2025年は巳年なので、青森県の大蛇(おおじゃ)駅へ行ってみた!

0

2025年01月11日 12:40  週プレNEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週プレNEWS

JR東日本・八戸線の大蛇駅

2025年、巳年がスタートした。毎年恒例となっている干支の名前が付く駅に行ってみるシリーズ。「へび」が付くのは東京の辰巳(たつみ)駅、群馬の南蛇井(なんじゃい)駅、宮城の蛇田(へびた)駅、そして青森の大蛇(おおじゃ)駅の4つ。せっかくなので東京から一番遠い大蛇駅に行ってみることにした。

【写真】名物の海藻ラーメンをいただきます

東京から東北新幹線に乗って八戸まで3時間弱、そこから太平洋沿いを走る2両編成のディーゼルカーに乗って45分。到着した大蛇は小さな無人駅だが、ちょっとした集落があり、下車する人も数名。

待合室があるので入ってみる。壁に貼られた時刻表と運賃表。だいたい2時間に1本ぐらいの運転本数だ。掲示板もあり、鉄道の案内とともに、謎の自作本が貼り付けられている。どうやら旅日記のようで、文章とともにプリントした写真。鉄道のカットが多く、鉄オタが作ったものっぽい。無人駅といえば駅ノートが置かれ、訪れた旅人が書き込んで交流するケースはよくあるが、自作本を見たのは初めてだ。

奥には木で作られたポスト。「三陸復興国立公園 俳句投函箱」とある。公共施設などでたまに見かける、俳句を入れる箱だ。ただ、細かい説明はなく、俳句を投函してどうなるかはさっぱりわからない。

駅をひと通り眺めたので、外に出る。残念ながら町の案内板的なものは何もない。近くに避難場所として「アスナ公園」というものがあるらしく、まずはそこを目指してみる。

この日は天気に恵まれたが、気温は3度でけっこう寒い。5分ほど歩いて到着した公園は、まあ普通の広場でした。芝生は雪に覆われ、トイレは冬季閉鎖中。何も見つからなそうな予感がしたのでグーグルマップを開くと、この近くに史跡として「湯殿山碑」なるものが表示された。行ってみよう。

公園の近くには集会所があったり、住宅はあるのだが人がいない。たまーに車が通るだけ。こんな場所をひとり歩くおじさん。明らかに不審者だな。

たどり着いた「湯殿山碑」。道路の脇に湯殿山と掘られた石碑がぽつん。側面を見ると月山。これ、山形の修験道で有名な出羽三山にゆかりがあるんだろうな。ネットで調べると、江戸時代に出羽三山へ行った記念として地元に石碑を建てるのが流行ったらしい。ここから湯殿山までは350キロほど。当時の人は1日に30キロぐらいは歩いたらしいが、それでも片道10日以上かかる長旅だ。そりゃあ記念に石碑も建てたくなるな。

山側はこれ以上なさそうなので、線路を渡って海へ向かう、途中で大蛇小学校があったが、児童数が減って閉校してしまったらしい。大蛇小学校ってカッコいい名前なのに残念。海へ下る途中の広場に石碑がふたつ立っている。ひとつは昭和8年に起きた津波について書かれたもの。もうひとつは平成23年の東日本大震災で発生した津波に関してのもの。

この地域は「津波が発生したら線路まで逃げろ」という教訓が伝えられており、東日本大震災の際に死者、行方不明者が出なかったそうだ。時が過ぎれば記憶は薄れてしまうが、こうやって石碑に残すことで、後世まで伝えられていくのだろう。

道を下ると太平洋に突き当たる。冬の海、言うならば寂寥(せきりょう)。海沿いの県道を走る車はわずかで、海風が顔に当たって痛い。ぼんやり歩いていると、散歩中のおばちゃんに声をかけられた。

東京から来たと話すとえらく驚かれ、「巳年なので大蛇駅に来たんです!」と理由を言うと、そこはあまり興味がなさそうだった。おばちゃんは昔、魚屋をやっており、近くの海で採れたタコがよく売れたそう。何か見る場所がないか聞くと、蕪島(かぶしま)を紹介された。蕪島はここから10キロほどの八戸市内にあり、春から夏はうみねこの繁殖地として、国の天然記念物にも指定されている。良さげだが、大蛇は階上(はしかみ)町なのでエリア外だ。

せっかくなので大蛇の地名の由来を聞いてみたが、八戸市内から嫁いできたとのことで、わからないらしい。ただ、駅の近くに石を積んだ場所があり、そこに蛇がいて驚いたという話をしてくれた。今のところ唯一の蛇情報だ。

八戸方面へ歩くと道の駅のようなものがあるらしく、そこに向かう。

集落のはずれ、三角屋根の大きな建物「はしかみハマの駅あるでぃ〜ば」。店内に入ると年末ということもあってか、魚を買う人がたくさん! 水槽もあり、マイワシ、タコ、ホッケと地元で採れた魚がずらり。会話を聞くに常連の人も多そう。これは間違いない! ただ、鉄道で来ており、魚を買っても新鮮なまま持ち帰る自信がないので、泣く泣く諦めた。

ただ、ここにはレストランが入っている。たぶん大蛇唯一の食堂だ! 海鮮丼などの魚料理もあるが、焼き肉定食やカツ丼といった地元の人が喜ぶ料理も提供されている。悩んだ結果、注文したのは「階上セット」。海藻ラーメンにマグロの漬け丼、お新香、小鉢で1,200円。地名を背負ったメニューにハズレはないだろう。

10分ほどして到着。ラーメンには色とりどりの海藻がわんさか。スープをズズッと飲むと、冷え切った体に染みわたる塩味。ちぢれ麺に海藻を絡ませチュルチュル。海藻エキスが頬を緩ませる。うまい! 顔をあげると目の前に広がる太平洋。最高のシチュエーションだ! もうここから離れたくない!! 外は寒いし。

食後にコーヒーを飲みつつぼんやりしてたら、帰りの列車の時刻が迫っていた。そういえば大蛇の地名の由来がわかっていない。レストランの店員さんに聞いてみた。「大蛇が一戸、二戸、三戸、八戸と来て、このあたりで倒されたとか? そんな話を聞いた気がします......。詳しくはわからないですけど」

地元の人だからって別に地名の由来なんて知らない! 確かに僕も中野の地名の由来を聞かれても答えられない。せっかくなので、駅の俳句箱に入れるつもりだった一句を詠んで締めることにしよう。「大蛇駅 巳年になれば 大にぎわい?」。

次回は午年。午や馬の名前が付く駅は大量にあるらしく、1年かけてじっくり考えよう。

取材・文・撮影/関根弘康

    前日のランキングへ

    ニュース設定