【ハイキュー‼×SVリーグ】PFUブルーキャッツ谷内美紅は高校から本格開花 上を向けない時は田中龍之介の言葉が支えに

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2025年02月09日 08:21  webスポルティーバ

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『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(33)

PFUブルーキャッツ石川かほく 谷内美紅

(連載32:アクアフェアリーズのセッター、安田美南の理想像は宮侑「スパイカーの力を最大限に引き出すトスが好き」>>)


 

 PFUブルーキャッツ石川かほくの谷内美紅(25歳)は身長185cm。手足も長く、それは大きなアドバンテージだろう。SVリーグでも、その高さは日本人選手のなかで1、2を争う。

 谷内のバレーボール人生には、明確に一番悔しい瞬間がある。

「(筑波)大学では、1、2年の時に全日本インカレで優勝したんですが、3、4年は3位に終わってしまって。特に4年の時は、準決勝で負けた瞬間にコートに立っていなくて......メンバーチェンジをしたあと、そのまま負けてしまった。その悔しさは忘れられないです」

 快活な表情で言いながら、語尾は微かに震えていた。

「3位決定戦があったんですが、どう切り替えればいいかわからず、寝られないままで挑みました。お互い、あと一歩で決勝という悔しい思いを抱えたチーム同士で、決勝の前座のような試合をするわけで......それでも、『吹っ切ってやるしかない』と思って、勝つことができた。その経験は大きいですね」

 敗北の悔しさと、悶々としたなかでの勝利の狭間に、彼女のバレー人生が凝縮されているのかもしれない――。

 石川県金沢市出身の谷内がバレーに本気で取り組むようになったタイミングは、ほかの女子バレー選手と比べると遅かった。

 小学校では、複数の運動をやりながら才能を育むクラブに在籍していた。そこで少しバレーもやったが、初心者同然だった。中学に上がると、仲良しの友人から「バレーをやるよ」と言われた。背が高い谷内の存在を知ったバレー部の監督からも熱心に誘われ、入部を決めた。

「初心者だったので、最初はボールがまっすぐ前に飛ぶだけでうれしかったですね」

 谷内は、少女のように邪気なく笑う。

「周りは、小学生の時からバレーをやっていた子が多くて。私は"お試し"の感じで、最初はボールを投げてもらっても前へ飛ばせませんでした。それが、アンダーで『こっちを狙ってみな』と教わってやってみたら、うまくできたんです。うれしくて、『バレー、やってみようかな』と思いました」

 バレー部は楽しかったが、チームは県予選の1、2回戦で負けていた。ただ、彼女の長身は目を引き、中学3年の時にJOC石川県代表チームに選ばれた。そして本格的にバレーに挑むため、県内の強豪である金沢商業に進んだ。

「地元の金沢商業の監督さんが『背が高い子がいる』と中学に来てくださって。迷ったんですが......JOCの代表チームでは『場違いじゃないか』と最初は思ったんですけど、県内のバレーが強い学校から集まった子たちと一緒にやったら、楽しい瞬間が多かったんです。だから、『続けるなら強い高校で』と思いました」

 ポジションはずっとミドルブロッカーだが、高校では初めてのことばかりだった。「クイックって何?」「滑り込んだことなんてない」と戸惑うこともあったが、どんどん吸収した。

「いろんな人に教えてもらいました。高校では先生方が頑張ってくださって、"できるだけ全国で勝ち上がる"と、Vリーグのチームとも合宿を組んでもらいましたね。そこで元Vリーガーの方が、個人的にブロックやクイックなどを教えてくださり、かなり勉強になりました」

 谷内はそう、感謝を述べる。高校では3年連続で春高バレーに出場。卒業時にはVリーグのチームから声がかかったが、「(本格的なバレーは)高校で3年やっただけだけど、活躍できるのか」と不安が先立ち、高校の先輩が誘ってくれた筑波大学への進学を決めた。

「大学1、2年は控えで、ピンチブロッカーで入ることが多かったんですが、ある試合で、一本スパイクを止めたのを先輩に褒めてもらって。その場で泣きそうになっちゃって、まだ試合は終わっていないよ、となりました(笑)。そこからさらに成長できたと思います」

 彼女はやはり、勝敗の狭間で懸命に生きている。SVリーグでも、それは変わらない。

【谷内が語る『ハイキュー‼︎』の魅力】

――『ハイキュー‼︎』、作品の魅力とは?

「実際の高校でも『高さが売り』『粘り強い』という個性はあるので、親近感が湧きます。春高バレーの東京体育館のコートの描写なども、『あそこだ!』ってなりました(笑)」

――共感、学んだことは?

「烏野だけじゃなく、どのチームも4枚攻撃をしているところですかね。女子の攻撃は、ひとりに頼ってもなかなか決まらない。できるだけ攻撃の枚数を増やし、相手ブロックを分散させるので、そういった点で共感できるところが多かったです」

――印象に残った名言は?

「烏野の田中(龍之介)の『ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるのか』ですね。バレーを長くやっていると、上を向けない時もあるんです。そんな(視線が)下がった時に、上を向ける言葉です。

 あと、烏野が青葉城西に負けた時の、武田(一鉄)先生の『"負け"は弱さの証明ですか?』は、『わかるなぁ』となりました。そのあと、みんなが泣きながらご飯を食べているシーンも好きです!」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位は音駒の黒尾(鉄朗)さん。包容力というか、ふざけているように見えてチームを引っ張っているし、(孤爪)研磨のこともちゃんと見ていて、視野も広いので。2位は烏野のツッキー(月島蛍)。冷静さとクレバーさとツンデレ感。それが、かわいく見えるんですよ。冷静なキャラが好きなので、3位は梟谷学園の赤葦(京治)。破天荒な木兎(光太郎)さんを、掌の上で踊らせているのがいいですね」

――ベストゲームは?

「烏野vs白鳥沢学園も好きですが、映画を観たので烏野vs音駒になっちゃいます(笑)。"クロ推し"ですが、ツッキーもギラギラしていたし、いいシーンが多いので」

(連載34:PFUブルーキャッツ細沼綾は音駒の黒尾鉄朗に共感「目立たないポジション」のミドルブロッカーという仕事>>)

【プロフィール】

谷内美紅(たにうち・みく)

所属:PFUブルーキャッツ石川かほく

1999年7月28日生まれ、石川県出身。185cm・ミドルブロッカー。友人の誘いで中学1年からバレーを始める。中学3年時にJOC石川県代表チームに選ばれ、金沢商業では春高バレーに3年連続出場。筑波大学では全日本インカレの優勝も2度経験した。2022年、PFUブルーキャッツ石川かほくに入団した。

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