『ダイヤのA』人気で中国は空前の甲子園ブーム 野球人口急増で「中国版・大谷翔平」が出現する日も近い⁉︎

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2025年01月10日 10:01  webスポルティーバ

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 2026年に第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を控え、2025年2月、3月には台湾とアメリカで予選が開催される。2大会連続出場を目指し、いち早く強化を進めるのが中国代表だ。

「あのホームランをきっかけに、中国の野球に興味を持ってくれた方もいます。あの効果はすごく大きいなって実感していますね」

 中国代表の主軸打者・梁培(リャン・ペイ)がそう振り返ったのは、2023年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本戦で、6回に戸郷翔征(巨人)から東京ドームのレフトスタンドに運んだ本塁打のことだ。

【日本野球の影響を受ける棒球】

 あれから1年半以上が経った2024年冬、中国野球協会は沖縄で11月中旬から行なわれたジャパンウインターリーグ(JWL)にU23を中心とした26選手を派遣し、単一チーム「Team China Rising Star」(以下、中国選抜と表記)として参戦した。

 WBC予選を見据えてメンバー選考と強化を目的とし、1カ月に渡るリーグ戦でNPBや台湾リーグの若手選手、トヨタやホンダという社会人トップチームの選手、さらにアメリカや欧州から契約を求めて来日した外国人選手たちと20試合近くの実戦を重ねた。

 個人参加して経験を積む場という色合いの強いJWLで、中国選抜が掲げた目標は「全勝」。走者が塁に出れば犠牲バントで送り、足も絡めていく。なかには走り打ちやドラッグバントで俊足を生かそうという打者もいた。

 緻密な作戦がはまれば、ベンチ全体で沸き立つ。日本人以上に細かい野球を徹底し、勝利に対する強い意欲は参加した全6チームのなかで際立っていた。

「中国の野球は『棒球』(バンチョー)と言います」

 JWLで主に4番を務めた梁は、中国野球が日本に影響を受けた背景について話した。

「中国野球リーグの各チームは、2000年代にNPBと提携していました。今の代表監督は天津ライオンズのコーチで、ベイスターズと交流があっていろんな野球を学んだそうです。だからバントやエンドランなど、戦術も使えます。そういうところは日本の名残が残っているのかな。すごく参考にしていると思います」

 ネイティブと同レベルの日本語を話す梁は中国出身の両親の下、東京で生まれた。調布リトルシニア、東海大菅生高校と名門を渡り歩いたあと、中国に渡って北京タイガースに入団。同国代表の中心選手としても活躍している。

 梁自身、日本野球を熟知するひとりだ。

「僕は小さい頃から野球をやってきて、日本で学んだことを中国の野球に還元できればと思っています。でも日本の野球をマネしようという感じではなく、中国棒球の新しいスタンスというか、新しい雰囲気で世界にもっと推し進められて、それで国際大会勝てたらもっといいなって思います」

 中国野球の実情を知る機会はなかなかないが、JWLではNPBの育成選手や社会人選手にも引けを取らない戦いを見せた。

【年々増加している野球人口】

 投手陣で最も目立ったのが、左腕の王翔(ワン・シャン)。2023年WBCでは19歳で日本戦に先発した187センチの長身で、同年10月のアジア大会では侍ジャパン社会人代表を5回無失点に抑え、中国代表の勝利に貢献した。

 中国の団体スポーツと言えば、サッカーやバスケットボールのイメージが強いが、選手たちはどのようなきっかけで野球を始めたのだろうか。

「それは聞きたいですね。僕は日本で始めたので......(笑)」

 梁は「聞いた話」と前置きして、こう続けた。

「男の子はサッカーやバスケをやる子が多いなか、野球のコーチが『運動神経いいな』『この子、足速いな』とか、何かを投げている姿を見て『この子、肩が強い』と引っ張ってくることが多いと聞きました。あとは野球をやらせてみて、バットを振らせたらスイングがきれいというのもあります。じつは今、中国の野球人口は毎年増えているんです。子どもも多いですし、あれだけの人口がいたら、大谷翔平になるような選手が2人くらいいると思いますね(笑)」

 14億人以上の人口を抱える中国のポテンシャルは大きく、NPBに加え、MLBからも普及振興を支援されてきた。そうしたなかで中国代表が国際大会で徐々に結果を残し、野球を始める子どもが増えているのでは、と梁は語る。

 彼によると、中国リーグはネット中継を含めて1試合あたり数千人に視聴され、「1万に届けば多いほう」だという。その一方で、MLBやNPBを見ている視聴者は「数十万人から数百万人に達するのでは」という。

【日本の高校野球が大人気】

 そして、日米のプロ野球以上に人気だというのが甲子園だ。

「『ダイヤのA』の影響です。中国人は日本のマンガ、大好きっすよ。『ONE PIECE』や『NARUTO』だけでなく、僕が知らないようなアニメも見ているし。『ダイヤのA』のファンの人たちが『野球って何なんだろう?』となって、高校野球に集中する人が多いですね」

 マンガをきっかけに人気拡大していくのは、古今東西に通じる。広大な国土、そして多くの人口を抱える中国のポテンシャルが高いのは間違いない。沖縄のJWLで「棒球」の緻密さや勝利への執念を見ていると、「大谷翔平になるような選手が2人くらいいる」という梁の言葉は、必ずしも夢物語とは思えなかった。

「すごく可能性を秘めている選手が多いので、これからが楽しみです。やっぱりスポンサー、ほしいですね」

 マーケットを広げるには、お金が不可欠だ。そのために何が必要になるのか。梁が続ける。

「ひとつは、国際大会で代表チームが勝つのは重要事項ですね。もうひとつは、スターが出てこないといけないと感じます。大谷翔平のような選手がパッとひとり出てくると、一気に盛り上がるんじゃないかなと思います」

 現在の中国代表で言えば、主軸を任される梁が候補のひとりだ。26歳となり、野球選手として脂が乗ってきた頃でもある。

 高校卒業後、中国野球の発展に多くを捧げてきた梁は、今後のキャリアをどう描いているのか。

「直近で言えば、WBCの予選を勝ち上がって、もう一度、東京ドームの舞台に立つことが一番の目標です。いずれ選手として引退する時が来るので、その前に日本でやってみたいなっていう気持ちもあります。中国選手のスターが必要というところでいくと、絶対にMLBでなければいけないわけではなく、NPBでもいいわけです。もしここ数年でそういう子が出てこなければ、自分がそういう架け橋になれれば、すごく幸せなことだなと思います」

 中国代表の主軸を任される梁は今、多くの期待を背負い、次の戦いに備えている。大事な国際舞台に向かう上で力になっているのは、やはり戸郷から放った一撃だ。

「あのホームランで、これからも外のプレッシャーを感じていくのかなって思いますね。でも、野球選手としてそこは結果を出したいところです。一発屋で終わらないようにしたいなと思います」

 中国代表が2025年3月のWBC予選を突破し、翌年、再び東京ドームで日本と対戦する日を楽しみに待ちたい。

このニュースに関するつぶやき

  • 中国共産党は大嫌いだが、WBCの中国代表チームはなかなか素晴らしいチームだったなぁ… やはり政冷経熱に加えスポーツの交流も熱くしていくのが良いのかな…『ダイヤのA』人気で中国は空前の甲子園ブーム 野球人口急増で「中国版・大谷翔平」が出現する日も近いexclamation & question
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