アルゼンチンでもSUV新時代が始動『カローラクロス』が予選を制し1-2で初勝利/TC2000開幕戦

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2025年05月10日 07:20  AUTOSPORT web

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今季2025年よりSUVをベースとした新型車両が導入されるアルゼンチン最高峰のFFツーリングカー選手権、TC2000の2025年シーズンが同国ミシオネス州に位置するアウトドローモ・シウダード・デ・オベラで開幕のときを迎えた
 隣国のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”と同様、今季2025年よりSUVをベースとした新型車両が導入されるアルゼンチン最高峰のFFツーリングカー選手権、TC2000の2025年シーズンが同国ミシオネス州に位置するアウトドローモ・シウダード・デ・オベラで開幕のときを迎えた。

 旧規定のセダンが4台、新型SUVツーリングカーが11台の計15台による勝負は、予選で最速タイムを記録した盟主トヨタ・ガズー・レーシングYPFインフィニアの『トヨタ・カローラクロス』が席巻する展開となり、シリーズ5冠の“大エース”ことマティアス・ロッシがSUV時代最初のポールポジションを獲得することに。

 決勝では新フォーマット採用の優位を最大限に活用した19歳の僚友エミリアーノ・スタン(トヨタ・カローラクロス)がシリーズ初優勝、かつSUV時代最初のウイナーに輝き、2位まで浮上したロッシとワン・ツー・フィニッシュを達成するなど、トヨタ陣営が新世紀の主導権を奪っている。

 昨季中盤よりシリーズが主導した先行開発車両が導入され、このオフ期間はフォルクスワーゲン、シボレー、トヨタ、そしてホンダの各陣営が新型SUVの製造を進めるなか、先月4月下旬には首都ブエノスアイレスのアウトドローモ・オスカー・ファン・ガルベスにて、開幕前最後の公式テストセッションが実施されていた。

 その先行開発車両“プロトタイプ001”として登場し、改めて参戦を表明した小型クーペSUV『フォルクスワーゲン・ニーヴァスSUV』や、シボレー陣営のYPFエライオン・オーロ・プロ・レーシングが走らせる新型『シボレー・トラッカー』、さらに新生ホンダYPFレーシングが投入を決めた『ホンダZR-V』など、5月2〜4日のオベラには注目車種が集った。

 当然、セダンからSUVへのベースモデル変更により空気力学的構成が刷新され、その心臓部にはフォルクスワーゲン(VW)グループ製のブロックを基にした2.5リッター直列5気筒の直噴ターボエンジンを搭載。公称の最高出力で500PS以上のアウトプットを誇る一方、混走する旧規定のセダンはフランスのオレカ製ユニットである2.0リッターの直列4気筒直噴ターボを継続し、最高出力380PSとなる“格差”を性能調整で穴埋めする方針が採用された。

 その施策は週末最初のシェイクダウンから機能し、栄えある最初の公式セッション最速を記録したフランコ・ヴィヴィアン(シボレー・トラッカー)に続き、今季中にATレーシングが投入を予定する『フィアット・パルス』までの繋ぎとして、セダン型のクロノスTC2000に乗るマルセロ・チャロッキが割って入る展開に。

 そしてFP1、FP2、さらに従来の計時予選方式となるタイムアタックセッションでもロッシのトヨタ・カローラクロスが最速を射止め、チャロッキやヴィヴィアン、そしてホンダ陣営への電撃移籍を決めた王者リオネル・ペーニャ(ホンダZR-V)が入れ替わりでトップ3を占める結果となった。

「今日はすべてのセッションでフルスロットルで走り、着実に前進した。今朝の時点ですでに速さを確保しており、そのレベルで1日を終えることができたね。明日は予選と決勝が同時に開催される、もっとも重要な日になるだろう」と、この土曜の最終セッション結果からリバースの出走順により、シングルカーアタック方式が採用される日曜午前の最終予選に目を向けたロッシ。

 一方、この土曜最終セッションで2番手に着けたペーニャも「非常に新しい、異なるモデルでありながら、その互換性と接近した競争力は信じられないほどだった」と初めてのSUV公式アタック合戦を振り返った。

「今はトラックに出るたびに学んでいる。セグメントが変わっているし、これはドライバーとしての僕のキャリアのなかでもっとも大きな変化だよ」

 同じく3番手に入ったファクンド・アルドリゲッティ(シボレー・トラッカー)も、FP2での走行を妨げた油圧の問題を修正し、首位ロッシに0.42秒差まで迫る復調ぶりを示す。

「予選には進めないと思っていた。最初の練習セッションの半分と2回目の練習セッションのすべてを欠席したのだからね。トップ3に入ることができたのは本当に良かったし、奇跡のようだよ」と安堵のアルドリゲッティ。

 さらに2列目4番手にフィアットのチャロッキが続き、これでセダン混走のなか異なる4つのマニュファクチャラーがトップ4グリッドを占めることに。

 開けた日曜午前はそのシングルカー・クオリファイが実施され、エンジントラブルにより土曜予選に出走できなかった御年67歳の大ベテラン、シリーズ復帰のエルネスト・ベッソーネ(VWニーヴァス)からトラックインしていく。

 ハルコン・モータースポーツ製の開発車両発展型をドライブした1996年のチャンピオンに対し、同じく土曜の予選で良いペースを確立するのに苦労したトヨタのスタンがすぐさまタイムを更新し、1分13秒071で一時的にセッションのトップに立つ。このターゲットタイムに対し、シボレー陣営ヴィヴィアンと、その僚友である“伏兵”ウリセス・カンピレイ(シボレー・クルーズ)がすぐに記録を上塗りし、セダンの好パフォーマンスでサーキットを驚かせる。

 そして前日予選上位3名を残した段階で、アルドリゲッティのシボレー・トラッカーがギアボックスのトラブルにより欠場となり、残るペーニャのホンダvsロッシのトヨタが一騎打ちの構図となる。

 ここで先にトラックインしたペーニャは、カンピレイの後ろで暫定2番手タイムが精一杯となり、圧倒的な強さを見せたロッシが最終出走による路面の向上にも助けられ1分11秒854というタイムを叩き出し、TC2000の歴史に於いてSUV初のポールポジションを獲得した。

 そのまま35分+1周で争われた唯一の決勝では、スターティンググリッドで予選上位6台の順位が逆転し、午前のセッションで6位だったトヨタのスタンが最前列からスタートすることに。

 シグナルグリーンで背後のフィアット製セダンを抑えたリバースポールシッターに続き、ここで3列目6番手から出たロッシがカンピレイの背後までジャンプアップ。中盤にはトヨタ系サテライトで車両製造も担当したベンジャミン・ハイツ(トヨタ・カローラクロス)のコルシ・スポーツ製モデルが車両火災に見舞われ、ここでセーフティカー(SC)が導入される。

 チェッカーフラッグまで残り12分弱でレースが再開されると、リードを広げた首位スタンの背後でロッシが仕掛け、旧規定セダンモデルの攻略に成功。そのまま若きチームメイトを追走してトヨタがワン・ツー・フィニッシュを果たした。

「2台のマシンが好調な状態でレースに臨むことは、チームを祝福するに値するね」と6番手発進からカローラクロスの優位性を見せつけたロッシ。

「このチームはいつもと同じで、これまで戦い、優勝してきたチームなんだ。この最初の週末で僕らは非常に良い道筋を見つけたようだが、それが決定的なものではないことは分かっている。レギュレーション変更はつねに進化を意味している。我々は素晴らしいマシンを持っているが、進化し続けることを考えたい。休むことなく、改善することに集中する必要があると思っている」

 さらにトップ6リバースにより、若手にレース運びを任せることができた点も、チームの戦績にプラスに働いたと分析する。

「いつもと変わらない情熱と競争心を感じている。19歳にして非常に速いエミリアーノ(・スタン)のような若手選手が台頭してきたことで、僕はつねに前を向いていられるようになった。僕はこれまでもクリスチャン・レデスマやジュリアン・サンテロ、エステバン・グエリエリなど素晴らしいチームメイトに恵まれてきた。そして自分を奮い立たせ、追い込んでくれるチームメイトがいるのは本当にありがたいことさ」

 これで週末最多得点を記録したロッシが首位発進を決めた新生TC2000シリーズ。続く第2戦は5月23〜25日に公式テストも開催されたブエノスアイレスのアウトドローモ・オスカー・ファン・ガルベスにて争われる。

[オートスポーツweb 2025年05月10日]

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