
Q. 「花粉症の人はがんになりにくい」って本当ですか?
Q. 「『花粉症などのアレルギーがあると、がんになりにくい』という話を聞きました。毎年花粉症の症状がつらいので、その分、がんのリスクが減るなら嬉しいのですが……。本当なのでしょうか?」A. 残念ながら、俗説です。科学的には証明されていません
「花粉症の人は、がんになりにくいか」とのご質問ですが、免疫の働きから考えると、がんとアレルギーに一定の関係がある可能性は否定できません。しかし残念ながら、これは俗説の域を出ません。花粉症があってもがんになる人は珍しくないですし、花粉症でがんにもならない人もたくさんいます。多くのがんは、免疫システムの低下によってミスコピーされた細胞が増えることが原因で起こると考えられています。私たちの体では常に新陳代謝が行われており、新しい細胞が生まれ、古い細胞が脱落していきます。
しかし、この新しい細胞は遺伝子情報をもとに作られるコピーであるため、さまざまな要因によってミスコピーが発生し、がんのもとになるのです。
一方、免疫システムの働きが過剰になると、本来攻撃すべきでない自分の細胞を攻撃してしまい、アレルギーや自己免疫疾患を引き起こします。例えば、アトピー性皮膚炎は免疫システムが過敏になり、皮膚を攻撃してしまうことで発症します。免疫システムのバランスが弱まりすぎるとがんが発生しやすくなり、強すぎるとアレルギーの原因となるのです。
いずれにしても、健康のために重要なのは、免疫システムが適切な強さで機能することです。免疫のバランスが取れていれば、がん予防だけでなくアレルギー予防にもつながると考えられます。
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狭間 研至プロフィール
大阪大学医学部卒。日本外科学会 認定登録医。大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院などで外科・呼吸器外科診療に従事した後、現在は地域医療の現場で医師として診療を行う。ファルメディコ株式会社 代表取締役社長。医療法人嘉健会思温病院理事長。外科医、地域医療、薬局運営の豊富な経験から、医療と患者さんの橋渡しとなる分かりやすい医学情報発信を行っている。(文:狭間 研至(医師))