アラフォーで一児の母、柿ノ種まきこのモットーは「ゆるーくテキトーに生きること」。
『アラフォーまきこのごゆるり家事』(KADOKAWA)は、ごくごく普通の毎日を慈しむ、ひとりの女性の物語。だらしないわけでも、無気力なわけでもない。肩肘張らないまきこさんの日常に、私達はいつしか癒されていくのです。
◆普通はとても尊い
まきこさんは「ズボラで面倒くさがり。時短・手抜きが大好き」。温厚な性格の夫と、4歳の娘の3人家族。結婚前は母とふたり暮らしをしていました。
実家暮らしの独身時代から、まきこさんの中で一貫していたのが、「頑張りすぎないこと」。とりわけ「家事は生きていく上でさけられないことだから、力をゆるめると暮らしがいい意味でテキトーになって心地良い」と気づいたのです。
まきこさんが編み出した、時短と栄養を兼ね備えた朝食と、ストレス解消にもなる隙間掃除をおしえてもらいましょう。
◆お茶碗ひとつで、ゆるっと完璧
心と体を仕事モードにオンするために、朝食は欠かせません。でも美しくセッティングする必要はなし。まきこさんの朝食は、お茶碗ひとつで完成です。
炊き立てのごはんをお茶碗によそって準備完了。あとは納豆に適当な乾物や漬物を混ぜ、ごはんにかけるだけ。
もちろん、炊き立てのごはんじゃなくても、冷凍ごはんでもパウチごはんでもOK。韓国海苔でも刻みたくあんでも、納豆がおいしさを倍増してくれます。私事ですが、キムチやチーズ、味噌ピーナツなども納豆にインします。
栄養満点、手抜き万歳。マイお茶碗に元気エネルギーが山盛りです。まきこさんと一緒に、さあ今朝もゆるっと、「いってきます」。
◆無になる時間、布巾で靴洗い
頭を働かせたくない、ボーッとしたい。無になる時間を作りたくなったら、まきこさんにならって靴洗いをしてみませんか。用意するのは「泡の靴用洗剤・豚毛ブラシ・使い古しの布巾」。
冬の朝、まきこさんは「急に思い立ってやりたくなる」と言います。春夏秋冬、家族が一番遅く起きてくるのは、冬ではないでしょうか。冬の朝は、ひとりになれる時間が確保されやすいのです。
半醒半睡で家を歩き、ふと目につくのは薄汚れた靴。つい後回しにしてしまう靴のお手入れですが、ただ一心に汚れを落とす行為は、ひたすら「無」になれる時間でもあります。
ついでに家族の靴もきれいにしたら、感謝のおまけもついてくるかも。最後、靴を洗い終えた布巾で玄関の床を掃除すれば、靴洗いと玄関リセットと、マインドリセットも叶うかもしれません。
◆家事をしながらの、ながら美容
家事は苦手だけど、洗濯は好き。まきこさんと同じ思いの人って、けっこう多いのではないでしょうか。私もそのひとりですが、理由は、「汚れたものが目に見えてきれいになるから」。しかも大半を洗濯機がやってくれるのも大きいです。
憂鬱なのが部屋干しですが、「加湿器替わり」と思考転換すればたちまち節約モード。しかも肌の保湿も担ってくれるかも、というプラス思考で幸福度も高まります。
料理中の蒸気も、保湿としてとらえるまきこさん。味噌汁や炊飯器の湯気、アロマオイルよりも自然で心に染み入る匂いが、心まで潤してくれそうです。とはいえ、「湯気をあびるのは熟練の技が必要です。火傷をする可能性があるので真似しないでください」と注釈付きですので、あくまで気分だけを楽しんでください。
◆毎日は小さな幸福でできている
いい出会い、いい仕事。空から何かいいことが降ってこないだろうか。そんな風に、私達はつい、ないものねだりをしてしまいます。足元を見れば、小さな幸福がいくつもあるというのに、まったく気づいていないのです。
私達がまきこさんに共感するのは、まきこさんが家のあちこちに転がっている小さな幸福を、決して見逃さないから。家事や仕事、夫、子供、毎日接するいつものことが、本当はとてつもなく尊いことなのだと、まきこさんは知っているのです。
頑張らなくてもいいし、急がなくてもいい、誰かと比べなくてもいい。あなたがあなた自身や、家族をそっと労わればいい。本書を読むと、自分と家族をぎゅっと抱きしめたくなりますよ。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx