ブレイクの登竜門としても知られ、昨年も大晦日に放送されたテレビ番組『ぐるナイ おもしろ荘2025』で見事に優勝。その際に披露した「赤ちゃん」のネタで一躍話題となったのが舘野忠臣とヤマゲンのふたりからなるお笑いコンビ『ネコニスズ』だ。
今や注目度急上昇中のふたりに直撃インタビュー! 前編では「『おもしろ荘』の反響」や「ふたりの出会い」について話を聞いた!
――『おもしろ荘』優勝おめでとうございます。「赤ちゃん」というキャラクターのインパクトは絶大でした。反響も大きかったのでは?
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舘野 放送翌日から街で顔に指を刺されることが増えました。「あ、赤ちゃんだ」って言ってくれるんですが、その横にいる人が僕のことを知らないと、「え、赤ちゃんどこ?」って不思議な顔をされます。「あれが赤ちゃん」「へえ......」って。
ヤマゲン 何界隈の人か全くわからんもんな。お前を知らん人の気持ちを考えたらヤバいな。
舘野 僕に声をかけてくれた人も、横の人に上手に説明できてなくて「あ、失礼します」って。声をかけたわりにすばやく消えて行きます。
ヤマゲン 「赤ちゃんがタバコを吸ってた」という、パッと見たら全く意味わからん目撃情報もSNSにありました。
舘野 IQOS味のおしゃぶりなんですけどね。
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ヤマゲン 体に悪いやろが。こいつね、タバコを吸ってることを親に隠してるんです。吸ってるのがばれたら怒られるらしいです。
舘野 だって赤ちゃんだから。しばらく禁煙してたんですけどね。
――赤ちゃんはいつからタバコを再開したんですか?
舘野 キングオブコントの1回戦で落ちた年があって、何の結果も出してないのにタバコ吸ってるなんて駄目だと思って、そこで禁煙しました。3年後にM-1の3回戦に行けたんで大丈夫だと思って再開しました。
その後、調子に乗ってM-1の3回戦でネタを飛ばしましたけど。(編注:ネタの最中に歌の歌詞が完全に舘野の頭から飛んでしまいしばらく無言に。3回戦レベルでは滅多に見られない事故として話題になった)
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ヤマゲン 公式からは消えてるのに、誰かがその動画をあげ続けるもんで、いまだに見れますからね。勝手にLINEスタンプも作られてたし。さすがにそれはすぐに販売中止になりましたけど、記念に買ってしまいました。そのスタンプを持っているのは、僕とランジャタイの国崎だけ。
――ネタ飛ばしと赤ちゃん、どちらが反響大きいですか?
舘野 それはもう赤ちゃんです。でも、まだバイトはやめられないですね。
ヤマゲン 僕もまだバイトやってます。電話番に加えて業務で使うイラストを書かされたり、最近は動画編集の業務も任されるようになったんですが、時給は1円も上がってません(笑)。
舘野 赤ちゃんが話題になったおかげで、今回みたいに取材をしていただける機会が増えたのはうれしいですね。ちなみに、集英社といえばジャンプで連載している『怪獣8号』の作者・松本(直也先生)は高校の同級生なんです。いずれ対談したいです。
――そもそもお二人の出会いは?
舘野 僕が大学を出て、お互いインディーズライブに出ていた頃に知り合ったのかな。それぞれ別の相方とコンビを組んでいたんですが、気が合ってよく遊ぶようになったんです。
ヤマゲン 僕は吉本の養成所を出て、見取り図とかと同期だったんですが、劇場に出れるか出れないかという微妙なポジションでした。舘野とはなんかウマがあったんですよね。そしてすごく面白くて、芸人としても注目していました。
舘野 当時の相方はエンジンコータローっていう、水ダウのスベリワングランプリで優勝したやつなんですが、当時は2人とも尖ってたみたいです。
ヤマゲン いい意味で目立ってましたよ。体型も今と違って細くて、バンドマンみたいな見た目でモッズコートなんか着ておしゃれやった。その上、標準語で東京っぽいコントやっててね。
今でも覚えてるんが見取り図やミルクボーイも出てた大会で一位になった「エアセックス」というネタ。「最近セックスしてないから頭の中でしてみるか」ってずっとエアセックスをするだけのネタなんですがあれは笑った。
――芸人仲間からも赤ちゃんは一目置かれていたということですね。
舘野 当時は銀杏BOYZが好きで、「もしボーカルの峯田くんが客席にいたらどうやって笑わせよう」と思いながらネタを作ってました。あとはサブカル漫画雑誌の「ガロ」を買って、絵が好みじゃなかったけど無理やり読んでました。何かをインプットしたくて。
ヤマゲン 売れてるかは別として劇場界隈では注目されてたと思いますよ。
舘野 人と違うことがしたいって思いが強かったんです。
ヤマゲン 僕は劇場メンバーに入れたんですが、同期やなくて舘野とばかり遊んでましたね。フィーリングがあったんかな。あとはサブカルみたいなおしゃれなものに触れたい時期だったから、舘野からいろいろ教えてもらいました。
舘野 そうだっけ。
ヤマゲン それこそ音楽やったらUnderworld教えてもらったし、映画もたくさん見たやん。1日3本見たこともあったな。
舘野 何を見たっけ。
ヤマゲン 「鈍獣」「チェイサー」あとは......って、お前、なんも覚えとらんな。寂しいわ。
――ヤマゲンさんは一方的に記念日を大事にする彼女みたいな感じですね。
ヤマゲン 明らか僕の方が話しかけるし、こいつからは俺に話しかけないです。僕が話のきっかけをつくってます。
舘野 ちょっとメンヘラぽい部分もあるよね。
ヤマゲン あるかもな。家族とか相方とか、とにかく人に依存しがちなんです。だから部屋を掃除する時も、自分が買ったもんならすぐに断捨離できるのに、誰かと行った動物園のパンフレットとかチケットの半券とかがどんどん溜まっていく。
――そして、今は赤ちゃんに依存中と。
ヤマゲン こいつも俺のこと好きですからね。まだ別のコンビだった頃、舘野がずっと小さな声やしボケもせんから「なんやお前。なにしにきたんや」ってステージで突っ込んだら、終わった後に、「さっきのうれしかったよ」ってわざわざ言いに来たんです。こいつは自分に強く突っ込んでくれるやつのことをめっちゃ好きなんすよ。
舘野 ごめん。それも覚えてないわ。
ヤマゲン なんやねん。お前も俺のエピソードを喋ってくれよ。寂しいやん。一つくらい覚えてることあるやろ。
舘野 すごい昔、ヤマゲンは僕の家によく遊びに来てたから、近くにあったクリーニング屋のバイトを受けたんです。どうせ毎日遊びにくるんだから、近い方がいいだろうって。ヤマゲンは面接で店主とめちゃくちゃ盛り上がったんですけど、落とされてました。
ヤマゲン なんやねんそのエピソード! それは僕も覚えてます。「へえ芸人なんや」「そうなんです」「給料いくら欲しいんや」「100万ください」「あげるか〜」ってメチャクチャ盛り上がったんですけど、落ちてもうた。理由を聞いたら、クリーニング屋の奥さんが僕の履歴書を見て「この人はダメ!」って言ったとか。ってそんな話ええねん!
☆「コンビ結成秘話」や「赤ちゃん誕生秘話」を語る後編に続く!
●ネコニズズ
舘野忠臣(ボケ)とヤマゲン(ツッコミ)のふたりからなるお笑いコンビ。2012年2月結成。タイタン所属。『M-1グランプリ2024』では準々決勝に進出。大晦日に放送された『ぐるナイ年越しおもしろ荘!今年も誰か売れて頂戴SP』では優勝。「赤ちゃん」のネタで話題に。
・舘野忠臣
1983年2月9日生まれ 群馬県出身 公式X【@neconisuzu_ta】
・ヤマゲン
1987年1月26日生まれ 大阪府出身 公式X【@yamagen4】
取材・文・撮影/キンマサタカ