ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『Zeebra』について語った。
* * *
★今週のひと言「Zeebraさんのスゴさを感じた年越しLIVEの一幕」
今回は昨年の大晦日から元日にかけて開催された「52nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 2024−2025」(以下NYRF)について。
3年前コロナ禍に中継で参加し、今年で4回目のNYRFへの出演になる。
|
|
リアルに参加している2回目からは、年越しイベントなこともあって名古屋から家族を連れていっているので、NYRFでの年越しがわが家の定番になっている。
前回の俺の楽屋は瓜田純士(うりた・じゅんし)さん(新宿路上のカリスマ)と一緒で、今年はZeebraさん(ジブラ/都会の野蛮人)と相部屋だった。小学生のうちの娘は楽屋で優しくしてくれたレジェンドたちにすっかり懐いている。
今回特に印象的だったのはそのジブラさんだ。もちろん仕事上では今までも数え切れないぐらいお世話になってきているのだが、今回はプレイヤーとしてのジブラさんの意地というか、さすがジブラたる姿を見せつけられた。
NYRFとはその名のとおり大晦日の夜から元日をまたぐ年越しの音楽フェスなのだが、ジブラさんは今年もトリなので、出番は深夜の3時頃になる。
それに加えて、参加者全員での年越しカウントダウンが深夜0時前からあるため、その前ぐらいに会場入りかと思いきや、なんと今年は19時から1番手の謎の覆面ユニットとして登場した。
|
|
俺自身当日まで知らなかったのだが、十数人の黒ずくめの覆面の男たちは覆面が意味をなさないほど、ひと声発すれば身バレするキャラ立ちマイク集団だった。
その内訳は伏せるが、つまりジブラさんはスタートからステージに立っていて、その出番が終わった後スタジオへ移動して2曲レコーディングをしてきたというのだから、驚きだ。
大晦日まで仕事熱心ですね〜という話ではない。それを楽しんで遊びの延長としてやっている。
俺自身、趣味が高じていつの間にかラッパーとなり、最初はライブするにもレコーディングするにも金がかかって、つまり金を払ってでもやりたい楽しみだったのが、逆にギャラをもらえるようになってからは、どこか仕事になっていた。
これは言い換えるとプロ意識とも言えるので一概に悪いことではないのだが、それゆえに腰が重くなったり、モチベーションのつくり方が難しくなっていたりする部分があるのも事実。一方で、HIP−HOP界の紛れもないレジェンドであるジブラさんが、いまだにそんな意識で音楽をやっていることに目から鱗(うろこ)が落ちたのだ。
|
|
いつもなら0時を過ぎて起きていられない娘も大晦日のこの日ばかりはジブラさんのLIVEが見たいと言って、眠い目をこすりながら3時まで会場にいた。
そしてジブラさんの出番。詳細は伏せるが、直前でDJの音が出ないアクシデントがあった。なすすべなく慌てふためくスタッフを尻目に、ジブラさんはマイク1本持ってアカペラでステージに上がっていった。
会場にいる誰もが知るような曲をアカペラで数曲ラップしては、自らビートボックスでビートを刻み、舞台袖にいる仲間や、娘と一緒にフロア側からすっかり観覧モードになっていた俺をステージに呼び込み、フリースタイルをやったりしながら自分の時間をしのぎ切ったのだ。
俺は大先輩からいい影響を受けて年明けから制作モードのスイッチが入った。
今年は去年よりも、音楽を一生懸命やる気になっています。
撮影/田中智久