写真はイメージです 近年は減少傾向にある路上駐車。内閣府『交通安全白書』によれば、13年の駐停車違反は34万7215件だったのが23年は15万4371件と半分以下に減少しており、ドライバーの駐車マナーは大幅に向上している。
ただし、以前よりはマシになったとはいえ、現在も多いことには間違いない。特に迷惑なのは細い道路での路上駐車。道の半分を塞ぐ形で停められると接触しないように細心の注意を払わなければならず、ゆっくり通らなければならない。
しかも、運送会社の2トントラックなど車体が大きいと通行できないケースもあり、迷惑もいいところだ。
◆住宅街の路地に迷惑駐車。住民たちは迂回を強いられるハメに
会社員の新藤昌之さん(仮名・41歳)の近所にもよく車を路上に停めている家があったとか。当然、住民たちの間で不満が噴出したのは言うまでもない。
「同じ駐車違反でも路肩にスペースがある道路ならまだ理解できますが、その道は住宅街にある普通の細い路地。ひどい時は一晩中停めっぱなしの時もありました。私はマイカー通勤じゃないですけど、週末には家族と出かけることが多いので本当に邪魔。
ウチは大型のワンボックスカーだからぶつけてしまう可能性がないとは言えず、車が停まっている場所を避けて遠回りを余儀なくされていました」
◆凶暴な次男坊に地域住民もだんまり
ちなみに車が停まっていたのは、以前から素行不良の次男坊が何かと問題になっていたお宅の前。彼と同じ大学に通う友人の愛車と思われるが、走り屋に人気のありそうな2ドアのセダンでマフラーを改造しているのかエンジン音がやたらとうるさかったそうだ。
住民の中には路上駐車の件も含めてクレームを入れた者もいたが、この家の父親は単身赴任中。母親も出張の多いキャリアウーマンで近所付き合いは皆無。
車の持ち主は「さーせん」と舐めた態度で頭を下げたとのことだが、文句を言われ続けたことにムカついたのか一緒に居た次男坊が「わかったって言ってんだろ!」とキレてそのまま追い返してしまったそうだ。
「数日のうちにその話はご近所中に広がり、誰も文句を言いに行かなくなりました。手を出されそうで怖いじゃないですか。私も情けない話ですが、我慢を強いられても関わりたくない気持ちのほうが大きかったんです」
◆地域の子供からの抗議のメッセージも効果なし
ところが、住民の中にはささやかな抵抗を試みる者も。ある朝、新藤さんは自宅を出て路地を歩いていると、例の違法駐車のフロントガラスには《あたまの悪い音を出す車の運転手さんへ じゃまなので車を早くどかしてください》と書かれた紙が置かれていたのを目にする。
「どこのお宅かわからないですけど、小学生くらいのお子さんが書いたものでしょうね。うるさいエンジン音のことを“あたまの悪い音”と表現しているのが絶妙すぎて思わず笑ってしまいました」
そんな抗議のメッセージも無視されてしまったが、ここで1人の住民が立ち上がる。古くからその地域に住む年配男性だ。自分たちは息子夫婦に家を譲って田舎に移住していたが、もともと教師だった方で曲がったことが大嫌い。
久々に戻ってきた際、路上駐車が周辺住民に迷惑をかけていることが許せなかったのだ。
新藤さんがその家に真向かいに住むパパ友から聞いた話によると、年配男性は母親が帰宅後の夜に訪問。当日、路上駐車はなかったが、母親は自分たちに非があることを棚に上げ、「こんな遅い時間に来るなんて失礼じゃないですか!」と逆に年配男性のことを責め立ててしまう。
この様子に話が通じないと思ったらしく、母親に「あんたじゃ話にならんから旦那に連絡する!」と言って帰ってしまったそうだ。
◆数か月後、路上駐車の家は空き家となってしまった……
「玄関先で話していたらしく、この件もすぐ噂になっていました。しかも、その後本当に旦那さんに連絡したらしく、次の週末には戻ってきて、ウチにも『このたびは息子と家内が……』と菓子折りを持ってお詫びに来ました。奥さんと次男坊は一緒じゃなかったですけどね」
それから間もなく次男坊は一人暮らしを始めたのか見かけなくなり、路上駐車に悩まされることはなくなった。また、さらに数か月には母親も引っ越してしまったそうだ。
「あくまで噂なので本当かはわかりませんが、その夫婦はもともと関係が破綻していたらしく、離婚して家を処分したと聞きました。私も周りの住民も大事にしたくないと思って警察には通報しなかったのにこんなことになるなんて……。
そもそも徒歩5分圏内にはコインパーキングがあり、そっちに停めるようにすればよかったと思うのですが、若かったから駐車場代が惜しかったんでしょうね」
そもそも路上駐車はれっきとした違法行為。通行の妨げになっている以上、やはりプロである警察に任せるのがよさそうだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。