能登半島地震の発生当日から、被災者を支えた病院。離職率は「ゼロ」の秘密

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2025年02月18日 09:01  日刊SPA!

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常務理事の神野氏
 能登半島地震から1年が経過した。厳しい地理条件や人口減少などにより、一部では「復興ができない」と言われる被災地であるが、実際にはどのような状況なのか。震災から2年目の冬を迎えた現地を直撃した。
◆“スピード対応”で患者を救済。地域医療を担う大病院の活躍

 七尾市の恵寿総合病院は、昭和9年の創業以来、地域住民の健康を支えてきた。一日800人超の外来患者の診療に加え、高齢者が多いこの地で介護や在宅医療なども含めた包括的診療を行っている。

 地震で空調や高架水槽、各種配管が機能不全になったが、震災発生から約1時間半後には院内に地震対策本部を設置し、入院患者の安全確保に加えて被災者200人を受け入れた。

 1月4日から通常の外来も再開するという対応の早さは、ネットでも話題になった。

◆無償の住宅に学童保育設置で「離職者ゼロ」

 さらに驚くべきなのは、県内の各病院ではドクターや看護師が次々と去っていくなか、同病院の離職率は「ゼロ」だったことだ。

「医療スタッフの多くも被災者でした。しかし、そういう状況では患者さんのお世話を続けられないので、隣の氷見市に住宅を確保し2年間無償でスタッフを住まわせました。院内の未使用の病室も開放し、学童保育も設置しました」

 そう語るのは、同病院の常務理事である神野厚美氏。

 現在も、震災関連死を防ぐために週1回、心臓血管外科のドクターを七尾市、輪島市、奥能登などの避難所に派遣し、さらにPTSDなど心のケアのために臨床心理士が担当する窓口も設置している。

 病院の業務はほぼ通常に戻っているが、これまでに数十億円かかった修繕費に関して、国からの助成金が下りるめどは立っていない。

「また震災時に排水を確保するために融雪装置を撤去してしまったので、今冬の降雪量が多いと除雪車が走行するのに通常の3倍以上の時間がかかってしまいます」

 神野氏は「願わくば、復興がもう少し早まれば……」とこぼした。それも偽らざるホンネだろう。

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部

―[[酷寒の能登]住宅復興の舞台裏]―

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