
半年後の9月13日に開幕する「東京2025世界陸上」。元日本記録保持者で東京オリンピック™女子100mハードル日本代表の寺田明日香(35・ジャパンクリエイトグループ)に、集大成と語る東京世界陸上への思いを聞いた。12秒台が7人と超激戦となっている同種目の代表争い。35歳の寺田が“東京”を目指す理由には、愛娘・果緒ちゃん(10)の存在があった。
【写真を見る】100mH・寺田明日香「30代後半の星になりたい」1人娘・果緒ちゃんに見せられなかった勇姿を“東京世界陸上”で
寺田は、2月に鹿児島で合宿を行っていた。「東京オリンピックから考えたら4年ですからね、まさかこんなに陸上をやっていると思わないですよ私も。今年はケガもなく痛いところもなく過ごせているというのはありがたいなと思っています」。
愛娘・果緒ちゃん(10)の存在試合の時、いつも応援に駆けつけてくれる1人娘の果緒ちゃんは、寺田にとって何にも代えがたい、心強い存在だ。2019年9月に日本人初の12秒台(12秒97)をマークした時も、当時5歳の果緒ちゃんはレースを終えた寺田に駆け寄り「おめでとう」と祝福してくれた。自らその日本記録を更新した際も、隣には果緒ちゃんがいた。
ところが、初めて立った夢の舞台、2021年の東京オリンピックは、新型コロナウイルスの影響から無観客での開催に。「ママ、がんばれ〜!・・・聞こえないよ」(当時の果緒ちゃん)。果緒ちゃんは、競技場の外から声援を送ることしかできなかった。
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寺田は、オリンピックの舞台で同種目、日本勢21年ぶりとなる準決勝に進出。レース後には「みなさんに背中を押していただきながら走れたのでありがとうございますと言いたい」と感謝を述べた。
4年前は娘に直接晴れ姿を見せられなかったが、そのチャンスが再びやってくる。9月13日に、国立競技場で開幕する東京世界陸上だ。
「果緒もそうだし、本当に見せたかった人たちに国立競技場で走っている姿を(東京五輪では)見てもらえなかったのが大きくて。東京世界陸上もあるので目指していけたらいいなと思っています」
鹿児島での合宿中には、果緒ちゃんとスマートフォンでビデオ通話。来月小学5年生になる娘とは、昔のように常に一緒にいられなくても、変わることのない絆がある。
果緒ちゃん:ママ何曜日に帰ってくるの?
寺田:(4日後の)日曜日じゃない?
果緒ちゃん:なんで?
寺田:なにかお土産買っていくから。
果緒ちゃん:お土産じゃなくてママが欲しいの。
寺田:ありがとうございます。笑
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愛する娘との他愛のない会話がエネルギーとなっている。
“今度こそ国立競技場で走る姿を娘に”。その思いを胸に、彼女は東京世界陸上を目指すことを決めた。
「久しぶりの東京での世界陸上なので、やっぱり東京オリンピックの借りを返したいみたいなところもありますし、色んな方々に『え、35とかでも目指せるんだ〜』みたいに思って欲しいし、30代後半の星でありたいなと思っているので、なかなか自己ベスト目指すとか・・・今みんなが強くなってきているので、難しくはもちろんなってきてるんですけど、置いていかれないように戦えるように作っていきたいなと思っています」
■寺田明日香(てらだ あすか)プロフィール
北海道札幌市出身、1990年1月14日生まれ、娘・果緒ちゃんは来月で小学5年生。
陸上女子100メートルハードルでインターハイ3連覇。日本選手権3連覇など好成績を残した後、摂食障害、疲労骨折により2013年に引退。結婚、大学進学、出産を経て2016年に女子7人制ラグビーに競技転向する形で現役復帰し、日本代表練習生として活動したのち、2019年から陸上競技に再転向。同年同種目日本人初の12秒台&19年ぶりに日本新記録(12秒97)を樹立し10年ぶりに世界陸上に出場。2021年には2度目の日本記録更新、日本選手権では同大会史上最長ブランク11年ぶりの優勝を果たし、東京オリンピックに出場。同種目では日本人21年ぶりとなる準決勝進出を果たした。2023年8月には自身3度目の世界陸上に出場、2025年は東京開催の大会で4度目の出場を目指す。
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