用の撃退スプレーを買ってきてくれたため、ケンカにはならなかった。
「夫が買ってきたスプレーを電柱に吹きかけて様子をみることになったのですが、とくに変化なし。さらに、私に子どもが生まれるとその頻度は増加し、頻繁に放尿された電柱を見かけるようになっていきました」
◆なんとカメラに映っていたのは…
冬場のうちはまだよかったが、気持ちのせいか、春をすぎたあたりから悪臭も感じるようになり、電柱に放尿する犯人を捜そうと夫に懇願した加代さん。そして、電柱が見える場所に小型カメラを設置して備えることになった。
「そのあとは、ずっとモヤモヤ。散歩中の犬・猫の仕業なら飼い主に注意するべきだけど、トラブルにならないかとか、本当にいろいろ考えてしまいました。でもそんな心配は、まったくの無駄だったのです。そして、カメラに映っていた犯人に衝撃を受けました」
なんとカメラに映っていたのは、加代さんのひぃおじいさん。そして、ピンときた。思い出してみれば、電柱が濡れているのを見つけるのは、いつもひぃおじいさんが尋ねてきたタイミング。玄関を開けたとき、すぐ近くにある電柱が高確率で濡れていたことを思い出した。
◆ひぃおじいさんを問い詰めたら…
「ショックを受けるとともに、夫に相談。夫に子どもを見てもらいながら、尋ねてきたひぃおじいさんを問い詰めたのですが、『家と電柱が、ワシの生まれ育った実家の風景に似ている』『昔は、電柱のところでよくオシッコをしていた』などと懐かしみはじめたのです」
さらに、「加代の家の電柱は、本当にまるで実家の電柱」「見ると、オシッコがしたくなる」と続ける始末。まったく反省のない様子に加代さんは、「ウチの電柱でオシッコするなら、もう二度と来ないで!」と激怒した。
「ひぃおじいさんが、『ごめんよ。もうしないから』と謝ってくれることを期待していたのですが、『ここに来るのも2週間に1回ひ孫の顔を見に来るときぐらいなんだから、いいだろう。先も短い老人の楽しみを奪わないでくれ』と悪びれる様子もなく言ってのけたのです」
◆「それならもうしない」と反省
そして、「ここの電柱でおしっこをするために、わざわざ遠回りや散歩までして調整している」とまで言う始末。まったく反省のない様子に、黙っていた夫が「電柱に放尿するのは軽犯罪なんで、このまま続けるなら警察に連絡しますけど大丈夫ですか?」と一喝したのだ。
「ひぃおじいさんは、『ええっ!? 犯罪なのか…?』と驚いて口ごもり、『それなら、もうしない』と、小さな声でボソリと誓ってくれたのです。そのあとは、猛反省していました。ただ、犯罪になるかどうかということよりも、モラルの観点から控えてほしかったです」
昔なら、「田舎の山道を車で走っていたら、一度はおじさんの立ちション姿を見かけた」という人がいた時代もあったようだが、いまは違う。歳をとっても時代にあったモラルを身につけ、周囲の人たちに迷惑をかけないよう生きていきたいものだ。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意