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【写真】大人な着こなし 平岳大、撮り下ろしショット
■ハリソン・フォードは「神様みたいな人」
――今回はどのような形で尾崎首相役のオファーが来たのでしょうか?
平岳大(以下、平):撮影が約2年前だったので、その少し前だったと思います。『SHOGUN 将軍』の撮影の後に、急に決まりました。僕のエージェントに電話がかかってきて、エージェントから「『キャプテン・アメリカ』のオファーがあるけど?」と聞かれたので、「やるでしょ」と二つ返事でお受けしました。日本の首相役だとは分かっていたのですが、それ以上の詳細を知らされなくて、いろいろ聞いてみたんですけど守秘義務があって、本番当日まで役についてほぼ何も分からないままの状態が続きました。
――『SHOGUN 将軍』で共演された、真田広之さんや浅野忠信さんは、マーベル・スタジオ作品に出演されていましたが、お二人とマーベルトークなどはしたのでしょうか?
平:エミー賞の授賞式の時に絶対に聞こうと思っていたんですけど、会場に着くと、エミー賞のことで頭がいっぱいになってしまいました(笑)。
――マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギからお話を聞いたりは?
平:ケヴィン・ファイギとはなかったのですが、監督のジュリアス・オナーとはZoomでミーティングをしました。いろいろ話した記憶があるんですけど、僕の出演した『Giri / Haji』を見てくださったみたいで、その話もしました。彼だけに決定権があるわけじゃないと思うんですけど、『Giri / Haji』が今回のオファーにつながったみたいです。
――予告編でちらっと映った平さんが演じる尾崎首相の姿は、一見笑顔ではあるけれども腹の中では何を考えているか分からない印象でした。
平:政治家さんって、バチバチにぶつかり合っても感情的にならず、むしろ感情的になった方が負けといったような雰囲気があるじゃないですか。言葉で押すというのでしょうか。そういったことを心がけて今回役作りをしてみました。
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平:日本のリアリティーを表現する瞬間がないかを常に考えているのですが、今回は長時間のシーンではないのと、僕とハリソンのギクシャクにより物語が動いていくので、台本の中に書かれたことを大切に作り上げることに集中しました。
――現場で会ったハリソンさんはいかがでしたか?
平:カメラワークや映像、物語の作り方を、誰よりも分かっているような感じがしました。「さっきこっちから撮ったから次はこうだよね」とおっしゃったり、僕が新しいことをしようとすると「さっきの方がいいね」と言っていただいたり…。それは悪い意味ではなく、後から考えてみると、納得するご意見なんです。モニターを見ると「おっしゃる通りです」と思ってしまう。でも、すごくやわらかく、まるで孫に手ほどきするような感じで伝えてくださるんですよね。本当にいい経験になりました。
――撮影外でハリソンさんとコミュニケーションは?
平:僕はご一緒するシーンが本当に少なかったのですが、こんなどこから来たのか分からないような僕でも仲間に入れてくださったのが印象的でした。ハリソンさんはキャリアが長いので、スタッフたちととても仲が良くて、いろんな話をされているんですけど、隣にいる僕に「今こういう話をしているんだ」「この人はディレクターなんだ」って紹介してくれて、話の輪に入れてくれるんです。本当に神様みたいな人でした。
ハリソンさんには待機用のテントが用意されているんですけど、僕や他の国の首相役の役者たちはスタジオの個室のようなところで撮影中は待機していて、そんな時もこちらに来て、セリフ合わせや雑談をしてくださるんです。「もう帰られるのかな」と思っても、まだ座っていらっしゃる。ハリソンさん流のコミュニケーションというか…。長時間待機して、エキストラさんを含め、みんなが疲れてきたなっていう瞬間でも、笑わせてくれて、「もう1回やろう!」とみんなを引っ張ってくれました。
――サム役のアンソニーさんはいかがでしたか?
平:アンソニーさんに日本語を教えたのは僕なんです! 僕は自分の出演シーン以外を知らないので、サムの日本版声優の溝端淳平さんに聞いたんですけど、とあるシーンでのセリフが僕が教えた言葉でした。アンソニーさんから「これで合ってる?」って聞いてきてくれて。本当に耳がいいみたいで、アンソニーさんは、そのセリフをすぐ言えたんですよ。だからすごいなって。『8 Mile』の時に、見たことのないシャープな俳優が出てきたなと思っていたので、まさか共演して日本語を教えるなんて想像もしませんでした。
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――守秘義務のため、限られた情報だけで役作りをするのは、これまでと違った経験だったのではないでしょうか?
■いきなりコロナ直撃 米移住の5年間を振り返る
平:違いました。すべての情報を持って辻褄を合わせながら役を構築するという方法もありますが、人生は明日何が起こるか分からなくて、今を生きるものなので、マーベル・スタジオのやり方も、このページを一生懸命生きるだけだと思えて、逆に集中できました。
――平さんがハワイに移住し、5年が経ちます。『Giri / Haji』『SHOGUN 将軍』で高い評価を受け、マーベル・スタジオ作品に出演したことを考えると、キャリアを順調に積んでいるように見えるのですが、この5年を振り返ってみていかがでしたか?
平:今年やっと楽になったかなという感じがします。コロナの直前に移住したので、そこから1年は全く何もしなくて、「僕のアメリカ修行はこれで終わっちゃうのかな」とも考えました。「来月の家賃を払えるだろうか」という心配をするほどだったのですが、その頃に『THE SWARM/ザ・スウォーム』のオファーをいただいて、それをローマで撮影していた時に、『SHOGUN 将軍』に受かって…。そこからは休み休みで、終わったら次、終わったら次と作品に取り組んでいます。がむしゃらですね。撮影中でも次のオーディションが来たら、なんとしてでも受けに行きますし、ラッキーなことにいろんな作品に呼んでいただいていますが、やっぱりいつも気を張っていないといけないですね。
――海外進出にあたって、お手本となる方はいましたか?
平:具体的にはいないんですけど、やっぱり真田さんはヒーローでした。名前もヒロだし(笑)。実は『SHOGUN 将軍』撮影時は、あまりお話ししなかったんです。それは僕が演じた石堂が、真田さんふんする虎永の敵役だったからだと思っていて。真田さんはプロデューサーだったので、毎日現場にいらしていたんですけど、ここでダメ出しをすると僕が気負いしたり遠慮したりするかもしれないから、何も言わないんだろうなと思う瞬間がありました。
――今後も海外での活躍を目指す若手俳優が出てくると思うのですが、平さんがアドバイスをするとしたら?
平:昔、日本にいた時に、夏休みにアメリカのエージェントを探そうとしたことがあったんです。アメリカにも行って、一緒にお仕事してくださる人がみつかったのですが、その頃はまだビデオオーディションの時代で、「無名の君は少なくとも半年はロサンゼルスに住んでくれ」と言われました。というのも当時は、オーディションの案内が届いたら、当日にスタジオのキャスティングディレクターのところへ行ってオーディションを受けるという時代だったんです。日本にいながら役をつかむのは都合が良すぎて、ダメだと。
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(取材・文:阿部桜子 写真:松林満美)
映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、2月14日より全国公開。