追悼集会で、東京空襲犠牲者の名前を読み上げる大学生=20日午前、東京都江東区 80年前の3月10日未明にあった東京大空襲では約10万人の命が奪われたとされ、都内の市民は終戦までに100回を超える空襲を受けた。遺族らは20日、「東京大空襲・戦災資料センター」(江東区)で、犠牲者の名前を読み上げる追悼集会を開いた。
集会は、亡くなった一人一人を心に刻むため、遺族らが2021年から毎年企画。今年は、遺族や有志、事前収録の小学生ら約80人が、朝鮮人や米軍兵士を含む都内の空襲犠牲者4138人の名前を約5時間かけて読み上げた。
母親と弟2人を大空襲で亡くした河合節子実行委員長(86)は、「犠牲者一人一人には名前があり、家族があり、それから先の生きる未来があった」とあいさつ。「読み上げられた名前は、平和への道しるべになる」と語った。
緊張した面持ちで丁寧に犠牲者名を読み上げた相模原市の大学3年飯田健太さん(21)は初めての参加といい、「この積み重ねが、戦争の惨劇を語り継ぐことにつながる」と話した。
空襲犠牲者の名前を残し、伝えていく取り組みは他にもある。東京空襲犠牲者遺族会と市民団体は8日、浅草公会堂(台東区)で、犠牲者441人の名前が印字されたタペストリー(合成繊維製の布地)を初めて公開した。企画に賛同する遺族を募り、今後犠牲者の名前を追加していくという。
大空襲で母と弟を失った利光はる子さん(97)=板橋区=はタペストリーを見詰め、「名前が残せるようになった」と涙ぐんだ。

東京空襲の犠牲者の名前が印字されたタペストリーを見詰める遺族=8日、東京都台東区