
中学受験を控えた小学4年生の次男が、塾での生活をスタートさせたEさん一家。最初は順調な様子に安心していたものの、次男の“帰り道の寄り道”がきっかけで新たな課題が浮かび上がります。親として、子どもに自由を与えながら責任感を育むためにEさんが選んだ方法とは…?
【漫画】お金の使い方は、塾では教えてくれないから…(全編を読む)
順調な滑り出しと思いきや…
神奈川県在住のEさん(40代)は、小学4年生の次男を大手の中学受験塾に通わせ始めました。2年前に中学受験を終えた長男に続き2度目の中学受験となるEさんですが、次男は長男と違い自由奔放でマイペース。勉強に興味が薄かった次男ですが、今のところたくさんの宿題をきちんとこなし、塾での授業態度も良好。塾の友だちと切磋琢磨しながら楽しそうに過ごしている様子に、Eさんも胸をなでおろしていました。
普段の通塾は夕方から夜なのでEさんが送迎していましたが、長期休みの間は、次男は昼間に一人で電車通いをするように。その頃から、Eさんは少しずつ「何かがおかしい」と感じるようになります。
「帰ってくるのに、時間がかかる」その理由は?
塾から駅までは徒歩5分。そこから電車で2駅、最寄り駅から自宅までは徒歩10分というルートなので、通常なら30分以内に帰宅するはず。塾を下校するタイミングにはメールが届く仕組みなので、Eさんはおおよその帰宅時間を想定していました。しかし、ある日から帰宅時間が10分、15分と伸びていくのです。不審に思っていたEさんですが、その理由を突き止める出来事が起こります。
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ある日、次男が見慣れない木製のシャープペンシルを手にしているのを発見しました。それは以前から次男が欲しがっていたもので、2000円と少々高額だったため、Eさんは購入をためらっていたものでした。
「あれ? これ、どうしたの?」と尋ねると、次男は「前に買ったやつだよ」と平然と答えます。
謎の買い物と“寄り道”の実態
問い詰めた結果、次男は塾帰りに友人らと文房具店へ寄り道し、自分で保管していたお年玉を使って購入していたことが判明しました。さらに、交通系ICカードの履歴を調べてみると、ほかにもボールペンやサインペン、さらには駅前でたい焼きまで購入していたことが明らかになりました。
「たい焼きくらい…」と思う反面、Eさんの胸には引っかかるものがありました。
「友だちと一緒に下校しているのに、自分だけたい焼きを食べたの?」
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「いや、僕が買ったたい焼きを、友だちと分けて食べたよ」
「ボールペンは持ってるよね? どうしてわざわざ買ったの?」
「こすると消えるペンが欲しかったんだよ。授業で使えるし」
Eさんは塾内にある自販機で息子が飲み物を買うことを許していました。交通系ICカードには、いざという時困らないようしっかりチャージをしていましたし、お財布には緊急用に千円を入れておきました。育ち盛りだし、お腹がすいたら何か買っていいよとも伝えていました。
しかし、次男も少々“自由に使えるお金”に気を良くしていたのかもしれません。次男にとっては大きな冒険だったのかもしれませんが、Eさんは「お金の価値や使い方を教える必要がある」と痛感しました。
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親が伝えるべき“お金の授業”
Eさんは次男に「お金を使う責任」を学んでもらうため、新たなルールを設けました。
欲しいものは購入する前に必ず親に確認する。緊急性があるのか、本当に必要なのものなのか、家にあるもので代用できるのではないか、一度冷静になって考えさせるようにしました。
また買い食いについても、ルールを徹底しました。飲み物はお茶か水にすること。炭酸飲料やジュースなどはなるべく買わないこと、お腹がすいたときにつまむお菓子は、あらかじめ塾のカバンに入れておくことにしました。
◇ ◇
次男の「寄り道騒動」は、Eさんに「子どもの成長」と「親として教えるべきこと」の両方を考えさせるきっかけとなりました。自由を与えつつ責任を学ばせる難しさを感じつつ、「お金の使い方は家庭で教えるべきこと」だと改めて実感したといいます。確かにお金の使い方は、塾では教えてくれません。
「すべての冒険をコントロールすることはできませんが、正しい知識と習慣を伝えることで、安心して子どもを見守れる親でありたいと思います」とEさん。次男の冒険は始まったばかり。この経験が、勉強だけでは得られない貴重な教訓になることを願っています。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)