
ここまで三拍子揃った映画化も珍しい。様々なメディアミックス化がなされている『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで一躍名を挙げた阪元裕吾監督が、自身の世界観と相性抜群の漫画『ネムルバカ』を実写映画化。原作良し、演出良し、そして…。
ページめくる手が震える
「あまりにも自分が憧れている青春にドンピシャで。決してキラキラではないダラダラとしたモラトリアム感に痺れました」
葛藤しつつもモラトリアムな日々をダラっと生きる女子大生・入巣柚実を演じたのは、乃木坂46の久保史緒里(23)。
「原作の魅力である余白が脚本にも反映されていて、大学の寮で共同生活を送るルカ先輩(平祐奈)との他愛のない、でも面白い会話のラリーが想像できて、映画になった時にその余白がどう解釈されるのかドキドキ。ページをめくる手が震えました」
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逆張りで盛り上がる
阪元監督の『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ第1作も、大きな話題になる直前に映画館で鑑賞していた。
「アクションももちろん素晴らしかったけれど、私は主人公の殺し屋二人の部屋での会話が大好き。『この子たち、本当に生きている!』と驚いたのを覚えています。その監督である阪元さんと御一緒出来るなんて…」
初対面で「類は友を呼ぶ」を妙に実感。
「阪元監督と初めてお会いして思ったのは『うん、この人!この人!』でした。本読みの時に“流行ものにあえて乗らないカッコ良さ”の話で盛り上がりました。私が『逆張りはダサいけれど、もはや一周回ってカッコいい』と伝えたら、阪元監督も『わかる!わかる!』と私の言いたいことをすぐに理解してくれて。ひねくれた話題で盛り上がる私たちをたいちゃんは苦笑いで見守っていました」
ボロ泣きで爆笑
思い出深いシーンは、ファミレスでの激高場面。ルカに好意を寄せていた男友達・田口(綱啓永)に入巣がブチギレる。
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「阪元監督からは怒りの温度に対する細かい調整がありました。何度も撮影して、普段声を荒げたことのない人が怒ったかのような絶妙なテイクがOKになりました。『怒った入巣ってこうだよね』という解釈が監督と一致した瞬間は本当に嬉しかったです」
ボロ泣き演技にも手応えあり。
「田口にブチギレ後、入巣がファミレス前でポロポロと泣く場面では、泣いている私の横で阪元監督が『これが撮りたかった!』と大爆笑。演じる私自身も『そこで泣く!?』と思ったくらい、入巣ならではのおかしさが出た名シーンになりました」
俳優業は宿命
乃木坂46に加入して9年目。大河ドラマへの出演や連続ドラマ、映画への主演など、俳優として大役を担うことが増えてきた。
「小さい頃からドラマっ子で、小学生の頃は家に帰ったらドラマの再放送を見る毎日。昼ドラも大好きでした。そんな自分がまさか演技の世界に足を踏み入れるとは」と目を丸くしながら「お芝居には100%の正解がないのが怖いけれど、いくらやっても満足できない事が刺激になっているのも事実。だからこそ続けたいと思うのかもしれません。俳優業は運命的な出会い、宿命だなと感じます」
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いい原作、いい演出、いい演者の三拍子が揃った『ネムルバカ』は、3月20日公開だ。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)