昨今、注目が集まる50代転職。その活況から、ただ会社にしがみついていただけのスキルゼロ、コネゼロの負け組社員が参戦し、屍の山を築いている。しかし、この大多数の50代くすぶり社員でも転職を成功させ、年収増を狙える秘策が。その極意を探る。
◆40代の大きな挫折が人生の転機に
●森川良一さん(仮名・57歳)
転職前 年収300万円
携帯電話販売員
↓100万円UP!
学習塾講師
転職後 年収400万円
現在、塾講師として働く森川良一さん(仮名・57歳)は40代で一度大きな挫折を経験している。
「新卒で入社した会社を、家族の反対を押し切って退社し、マッサージのフランチャイズ経営に乗り出したんです。でも、経営はうまくいかず、6年で倒産しました。役員報酬としての当時の年収は約100万円ほど。生活費を経費計上しながらなんとかやりくりしていましたが、数十円の豆腐が買えず、さすがに潮時だと思いました」
残ったのは借金と住宅ローンだけ。家族も森川さんの元を去っていった。
「その後、携帯電話販売の派遣社員として働きながら、借金を返す生活をしていましたが、当時の年収は300万円と心もとない。将来を考えたら正社員のほうがいいと思い、転職活動をスタートさせました」
◆転職成功率の低下は数で補う
森川さんはとにかく数多く応募することに注力した。
「年齢で落とされるのは承知のうえ。企業研究をしつつ、条件さえ合えばひたすら転職サイトでエントリーし続けていました。細かく数えていませんが100件は応募したと思います。返信はほとんどがテンプレートの不採用通知でしたが、めげることなく日々続けるようにしてました」
こうした地道な努力が功を奏し、現在は正社員として塾の運営を行っており、年収は約400万円。最近、「塾長」という肩書もついてやりがいを感じているという。
「人から感謝の言葉をかけられる仕事はお金以上の喜びがありますね。自転車操業をしていた頃の借金はようやくあと数年で完済のめどが立ちました。住宅ローンの返済はあと16年。体力の続く限り、まだまだ現役で頑張ります!」
ある大手転職サイトによれば、51〜60歳の転職の場合、内定までにエントリーした企業は平均15.4社というデータも。変なプライドは捨て去り、粛々と履歴書を送ることが勝利の方程式かもしれない。
◆シニアジョブ中島康恵氏が解説するGood Point!
年齢による選考通過の難しさを恐れない心と数をこなすバイタリティ
森川さんの転職活動の内容は、50代転職におけるほぼ最適解。就職や転職の成功率は年齢を重ねるごとに下がる傾向にあるため、「年齢で落とされることを恐れない」という考え方や、「100件ほど応募」したのは、とても理にかなっていると言えます。中高年では特に怠りがちな「会社のことをしっかり調べて、どこに惹かれたのかしっかりアピールできた」ことも良い点ですね。
【シニアジョブ代表 中島康恵氏】
’14年に同社を設立。50代以上のシニア求人に特化した転職支援を行う。日刊SPA!ではシニアの転職・キャリアなどをテーマに連載中
取材・文/週刊SPA!編集部
―[負け組50代転職の極意]―