テレビ市場で圧倒的存在感を放つTVS REGZA 全方位戦略が大当たりした理由をキーマンが語る(後編)

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2025年02月07日 18:01  BCN+R

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石橋泰博副社長に今後の目指す方向性を聞く
 2025年1月20日に、全国のパソコン販売店や家電量販店の1年間(2024年1〜12月)のPOSデータを集計し、部門別に販売数量No.1のメーカーを表彰する「BCN AWARD 2025」が発表された。テレビ部門は液晶テレビ(4K未満)部門、液晶テレビ(4K以上)部門、有機EL部門の3部門があり、液晶テレビの2部門を制したのはレグザ。4K未満部門では4年連続4回目、4K以上部門では2年連続2回目の受賞となった。さらに、有機EL部門では昨年からワンランクアップの2位につけ、液晶テレビと有機ELを合算したテレビ全体でも3年連続トップを獲得。テレビ市場において全方位で結果を残し、圧倒的な存在感を示した。絶好調の要因を探るインタビュー記事の前編では、同社のキーマンである石橋泰博取締役副社長に全方位戦略が当たった理由や要因である社内体制の変化について話を聞いた。後編となる本記事では、大きな成果を挙げたプロモーション戦略やモノづくりなどにフォーカスし、レグザの現在と今後目指す方向性などを語ってもらった。

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石橋泰博取締役副社長

●プロモーションではより多くの人にレグザの製品やイメージを発信

――ここ数年、さまざまな媒体でレグザの露出が増えたように感じます。

「画質の良いテレビといえば?」という問いに対して、「レグザ」とご回答いただけるお客様は以前と比較して確実に増えてきています。それは技術開発による機能面の向上や、プロモーションでの露出頻度の増加などのさまざまな要素がうまくかみ合い、結果的にレグザの認知向上に結びついていると考えています。

――発表会などでは製品を分解して中の構造を全部見せるというスタイルで、他社の発表会では見ない手法です。

画質に関しても機能に関しても、中の構造を公開して、なぜ良くなっているのかを説明しているメーカーは他にないと自負しています。この手法は製品に対する当社の自信のあらわれでもあり、媒体を通して、技術開発や機能進化がより具体的に消費者に伝わっていると思います。

――プロモーションでは広告展開だけでなく、YouTubeやSNSなどの情報発信力もかなり強化されている印象があります。

YouTubeの公式サイトでは製品そのものや技術、機能などをかなり細かく、分かりやすく紹介したレグザチャンネルが好評で、登録者はもうすぐ3万というところまできています(2025年1月19日時点)。

また、ブランドアンバサダーを務める目黒蓮さんや人気ゲーム『モンスターハンター』とコラボしたコンテンツなども人気で、かなりの閲覧数を記録しています。

目黒さんはCMの中で6種類の役をこなしているのですが、彼自身がアピールできるコンテンツとして確立されています。当社でいろいろと調べてみると、目黒さんは若い女性だけでなく、小学生から年配の方まで幅広く支持されていることが分かりました。

例えばご主人がテレビを買いたいと言い出したときに、CMを見た奥様や娘さんが「じゃあ、レグザにしようよ」と後押しするようなケースもあるようです。

交通広告は不特定多数に対するメッセージということで、これまではアウトプットが見えづらい部分がありました。しかし、この交通広告でも目黒さんのファンが掲示されている広告をXでポストすることで情報が拡散し、より多くの人の目に触れる機会が増えたと実感しています。

総体的にプロモーション展開では、これまでよりも非常に大きな手応えを感じていますので、今後もさまざまなメディアを通して、消費者に多くの情報を提供していきたいと考えています。

●モノづくりは映像・音・ユーザー体験の3軸で

――レグザのモノづくりにおいて意識しているポイントはありますか?

テレビは「映像」と「音」の2軸で語られがちですが、当社ではこれに「ユーザー体験」を加えた3軸をモノづくりの柱として、製品の魅力を伝えるよう注力しています。

テレビを映像と音だけで語っていても市場は拡大しません。実際、さまざまな調査でテレビの視聴時間は年々短くなっていることが分かっています。やはり視聴時間を伸ばしていかないと、テレビの価値はどんどん下がっていくのではないかと思います。

そこで掲げているキーワードが没入感を表す「イマーシブ」です。先ほど挙げた映像・音・ユーザー体験の3軸でテレビに没入してもらい、ユーザーの視聴時間を伸ばしていきたいと考えています。

――映像と音については高画質化、高音質化がありますが、ユーザー体験とは、どのようなものですか?

具体的な例を一つ挙げると、レグザには「みるコレ」という地上波だけでなく、ローカル局の番組やネット配信コンテンツなどを横断して検索できる独自機能を搭載しています。「みるコレ」で表示されるコンテンツはテレビ番組やネットコンテンツなどの垣根はなく、ユーザーの好きなテーマに合わせて番組やコンテンツを自動で検索します。

また、AIレコメンドシステムによってレグザがユーザーの視聴傾向を学習し、これから放送される番組やコンテンツからおすすめという形でも提示しますので、特に「推し活」には最適な機能です。

この「みるコレ」はテレビの新しい使い方であり、新しいユーザー体験として、よりテレビに没入していただけるのではないかと考えています。

「みるコレでユーザーに新しい体験を」と語る石橋副社長

●AI技術を使ってテレビの価値を上げていく

――1月に開催されたCES2025ではAIを活用した新機能を発表されました。今後、AIはテレビをどのように変えていくとお考えですか?

生成AIに関する機能を発表したCESの会場では「テレビをパッシブなデバイスからアクティブなデバイスにしていきたい」というお話をしました。これからのテレビはユーザーの行動に反応するものではなく、ユーザーに問いかけていくものに変わっていく必要があると考えています。

生成AIの活用はまさにその一歩ですが、重要なのはいろいろな技術の組み合わせです。AIは機能ではなく、あくまでツール。AIはトレンドなので食いつきやすくはありますが、「テレビと会話できます」というだけでは、「それならスマホで十分」という話になってしまいます。

テレビはテレビらしくという前提のもとで、新しい使い方を模索していくのが我々に課されている命題です。AIを活用していくことで、テレビを使う時間を伸ばす、テレビの価値を上げていくということにつなげていきます。

――CESで発表された「生成AIボイスナビゲーター技術」もテレビの新しい使い方に対応するものですね。

そのとおりです。「生成AIボイスナビゲーター技術」は、AIにユーザーの発話の意図や関連情報、トレンドワードなどを理解させて検索精度を上げる機能です。現在、テレビやネットで視聴できるコンテンツは膨大な本数がありますが、しばらく使っていると似たようなレコメンドしか出てこなくなりがちです。要は「何を見ましたか?」というファクターだけでレコメンドしているわけです。

実際はそのときの季節やトレンドなど、レコメンドには数多くのファクターがあります。「生成AIボイスナビゲーター技術」では、当社のコンテンツデータベースやLLM(大規模言語モデル)と組み合わせることで、ユーザーが気づいていない新しいコンテンツとの出会いを提供します。

私はテレビとは「リーンバックデバイス(リラックスした状態で使用するデバイス)」だと思っています。検索ワードを考えたり入力したりしなくても、見たいコンテンツが勝手に表示される。それこそがテレビの究極の姿です。詰まるところは、その以心伝心をどのように実現するか。当社はAIだけでなく、さまざまな技術を使いながら、テレビの新しい価値の再発見に努めていきたいと考えています。

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