写真 このところ動静が伝えられていなかった小室佳代さんが、料理と子育てのエッセイ本『ブランニューデイ あたらしい日』を出版。かなり売れているようで書店では黒柳徹子と佐藤愛子の本の間に平積みになっていました。
エッセイストとしての華麗なデビューをお祝いしながら、本を購入して拝読しました。出版社は『月刊自家用車』を出している内外出版社、というのも意外性がありますが、表紙はピンク色で花があしらわれたデザインで、女性性を感じさせます。
◆「何度も死の淵をさまよった」辛い経験を乗り越える半生
本を開くと「はじめに」という序文に、いきなり「私を死の淵から救ってくれた……」という記述が出てきました。「何度も死の淵をさまよった」小室佳代さん。いったい何があったのでしょう……。
読み進むと、夫が亡くなって鬱状態になり、更年期症状にも悩まされ、婚約が発表されてからマスコミに追われて適応障害になるなど、辛い体験があったとのこと。部外者ながら勝手にコメントしてきた身として罪悪感を刺激され、申し訳なくなってきます。
それでも、周りで支えてくれる人に励まされ、小室圭さんのポジティブシンキングに助けられながら、少しずつ乗り越えていこうとする女性の半生が綴られています。
◆お金絡みの問題は触れず。被害者ムーブ的に振返り
とはいえ、世間で取り沙汰されていたお金絡みの問題には一切触れられていません。
「当事者でしかわからないことは、いつの時にも存在すると思います」とふわっとした記述が。「どこにでも『同調圧力』が存在することを、私は身をもって知る事になりました。それは時には、人を死へと誘う要因のひとつになっているようにも感じてしまうのです」と、被害者ムーブ的な表現で当時を振り返っています。
小室佳代さんは、本のタイトルで『ブランニューデイ あたらしい日』と掲げているように、この本で自分の印象や世の中の記憶を全て上書きしようとしているのかもしれません。
◆男性たちの存在は一切書かれず
小室佳代さんは、お金のトラブル以外に、男性との交流も話題になりました。
夫の敏勝さん以外にも、敏勝さんの幼なじみで佳代さんが「運命の人」と呼んでいたYさん(オープンカー所有)、約400万円の借金問題で揉めていた元婚約者のAさん、一時的に養っていた20歳くらい年上の彫金師(22年頃一時的に復縁説が浮上)など。
エッセイには彼らの存在は……もちろん一切書かれていませんでした。
今思えば、料理上手なのもモテる理由の一つだったのかもしれません。本には料理のイラストが収録されていて、小室佳代さんの絵心を感じさせます。かつてAさんに送った「今年はつややかにまいりましょう」と添えられた春画風のイラストをなつかしく思い出しました。
◆小室圭さんの秘蔵写真は充実で成長アルバムのよう
小室佳代さんをとりまく男性たちは出てきませんが、本には小室圭さんへの思いが詰まっていて、母の愛の強さを感じさせました。小室さんの成長アルバムを見せてもらっているようです。
世の中の小室さんファンにとっては、生まれたばかりの小室さんや、小学生時代の屈託ない笑顔の小室さん、海の王子として活躍する小室さん、フォーダム大に留学中に自炊する小室さん、など秘蔵の写真が多数掲載されているので、充実の一冊かもしれません。
小室さんが眞子さんとアメリカに出発する日にダース・ベイダーのシャツを着ていたのが話題になりましたが、この本には子ども時代にダース・ベイダーにハマったと書かれていて、あのファッションの意味がわかってすっきりしました。
◆夢で「僕は◯◯日に生まれるから」宣言、その日に誕生
小室家では、息子には何も強制せず、やりたいことをやらせるという教育方針だったそうです。
「僕、音小に行く!」「中学はインターに行く。英語を学んで海外へ行きたい」といった小室さんの要望に合わせて、進路を決めていきました。入試対策では、低価格でも家庭教師を引き受けてくれる人が出てくるなど、小室さんは昔から「持っている」人だったようです。
そもそもお腹の中にいるときから、小室佳代さんの夢に出てきて「僕は◯◯日に生まれるから」と宣言して、その日に生まれたというので、小室さんは自分の運命を全て決めてきたのでは? と思わせられました。
眞子さんと出会って結婚するために生まれてきたのかもしれません。小室佳代さんは「奇跡が織りなす『ご縁』」と表現していました。
◆「眞子さん」という名前が一切出てこない
小室佳代さんは「幸せな生活を踏み出した彼らに、水を差すようなことをするつもりはありません」と、渡米説を否定しながらも、アメリカ生活を送る息子を意識してか、見出しなどに「Yes We Can!」「Tomorrow’s another day」「Beyond the sea」「What A Wonderful World」と英文を頻出。
結婚してから息子は遠い存在になってしまったようです。司法試験を受けて一時帰国したとき「3年ぶりに再会した彼の持つ空気感に、私は以前にも増して距離を感じました」と綴る小室佳代さん。母親を一番大切に考えていた小室さんが、眞子さんファーストになったことへの淋しさが伺い知れます。
「彼らのことは『便りがないのは元気な証拠』と受け止めています」と、音信が途絶え気味なことも匂わせていました。何より、皇室に気を使っているのかもしれませんが「眞子さん」という名前が一切出てこないのも気になるところです。「彼ら」「彼女」「息子の配偶者」といった表現にも距離感が表れています。
ドイツ家庭料理店メルヘンヒュッテで料理を習った小室佳代さんは、イラストつきで手の込んだレシピを紹介していて、もしかして眞子さんに「息子にこのくらいの手料理を作れるの?」というメッセージも入っているのでは? と妄想してしまいます。
◆座右の銘の言霊の力でエンパワーメント
世間からの批判もありましたが、息子は眞子さんと結婚しエリート弁護士になって、自身は本を出したらヒット、という輝かしい道を歩んでいる小室佳代さん。
座右の銘の「Tomorrow’s another day (明日は明日の風が吹く)」という言霊の力を感じます。小室さんの座右の銘「Let it be」との相乗効果で、エンパワーメントされてきたのでしょう。
これからも、小室佳代さんの理想の「ブランニューデイ」は更新され続けることでしょう。
<文・イラスト/辛酸なめ子>
【辛酸なめ子】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著書は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。