iPhone 16e「約10万円」の衝撃。今後の現実的な選択肢は“中古iPhone”か、Androidか

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2025年02月20日 18:10  日刊SPA!

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新発売のiPhone 16e。一定層から支持を受けるTouch ID(指紋認証)は搭載されず、上位モデルに似た外観となった
 日本時間の2月19日深夜、Appleは新商品「iPhone 16e」を発表した。
 Appleは通常、1〜2時間程度のライブ映像でニューモデルをじっくり宣伝することが多い。逆に、モデルチェンジの内容に花がない場合は、 大きなPRなしでラインナップを更新することもあり、こちらは俗に「サイレントアップデート」と呼ばれる。

 ところが今回は、サイト上にプロモーション映像を公開するという折衷的な形となった。iPhone 16eはまぎれもない“新商品”であり、こっそりとラインナップに忍び込ませるわけにはいかないが、かといって世間をあっと驚かせるような仕掛けもないため、どっちつかずの方法で公表したのだろう。

 iPhone 16eはあくまで“廉価版”という位置付けであり、利益率の観点からも、あまり強くプッシュしていない商品だと推察できる。しかし日本人が待ち望んでいたのは当の“廉価版”なのだから、iPhone 16eの発表は大きな朗報になる……はずだった。

◆iPhone SEは「E」シリーズへ

 手頃な価格で人気のiPhone SEが最初に発売されたのは、9年前にあたる2016年3月のことだ。当時は実勢8万円台の「iPhone 6s」がメインストリームの最新モデルだったが、その約半分ほどの価格で市場に投入されると、持ちやすいサイズも相まって好評を博した。

 当初は途上国〜中進国の市場を狙って企画されたSEシリーズは、iPhone志向が高い日本でも愛用されるようになる。伝統的な“新規0円”商法の終わる頃と重なったほか、モデルチェンジが春先にあるというのも、4月に新年度を迎える日本にとっては好都合だったからだ。

 2020年春に第2世代、2022年春に第3世代のiPhone SEが発売されると、いずれも高い売上を記録する。それからは“2年おきのモデルチェンジ”が期待されていたが、2024年春の発売が予想されていた“第4世代iPhone SE”は結局登場せず、今回のiPhone 16eの登場をもって、SEシリーズ自体が手仕舞いとなった。

 また、iPhone SEの筐体はメインストリームのモデルよりも小柄で、“持ちやすいiPhone”としての役割も担っていたが、 iPhone 16eの寸法はiPhone 16とほとんど同一になった。

 ラインナップにminiシリーズがない今、“持ちやすいiPhone”は完全に姿を消したということになる。電車での通勤時など、片手で操作することが多いユーザーにとっては悲報というしかない。

◆ニューモデルの構成は“妥当”の一言

 廉価版という位置付けのiPhone 16eだが、実際には主要な点でメインストリームのiPhone 16に並ぶ性能を有しており、部分的には上回っている。

 デュアルカメラや「カメラコントロール」が非搭載で、ノッチの形状はiPhone 14までのスタイルに逆戻りしているが、画面右側面の「サイドボタン」はしっかり搭載されており、コネクタも人気のUSB-C仕様。バッテリー駆動時間がiPhone史上最長となったのは立派なセールスポイントで、iPhone 16eを選ぶ決め手になりそうだ。また、高級機種に合わせてTouch ID(指紋認証)を廃し、Face ID(顔認証)に統一された。

 日本では今年4月にデビュー予定のAI機能「Apple Intelligence」にもフル対応するが、PR動画上で紹介された使用例は「ChatGPTにレシピを尋ねる」といったもので、新鮮味を欠いている。Appleが信条とする“高度なプライバシー保護”はたしかに魅力だが、iPhone 4SにSiriを搭載して話題になった頃と比べると、先進的なイメージはなくなった。

◆何よりも気になるお値段はズバリ…

 日本のユーザーが首を長くして“春のiPhone”を待ち続けて来た理由は、価格である。他の先進国ではインフレに伴って賃金も上昇しているが、平成時代に労働運動が下火になった日本では、勤労者の実質賃金は極端に低く抑え込まれている。

 それに加えて2022年には災害級の円安が到来、しかも2024年に始まる米価の高騰も重なり、家計のエンゲル係数が急上昇中だ。「以前と同じ値段でスマートフォンを買い替えるのも厳しい」という人が、少なくないのではないだろうか。

 2022年に発売された第3世代のiPhone SE(エントリーモデル)は、発売当初の価格が税込で6万円台前半。後に円安を受けて値上げされているが、iPhone SEの市場価格は、スマホ買い替えのひとつの目安となっていた。

 ところが今朝発表されたiPhone 16eは、エントリーモデルの最低価格が税込で99,800円(アメリカでは税抜599ドル)。かろうじて10万円の大台を切ってこそいるが、米飯のかさ増し方法がテレビで解説されている昨今、この新商品を「安い、安〜い!」と言う勇気はない。

 ちなみに、iPhone SE(第3世代)のアメリカ価格は429ドルだったので、世界的に価格の底上げがされた形になる。性能を考えればiPhone 16eの価格設定は妥当で、むしろ“お買い得”でもあるが、Appleは今後、500ドル未満のスマートフォンを作るつもりがないのかもしれない。そうなると、ユーザーの側も身の振り方を考える必要が出てきそうだ。

◆Androidという選択肢

 日本のスマホ市場におけるiPhoneのシェアは、約6割である。

 この6割の人々がiPhoneを選んだ理由はさまざまだが、30代以上だと「昔使っていたスマホがひどすぎたから」という理由でAndroidから乗り換えて来た人が一定数存在する。2013年にドコモがiPhoneの提供を開始すると、その傾向は顕著になった。

 また、10代では「iPhoneじゃないと学校で仲間外れになる」という理由もあるようだ。「みんな同じでなければならない」という観念が良いものだとは思わないが、AirDropによるファイルの送受信など、iPhoneに統一するメリットがあるのも事実である。

 しかしこれからは、iPhoneにこだわる意識を変える必要があるかもしれない。Androidなら5万円台で立派な最新機種が買えるし、3万円台でそこそこ使える製品も多い。キャリアや販売店の割引があれば、なお安く入手することも可能だ。

 スマートフォンが日本で普及を始めた2010年頃、筆者はPCやスマホのハウツー本を制作する会社におり、初期の国産スマホはほぼ全機種を体験した。中には本当にひどい製品もあって、結果として日本の消費者の間にAndroidへの忌避感が根付いたのにも納得できる。

 幸か不幸か、そういうメーカーはすでに淘汰されたので、現在販売されているAndroidスマホは、あの頃とは別物である。10万円がポンと出せるならiPhone 16eを買えばいいが、そうでなければ、Androidスマホの情報収集を始めてみてはいかがだろうか。

◆中古でいいからiPhoneを…

 すでにiOSアプリをたくさん所有していたり、自宅のMacと連携していたりと、iPhoneが手放せないケースも多い。その場合には、iPhone を中古で買うことも検討しよう。Apple製品の中古価格は高止まりしがちで、しかもOSアップデート(通常は発売から7年ほど)の期限切れを意識しなければならないが、どうしてもiPhoneのリプレースが必要な場合、他に手段はない。

 逆に、最新のiPhoneを積極的に買って、程よい頃に中古で売るというサイクルも、iPhone派の経済的負担を和らげてくれる。この場合も、最新のOSアップデートが可能なタイミングを計って売買するのがいいだろう。

◆「Apple Intelligence」に対応するモデルは…

 ところで、昨年秋以来Appleは生成AIに「Apple Intelligence」と名付け、新たな看板にしたい考えだ。しかし現在のところ、こちらに対応するiPhoneは「iPhone 15 Pro/Pro Max」と、最新のiPhone 16シリーズのみ。

 つまり、型落ちのiPhoneではApple Intelligenceを利用できず、持ちやすいiPhone SEやminiシリーズは完全に蚊帳の外だ。“中古派”や“片手派”にとっては、これまた悲報である。

 旧モデルの性能ではAppIe Intelligenceへのフル対応は望めないものの、将来的に一部の機能(クラウドサーバー上での生成)が解禁される可能性はあると見ている。これに関しては、Apple Intelligenceの日本語版が解禁される4月以降、より詳細な情報が手に入るようになるだろう。

 いずれにしても、待ち遠しかった廉価版iPhoneのリニューアルは、素直に喜べない結果になってしまった。製品として不当な部分はないのだが、日本のユーザーのニーズは、もう一段階下の価格帯に集中しているのである。

 昨今のひどい円安が終わらない限り、10万円を大きく切る価格で新品のiPhoneを買うことはできないのだろう。どこか喪失感を伴う、iPhone 16eのお披露目であった。

<TEXT/ジャンヤー宇都>

【ジャンヤー宇都】
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆

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