2025年3歳牝馬クラシック
桜花賞とオークスの勝ち馬は?(前編)
昨春の牝馬クラシックは、第1弾となるGI桜花賞(阪神・芝1600m)を2歳GIの阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)で僅差の2着だったステレンボッシュが勝利。阪神JFを制した2歳女王アスコリピチェーノの追撃を振りきっての、見事な戴冠だった。
続く第2弾のGIオークス(東京・芝2400m)は、2歳時の出世レース、GIIIアルテミスS(東京・芝1600m)の覇者チェルヴィニアが快勝。直線半ばで先に抜け出した1番人気の桜花賞馬ステレンボッシュを差しきって、桜花賞惨敗(13着)から鮮やかな巻き返しを見せた。
いずれも、2歳時から実績を残してきた面々が3歳クラシックでもその強さをあらためて示した。はたして、今年の3歳世代はどうか。
クラシックとの関連が深い注目の阪神JF(2024年12月8日/京都・芝1600m)は、アルテミスS(2024年10月26日)を快勝して1番人気に推されたブラウンラチェットがまさかの16着大敗。2番人気ショウナンザナドゥ(4着)、3番人気コートアリシアン(6着)も馬券圏外に沈んだ。
|
|
代わって勝利を飾ったのは、5番人気のアルマヴェローチェ。GIII札幌2歳S(2024年8月31日/札幌・芝1800m)2着という実績がありながら、同レースでは人気の盲点となっていた。
そして、2着には8番人気のビップデイジー、3着には7番人気のテリオスララが入った。これら2頭も戦前の評価は低かったが、ビップデイジーは1勝クラスの紫菊賞(2024年10月12日/京都・芝1800m)を、テリオスララはリステッド競走の萩S(2024年10月26日/京都・芝1800m)を、牡馬相手に勝利。申し分ない実績でレースに臨んでいた。
そうなると、今年の3歳牝馬クラシックも阪神JF上位組が中心となるのだろうか。
今回、そのクラシックの行方をいち早く予想。スポーツ紙、専門紙の記者など5人の識者に、GI桜花賞(4月13日)、GIオークス(5月25日)で勝つと思う馬の名前を挙げてもらった――。
太田尚樹記者(日刊スポーツ)
|
|
◆桜花賞=アルマヴェローチェ(牝3歳/父ハービンジャー)
◆オークス=マディソンガール(牝3歳/父キズナ)
アルマヴェローチェは前走の阪神JFにおいて、距離短縮や速い時計での決着など、あらゆる不安材料を一掃しました。レース前の時点で、同馬を管理する上村洋行調教師は「本質的には1800mぐらいがいいのかも。桜花賞へ、格好をつけてほしいです」と口にしていたので、陣営としても想像以上の走りだったと思います。
この世代の阪神JFは京都での開催だったため、例年と違って桜花賞ではコース替わりとなりますが、ごまかしの利かない阪神マイルはアルマヴェローチェにとって、むしろ好材料でしょう。
マディソンガールは、 ご存じリバティアイランドの半妹です。まだ1戦1勝という戦績ですが、驚かされたのは新馬戦(2024年11月30日/京都・芝1800m)で見せた末脚。上がり33秒0は、秋の京都開催(2024年10月〜12月)の1600m以上のレースで古馬を含めても単独トップでした。
また、同レースの2着馬(ショウヘイ)が次戦の未勝利戦を2馬身半差の完勝。その結果が、マディソンガールの評価をさらに高めました。
|
|
クラシックへ駒を進めるためには、次戦のGIIIクイーンC(2月15日/東京・芝1600m)での賞金加算が必須。"勝負駆け"の一戦となりますが、そこをラクに突破するようなら、桜花賞でも怖い存在になりそうです。
半姉は三冠牝馬。母ヤンキーローズもオーストラリアの2000m戦のGIを制しており、オークスへの距離適性も十分だと見ています。
坂本達洋記者(スポーツ報知)
◆桜花賞=ブラウンラチェット(牝3歳/父キズナ)
◆オークス=エンジェルマーク(牝3歳/父エピファネイア)
ブラウンラチェットは、前走の阪神JFでは16着と大敗を喫してしまいましたが、秘める素質の高さから、評価を下げる必要はありません。阪神JFに向けては中間から馬体を減らし気味で、レース当日がマイナス12kg。さすがに厳しかったです。
加えて、阪神JFは初めてのフルゲート18頭での多頭数のレース。道中は他の馬にぶつけられてエキサイトするなど、スムーズさを欠く内容でした。タフな競馬を強いられて、最後の直線で完全にガス欠になってしまったのもやむなしでしょう。
重賞初制覇を飾ったアルテミスSでは、流れに乗ってキレ味も見せての完勝。マイルの距離に不安はなく、むしろ血統的な魅力から将来性を期待したくなります。何と言っても昨年の米GI、ケンタッキーダービーとブリーダーズCクラシックで3着と大健闘したフォーエバーヤングの半妹ですからね。
管理する手塚貴久調教師がデビュー前から「うちの(2歳勢の)なかで一番いいくらい。めちゃくちゃ走ると思う。これはいいですよ」と、その素質にほれ込んでいる逸材。十分に巻き返しがあると見ています。
エンジェルマークはまだ1勝馬ですが、血統背景から期待できる素質と2400mへの距離適性を見込んでイチ押ししたいです。
夏の新潟での新馬戦(2024年9月1日/芝1800m)は、少頭数でのスローペースの展開。逃げた1番人気グロスビークをマークしながらの競馬で最後はキレ味勝負となりましたが、メンバー最速の上がり32秒9という瞬発力を発揮して押しきりました。内で粘るグロスビークとの叩き合いの末に、きっちりと首差前に出たレースっぷりは、前向きな勝負根性も感じさせる味のある内容でした。
管理する宮田敬介調教師が「まだ体質の弱さを感じながらの調整でしたが、何より実戦にいっての気性がいいですね。これくらいの完成度でひとつ勝てたのは大きいです」と語っていたように、素質だけで勝ったような一戦。そういう意味では、大きな伸びしろを見込める結果でもありました。
続く2戦目の1勝クラス・百日草特別(2024年11月3日/東京・芝2000m)では、差し届かずの3着でしたが、上がりはメンバー最速の33秒5をマーク。キレ味があることをあらためて示しました。
次戦は、リステッド競走の若駒S(1月25日/中京・芝2000m)を予定。宮田調教師は「(百日草特別で)距離はもちそうと再確認できました。オークスを目標に、賞金を加算していきたいですね」と、牡馬相手でも勝負になる手応えを見せています。
母ステファニーズキトゥンは、2015年のブリーダーズCフィリー&メアターフを勝つなど米GIを5勝した名牝。現状、その子からまだ大物は出ていませんが、この馬はひょっとすると......という気にさせてくれます。桜花賞というよりもオークス向き。いかにも東京コースが合っていそうなイメージなのもいいですね。
(つづく)◆桜花賞とオークスの勝ち馬を識者が大胆予想!>>