4月5日20時をもって約60年の歴史に幕を下ろした「東京高速道路(KK線)」の跡地を歩く「Roof Park Fes&Walk」が4月18日、19日に開催。19日に行われたウォーキングイベントに参加しました。
今後、歩行者中心の公共的空間へと生まれ変わる予定というKK線。これまで車でしか通ることのなかった場所を「歩行者目線」で歩いてみたら、愉快な発見が満載でした。
東京高速道路(KK線)は、戦後の銀座の復興と自動車の交通量緩和を目的として建設された自動車専用道路。1959年に部分開通、1966年に全線での共用を開始しました。
|
|
長らく首都高速道路と一体化した運用が行われてきましたが、実は別個の道路。高架の下にテナントビルを設け、その家賃収入によって運用費を賄うビジネスモデルを導入していたため、一貫して通行料は無料でした。
そんなKK線ですが、首都高速道路の日本橋区間の地下化と、新たな地下ルート「新京橋連絡路」の整備が開始されることにともない、4月5日の20時をもって閉鎖。使われなくなった道路部分は、今後歩行者中心の公共空間として再整備される予定となっています。
今回開催された「Roof Park Fes&Walk」は、歩行者空間に生まれ変わったKK線を先取り体験できるイベント。普段は決して歩くことのない都心の高速道路を自由に闊歩できるという内容に、胸を躍らせながら参加しました。
会場入口は新橋駅から徒歩5分ほど、日本テレビや電通、パナソニックなどの巨大なビルが立ち並ぶ汐留エリアの一角にある「新橋出入口」。これまで車しか入れなかったスロープから歩いて入場し、有楽町駅近くの「新京橋出口」までの約2kmを歩きます。
「自動車専用道路」と書かれた標識がまだ残るスロープ部分。もう車が来ることはないとわかっていても、なんだかドキドキとします。
|
|
標識の脇には、ガードレールで隠された「歩行者立ち入り禁止」の看板が。「はいっちゃだめ!」と、つい数日前まで強く呼びかけていた看板がひっそりと隠されている様子に、なんともいえない感情が沸き起こります。
スロープを上がると、目の前には一直線に伸びる道路。その広さに驚きます。これも車で通っていたときにはわからなかったことですね。
脇道も見放題。車では一瞬通り過ぎるだけだったところもじっくりと眺めることができます。
200mほど歩いたところで本入場ゲートを通過。参加証のリストバンドをつけ、2kmの高速道路散歩が始まります。
|
|
すぐに見えてきたのが、新橋駅に程近い「土橋(どばし)入口」です。大きく銀座方面にカーブした先にはJRとの併走区間があり、東京駅を発車したばかりの新幹線を間近で見放題! 参加者の多くがスマホを片手に夢中で眺めていました。
左右に広がる新橋、日比谷の景色。最初こそ「2km、長いな……」と思っていたのですが、いざ歩くと気になるところだらけでなかなか前に進みません。
何より印象的だったのは、空の広さ。元は高速道路とあって、上を遮るものが何もありません。ビルが森のように立ち並ぶ銀座エリアの中で、こんなに空の広い場所があったなんて……。これも歩行者空間になったことで初めて見られた景色ですね。
道すがらには、自分が歩いている地点の下に位置するテナントビル群の紹介パネルも。「商店街」と称された高架下ビルは実に14にも及ぶそうです。その一つ一つにストーリーがあって、思わず見入ってしまいました。
あちこち道草しながら高速道路を歩き始めて30分、銀座エリアではさまざまなテントが立ち並び、展示や体験会を開催していました。
なかでも興味深かったのが、KK線の歴史を振り返るパネル展。もともと銀座地区を取り囲むかたちで流れていた3つの川(外濠川、汐留川、京橋川)を埋め立てて高架を建設していくビフォー・アフターの風景が写真付きで紹介されていました。
写真で見るKK線工事前の東京は、都心とは思えないほどにのどかな風景。ここに高速道路が通り、“都市”が形作られていったのだと思うと、なんとも感慨深い気分になりました。KK線は、近代の東京の発展史とともにあったのですね。
展示コーナーでは、KK線廃止後に作られる首都高速道路の新地下ルートの説明が。日本橋の区間が地下化されることによって、2040年には日本橋を覆っている高架がなくなり、昔の川面が姿を取り戻すといいます。いったいどんな眺めになるんでしょう。楽しみですね!
展示テントを出て数寄屋橋交差点付近にさしかかると、大きなフェス空間が。物産品を販売するマルシェや東京の地元食材を使ったキッチンカー、そしてステージが立ち並び、大きな公園のようになっていました。
キッチンカーで、奥多摩産のわさびを使った「わさび丼」をいただきました。
サービスエリアではない「高速道路の路上」でのんびりご飯を食べるなんて、なんだか不思議な体験。
ステージにはスタンド席も設けられ、さまざまなパフォーマンスを楽しむことができました。幼少期に訪れたデパートの屋上を思い出させて、はからずもノスタルジーを覚えてしまいました。
フェス空間の一角には枕メーカーのスペースがあり、高速道路に寝っ転がってお昼寝することができました。
人生初、道路に堂々と横たわって見上げる銀座の空は、思っていたより高くて開放的。これからこうして見たことなかった景色をたくさん楽しめるようになるかと思うと、ワクワクしますね。
スタート時は長く感じた2kmの道のりも、気づけば残りわずか。ほんの数日前まで稼働していた西銀座ジャンクションの料金所も、そのまま稼働状態で残されていました。
近寄って眺めてみると、その大きさにびっくり。普段は一瞬で通り過ぎる料金所をこんなにまじまじと見ることができるのも、貴重な体験でした。
次はいつ訪れることができるのか…… 名残惜しい気持ちを抱えながら、最後は新京橋出口から退出。2時間の高速道路散歩は、生まれ変わる都心の新たな姿を想像させてくれる、ワクワクに満ちたひとときでした。
約60年にわたり、たくさんの車が行き交ってきた東京高速道路(KK線)。今後、歩行者中心の空間に生まれ変わったあとも、たくさんの歴史と思い出が積み重なっていくのでしょう。歴史の節目に立ち会っている感慨を覚えつつ、生まれ変わった未来の東京に期待が高まります。
(天谷窓大)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025042404.html
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 おたくま経済新聞 All rights reserved. | C.S.T.ENTERTAINMENT Inc. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。