電通社長に聞く「営業の極意」 クライアントのニーズを理解する秘訣とは?

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2025年03月15日 13:01  ITmedia ビジネスオンライン

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dentsu JapanのCEOで、電通社長も務める佐野傑氏(撮影:河嶌太郎)

 電通が発表した2024年の総広告費は、通年で7兆6730億円(前年比104.9%)だった。2021年から4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新。日本の広告市場は、好調な企業収益や消費意欲の活発化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、「インターネット広告費」を中心に「マスコミ四媒体広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つ全てのカテゴリーが成長している。


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 国内の電通グループの総称であるdentsu Japanも、4期連続で過去最高の売上総利益を更新中だ。広告事業の好調に加え、DXやコンサルティング事業の成長も寄与している。


 dentsu JapanはAX(アドバタイジングトランスフォーメーション:高度化された広告コミュニケーション)、BX(ビジネストランスフォーメーション:事業全体の変革)、CX(カスタマーエクスペリエンストランスフォーメーション:顧客体験の変革)、DX(デジタルトランスフォーメーション:マーケティング基盤の変革)という4つのトランスフォーメーションを打ち出してきた。


 dentsu JapanのCEOで、電通社長も務める佐野傑氏は、この4つのトランスフォーメーション領域を強化。dentsu Japanに加え電通グループ全体のトランスフォーメーションにも注力してきた。佐野氏は営業領域で数多くの経験を有し、特にBX領域では国内グループだけでなく、グローバル全体もけん引している状況だ。電通の営業を率い、グローバルでトランスフォーメーションを推進してきた佐野氏に、若かりし頃に学んだ「営業の極意」を聞いた。


●「1本でいくら儲かるのか」 仕事に深みを出す方法


――佐野さんは、テレビや新聞などの広告枠を扱うメディア部門出身ではなく、広告主との直接的な関係を築く営業畑を長く歩んできました。クライアントのニーズを理解する営業の秘訣をどのように考えていますか。


 仕事をしていると、どうしても与えられた目の前の課題だけに集中してしまうところがあります。例えば「いい広告を作ってくれ」と言われると、いい広告を作ろうと頑張ります。ところが、そもそもの課題は何なのかを考えると、この商品が売れなければならないことです。この商品が売れなければならないということは、事業そのものがうまくいかなければなりません。そしてこの事業を今やるということは、企業としての課題がそこにあるわけです。


 ですから、クライアントからの相談内容だけを考えるのではなく、そこからその企業全体の課題をよく知る必要があります。そう考えると、日々の仕事の質が変わっていきます。その企業全体を知った上で、本質的な課題を発掘し、その課題解決に向けてクライアントとともに取り組んでいくことが重要だと考えています。


――若かりし頃の佐野さんは営業社員として、クライアントのニーズをどのように知ろうとしていましたか。


 データで調べたり、クライアントとよく話し合ったりすることも大事なのですが、例えば飲料であれば、一緒にコンビニエンスストアを回ってみることなどもしました。また、バイヤーである各コンビニチェーンと、そのクライアントがどんな交渉をしているのかを学ばせていただきました。小売の場合は、クライアントの製品がどんな価格で卸され、1本でいくら儲(もう)かるのかという、クライアントの社員なら当然知っているようなことを知ることも重要です。


 1本いくらで売れていくら儲かるのか。これは、もしかしたら広告には直接関係ないのかもしれません。ただこれを知っておくことで、製品がどれぐらい売れるとクライアントは投資を回収できるのかが見え、仕事に深みが出て、仕事に真摯に向き合えるようになるのではないかと思います。


――リーダーとして大切にしていることを教えてください。


 フランスの哲学者、アランの『幸福論』の言葉に「悲観は感情、楽観は意志」という言葉があります。感情に引きずられれば悲観的になる一方、逆に意志をしっかりと持てば、楽観的でいられるという意味です。リーダーとして、意志を持ってポジティブでありたいと思います。


――ポジティブであるためには、どんなマインドであるべきなのでしょうか。


 物事をポジティブに捉えることだと思います。例えば、ある商社マンの昔の例え話があります。「誰も靴を履いていないからここでは売れない」と言った商社マンと、「まだ誰も靴をはいていないから商機がある」と言った商社マンがいたのだそうです。


 同じ物事でも見方によって、ずいぶん考え方が変わってきます。私も経営者として、多様なステークホルダーと、ポジティブな可能性についての話をしていきたいと考えています。


(アイティメディア今野大一、河嶌太郎)



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