
知的障害を伴う自閉症の女の子、ちーちゃん。2024年12月に5歳を迎え、これまでの5年間をまとめた成長記録動画はYouTubeで200万回再生を突破しました。投稿したママ、みどぅさんは、ちーちゃんと弟のぞくんの2人を育てながら、正社員として時短勤務し、SNSで自閉症児の育児について発信を続けています。SNSで発信する理由、これまで経験した福祉支援に関する思い…みどぅさんに話を聞きました。
娘がより生活をしやすい環境を作りたい
ーーSNSで発信を始めたきっかけや、活動をしてきて良かったと感じることは?
「ちーちゃんの障害に対する自分自身の葛藤や学び、嬉しかったことを形に残したいなという思いがあり、最初はInstagramを始めました。発信し続けることで、同じような悩みを抱える自閉っ子のママさんとの交流やアドバイスをいただけるようになり、子どものことを一緒に考えて共に乗り越える仲間が増えた感覚で、これまで孤独だった自閉症育児が楽しくなり始めました。
YouTubeを始めて1年が経つ今、動画を見てくださった地域の方から声をかけていただいたり、娘のことを一緒に考えてくれる方が増えたり、支援の話が広がっているなと感じます。
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自閉症は、世間から見たらきっとマイノリティだけど、一般的に見える家庭の中でも存在するんだってことと、愛らしさを障害者との縁がない人にこそ動画を通して知ってほしい。私は娘の障害に対して、可哀相とか暗い印象を持たれたくないです。インクルーシブな社会が成り立つためにも、YouTubeで我が家の生活を楽しく発信することが、娘を含む発達障害児が生活しやすい環境を作ることに繋がるといいなと思っています」
福祉支援の現実…地域差も
ーー1歳半健診から始まり、発達検査、診断、療育、児童発達支援など、様々な福祉支援サービスなどを受けてこられたと思いますが、もう少しこうだったらいいな、よかったなと思うことはありますか?
「私たち家族が住んでいる地域は、福祉支援が充実しているとは言えない環境です。自閉症の傾向があると言われてから、最初の療育開始まで半年近くかかりました。始まってからも月2回の2時間だけしか通えず、意味あるのかな?と最初思っていたくらいです。親子同伴の必要があり、曜日もこちらから指定できないので仕事との両立にも苦労しました。
療育の頻度をあげたい場合には、療育園という選択肢もありますが、私の地域の療育園は預かり時間が短いこともあり、正社員を辞める必要が出てきます。
現在は、支援が増えて週2回の療育と月2回の作業療法、日中は保育園に個別の加配をつけてもらい、定型発達の子どもたちと同じ環境で過ごさせていただいています。親が自ら動いて、ようやく今の形に落ち着きましたが、福祉支援の手厚い自治体に住んでいる方からしたら、現在の娘の支援の量すらも、手薄に感じると思います。
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SNSをやっていると、他の自治体がどれだけ手厚いか、ママ同士のコミュニティでわかってしまうんです。『娘の方が困り感が強いのに、住む地域が違うだけで支援してもらえないのはどうして?』と地域差に思い悩むことも多く、個人で解決できる悩みを超えてしまうもどかしさがあります。
保育園の送迎付きや、土日も利用できる児童発達支援施設がもっと増えてくれたら、働くママも療育と仕事を両立できると感じます」
『暗黒期』のママ、パパへ「子どもへたくさん愛を伝えてほしい」
ーー自閉症育児で今まさに『暗黒期』に入っているママさん・パパさんへ、みどぅさんの経験から伝えたいことは?
「我が子のことが大切で心配だからこそ、親御さんが真剣に育児に向き合っているからこそ暗黒期は訪れると思っています。周りの子どもたちの発達とつい比べてしまったり、思うような支援を受けられなくて焦ったり、そもそも自分自身が子どもの障害を受容できなかったり、悩みを理解してくれる人や相談できる人が周囲にいなかったり…子ども自身の発達の遅れと同時に、障害に対する周囲との距離感や壁に悩むのが暗黒期の恐ろしさだとも思います。
私もまだ乗り越えきれた、とは正直言い切れません。節目のたびに壁にぶち当たっては、波のように暗黒期を何度も繰り返す未来がなんとなく想像できています。ただ、一度波を乗り越えた私が思うに、暗黒期は決して悪いことではなく、暗黒期があったからこそ親として成長できたと思っています。
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娘が療育に通い初めて1年経った頃、健常の子たちはもっと成長スピードが早いので、娘がゆっくり頑張って成長していても追いつくことはないことに気がつきました。また、同じ療育を受けている子どもたちの中でも発達に差を感じ、『何もできない娘は、療育に通わせる意味ないんじゃないか』とさえ思うこともありました。
療育は、娘が定型発達に追いつくためじゃなく、今後生きていくための居場所を作っているんだという考え方に変えてから、私の中で周りと比較することが減り、娘の成長だけを純粋に楽しめることが増えました。
『会話ができない自閉症娘の5年間』の動画を作るにあたって過去の写真を見返しては、『どうしてあの頃、もっと娘のことだけを純粋にみて、可愛がれなかったのか』と少し後悔しました。目の前のことに必死で、当時気づけなかった娘の幼い愛らしさに、今ようやく気づいても、もう当時の娘には会えないんだと虚しさを感じました。
暗黒期真っ只中のママさん、パパさんこそ、目の前のお子さんにたくさん愛を伝えてほしいです」
お気持ちを赤裸々に語ってくれたみどぅさん。みどぅさんのSNSアカウントでは、自閉症のちーちゃん、食物アレルギーのあるのぞくんとの日常やママの思いなどを発信しています。
(まいどなニュース/ラジオ関西・五ヶ瀬 あお)