NTT島田社長「われわれの最大のブランドは品質」 ドコモの銀行業参入についても言及

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2025年02月07日 21:11  ITmedia Mobile

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NTTの決算概要。当期利益は前期の株式売却益の反動によるもの

 NTTは2月7日、2024年度第3四半期決算を発表した。売上高にあたる営業収益は、対前年比3.4%増の10兆497億円、営業利益は同5.9%減の1兆3992億円で増収減益。営業収益は第3四半期として過去最高を記録したが、モバイル事業や固定通信事業における収益減や、NTTドコモの顧客基盤強化に向けた施策などが利益を圧迫した。


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 NTTの島田明社長は、「年間の利益計画達成は厳しい状況だが、各社の増益努力によって最大限のリカバリーを図っていきたい」と話した。


●通信品質向上などでコストが膨らんで減益


 増収要因としては、モバイル、固定の通信事業を含む総合ICT事業が484億円の増加で、グローバル・ソリューション事業は2316億円、不動産やエネルギーなどのその他の事業が784億円の増加となった。特にNTTデータグループが国内外で好調で、ドコモのスマートライフ事業の拡大も貢献した。


 営業利益では、ドコモの顧客基盤強化や通信サービス品質向上に関する取り組みによってコストが増大したことで683億円の減収となり、利益を吹き飛ばした。地域通信事業の減益も439億円と大きく、利益を押し下げた。


 しかし、ドコモの施策は必要なものとして、「顧客基盤強化やネットワーク品質向上を確実に実行しつつ、さらなるコスト削減などでリカバリーに取り組んでいきたい」と島田氏は強調。地域通信事業は減収減益だが、おおむね進捗(しんちょく)通りだとしている。


 ドコモの決算は、営業収益が同1.1%増の4兆5673億円、営業利益が同7.6%減の8339億円だった。コンシューマ通信事業は同1.8%減の2兆5139億円だったのに対して、スマートライフ事業は同13.6%増の9044億円と2桁成長を達成した。


 営業利益は同8.3%減の6,166億円で、コンシューマ通信が同17.9%減の4188億円、スマートライフ事業は同22.2%増の1978億円となった。スマートライフが減収をカバーした形だが、コスト増加を吸収できなかった。


 モバイル通信サービス収入は、機器収入などで84億円の増収があったものの、irumoへの移行などによる減収が533億円に達した。ただし、第3四半期にはMNPがプラスに転じて純増数も拡大。解約率も0.63%と低水準を維持した。さらにモバイル通信ARPUは前四半期比では10円増、前年同期比では70円のマイナスだったが減少幅は縮小した。大容量プランのeximoへの移行率が61%になったことで、今後のARPU上昇が期待される。


●dカードPLATINUM申込者の6割がeximoポイ活に加入


 ドコモのスマートライフでは、金融・決済事業の同624億円の増加を中心に、全領域で増収。金融・決済取扱高は同14%増の11兆900億円まで伸長。dカード PLATINUMは発行以来好調で、会員数は1月末時点で34.7万を突破した。PLATINUMユーザーはdカード・dカードGOLD利用時の実績よりも21%利用額が増加。マネックス証券のカード積立額も32%増加するなど、利用度が高まっている。


 PLATINUMに申し込む人の6割がeximoポイ活に加入しており、通信のアップセルにもつながっている。コンテンツと連携する「爆アゲ セレクション」に申し込んだ人の方が4.4倍多くeximoに移行するという傾向もあり、ARPU向上につながる施策を今後も強化していく。


 eximoは「期待していた想定を上回って移行していて順調」と島田氏。ahamoもirumoも順調に推移しているという。


 島田氏は、こうした取り組みで「成果は上がってきている」との認識を示し、そのための販促など、コストは増加しているものの、競争激化に対応するために必要な施策も「年度末までしっかりやっていきたい」(島田氏)考えだ。


 ただし、単純な料金の値上げは「競争が激しいので難しい」(島田氏)。どういったユーザーのニーズを踏まえて、どういった料金体系にするか、ユーザーにとっての価値だけでなく、ドコモにとっても一定のコストをカバーできる料金体系が必要との認識だ。


 懸案の通信サービス品質向上では、関東圏(一都三県)の5G基地局でSub6基地局数を1.3倍へと拡大。4G転用の5G基地局数も1.4倍にすることで改善を図る。島田氏は、基地局を増やすこと、エリアチューニングをしっかりきめ細かにやること、パラメーターの制御を適切にすることといった対応が重要だと話す。


 基地局の拡大に向けては、設置場所の地権者との折衝は順調に進んでおり、計画を上回っているとのこと。これから年度末に向けてエリアを拡大していくことで、ネットワーク改善はその後の数字に出てくるとしている。


 「われわれの最大のブランドは品質」と島田氏。無理なスケジュールで進めても失敗するとして、「着実に工程をこなしていく」との構えだ。


●銀行業は「帯に短したすきに長し」 次回の決算までに結論を


 好調の金融・決済事業について問われた島田氏は、「d払いが順調で、dカードもPLATINUMを出して非常に好評。スマートライフでも一番成長している分野なので、さらなる成長にしていきたい」と話した。


 銀行業への参入については、「いろんなことは考えている。言葉は悪いが“帯に短したすきに長し”で、銀行のいらない機能もある。必要な機能だけが欲しい」と説明。マネックス証券やオリックス・クレジット、保険業といったサービスとのトランザクション機能を求めているのだという。


 「最終的に自分たちで新しい銀行を作ることを含めて、できれば次の決算発表ぐらいまでには結論を出していきたい。新しい時代のビジネスモデルに合った機能が重要なので、その機能をどのように獲得するか、それ以外の機能を持つことが重荷になることもある」というのが島田氏の考え。ドコモの前田義晃社長とも話し合って、一定の期間の間に結論を出していく。


 NTT法関連では、改正によって固定電話の処置が決まれば、早いうちにひかり電話やモバイルに巻き取りたいとの考えを示す。社名変更についても「検討しているが、約款の変更が必要で、株主総会の付議が必要」とのことから、早くても5月の決算時になるという。


 NTT法に関して、5日のKDDI決算会見で高橋誠社長が「だいぶ落ち着いてきた」と振り返ったが、改正反対の急先鋒だった高橋社長の退任が決まったことに対して島田氏は、「強いコンペティターだったので、社長を辞められるのは残念というか一抹の寂しさがある」とコメント。松田浩路新社長については、「新たなチャレンジをすることが、新しいものを生み出す力になる。一緒に切磋琢磨できれば」とエールを送った。



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