階段崩落事故で関係先から資料を押収する警視庁の捜査員ら=2021年5月、横浜市 階段崩落事故があったアパートの施工会社「則武地所」(相模原市、破産)は、自社で施工した複数の物件で修理依頼が相次いでいた。代金支払いを巡るトラブルを抱え、産業廃棄物の不法投棄で行政処分も受けるなど、ずさんな経営を続けていた。
国土交通省の事故直後の調査では、則武地所や同社社長ら個人が施工に関わった物件は、東京都と神奈川県で計241棟確認された。このうち6棟の外階段が劣化し、その中の4棟は直ちに崩落などの危険があった。
捜査関係者によると、同社が手掛けた物件は、事故の数年前から修理依頼が相次ぎ、劣化による事故も起きていたが、一斉点検や補修といった適切な対応をしなかった。
アパートの建築に携わった同社元社員は事故直後の取材に対し、崩落した階段踊り場の腐食を防ぐため社員が防水加工の必要性を訴えていたのに、元会長の男(77)は「聞く耳を持たなかった」と明かした。
同社は取引先への代金未払いトラブルを抱え、廃プラスチックなどを不法投棄したとして相模原市から行政処分を受けたこともあった。経営悪化による負債は4億円超に上り、事故翌月に横浜地裁に自己破産を申し立てた。