
GWも終わり、忙しい日々が戻りつつある今日このごろ。しっかり休んだはずなのに、疲れを感じている人もいるだろう。もしかしたら、連休で誤った休み方をしてしまい“五月病”に陥る原因をつくっているもしれない。
「4月、5月は環境の変化が大きく、心身共に疲れがたまりやすい時期。疲れたまま、GW明けも仕事や家事を頑張ってしまうと、6〜7月ごろにうつ症状や気分の落ち込み、肩こりや頭痛などのさまざまな不調が現れます。
それらは一般的に“五月病”と呼ばれ、医療機関を受診した結果『適応障害』と診断されるケースもあります」
そう話すのは、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介先生。益田先生によると五月病に悩みやすい人には、共通する特徴があるそう。
誤った休み方は五月病を悪化させる!?
「まずは環境の変化をストレスに感じる人。また、普段から不眠ぎみであったり、生活習慣が乱れがちな人。さらに片頭痛や腰痛など身体に慢性的な持病がある人も、それだけで気分が沈みますから、この時期はメンタルにも響きやすい。
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更年期もホルモンバランスの乱れで心身共に負担がかかりやすいので注意が必要。そのほか、完璧主義や思考がグルグルと頭の中を巡ってしまう性格の人もストレスをうまく逃がせず、五月病に陥りやすいですね」
家族や仕事に問題を抱えている場合も要注意だ。心身の負担が重なりすぎると、うつ病などの精神疾患を発症するリスクが高まるそう。
今すぐに疲れを解消したいところだが、そもそも“休み方”を間違えているケースも少なくない。
「女性に多いのが、休日はあまり食事をとらずに過ごす人。クリニックにも『ダイエット中で食事制限をしているのですが、すごく疲れやすくて……』と相談に来る方がいますが、貧血状態になっている人がほとんどです。貧血は疲労感を招くので、きちんとバランスの良い食事をとれば回復する可能性があります」
ゆっくり寝てダラダラと過ごし、身体を休ませることは構わないが、しっかりエネルギーをチャージしないと身体が燃焼しにくく、さらに疲れやすくなってしまうという。
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そのほか、休日に羽目を外してアルコールを飲みすぎるのもNG、と益田先生。
「近年、アルコールは睡眠の質を下げたり、がんのリスクを高めたりするという報告が増えています。お酒のリスクをしっかり認識して適切に飲みましょう」
思考を変えるだけでも疲労回復になる
4月、5月の疲労をためにためて爆発寸前。そんな人も、早めの対処で深刻な事態を回避できるという。
「まずは日頃からの意識を少し変えてみるだけでも効果的。自分を責めがちな人や、白黒はっきりつけたいタイプなど、性格的に疲れを感じやすい人も“完璧にはできなかったけど、今日は疲れたから休もう”と、自分を受け入れてあげるといいですね。
“今、自分は疲れているんだ”ということを認めて、ストレスをうまく手放すことに意識を向けましょう」
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“益田流理想の休み方”は、休日だけでなく平日も休息を取り入れるのがポイント。
「アドレナリンが出ている平日は疲れを感じにくいのですが、実際には当然疲弊しているので、毎日ちょっとずつ疲れを解消しておくのがベスト。もっとも手軽な休み方は、マインドフルネスとも呼ばれる“座禅”の実践です」
座ったまま目を閉じて、5分、呼吸に集中するだけでOK。座禅中に雑念が生じたら、すぐに意識を呼吸に戻すことを心がけて。
「“呼吸に意識を向ける”ということがポイントで、頭の中をからっぽに何も考えない時間を持つだけで、不思議と心身がスッキリします」
休日にはこの座禅が30分程度できると理想的。心が乱れて5分と座禅が続かない、という人はすでに心身が疲弊している状態。自身の状態を知るバロメーターにしてみよう。
「ウォーキングなどの軽い運動は“疲労回復ホルモン”の分泌を助けてくれます。歩きすぎると逆に疲れてしまうので、1万歩を目安にしてみては。食事は病院食をイメージしたバランスの良い献立がおすすめ。
休日も1日に必要なカロリーを意識して食事をとってみてください。こうした適度な運動とバランスの良い食事は睡眠の質を高めて疲労を回復してくれます」
これらの対策を行っても疲労感が薄れず、体調が優れない場合は、ほかの疾患が隠れているか、心身が限界を迎えているサインと捉えて。
ただ、きちんと休養を取っても、それを実感することは実は難しい、と益田先生。
「そこで役に立つのが日記や記録です。疲労回復のために取り組んだこと、気分や体調を文章で書き残しておくと、あとで読み返したときに“あのころに比べれば元気なので休んだ効果が出ている”と実感が湧きます。ぜひトライしてみてください」
超最新!AIがメンタルを支える時代に!?
益田先生いわく、近年、普及しているAI(人工知能)をメンタルケアに活用するのがトレンドになっているそう。
「ChatGPTなどの対話型AIに、日々の予定の整理をしてもらう人が増えていますが、その使用法の延長で日頃の悩みや愚痴をAIに聞いてもらうのが主な使い方です。AIは、話し手の味方になってくれるうえ、人間相手に愚痴を言うよりもトラブルになりにくいので、手軽なストレス発散方法としてもおすすめですよ」
さらに、AI相手に話をすることで、人へも悩みの相談がしやすくなるといったメリットも。「将来精神科医が要らなくなるんじゃないかなんて言われています(笑)」と益田先生が話すほど有効な手段。デジタルに疎くても、ぜひ試してみよう。
教えてくれたのは……早稲田メンタルクリニック院長・益田裕介先生●防衛医大卒業後、防衛医大病院、埼玉県立精神神経医療センターなどを経て独立。2019年からYouTubeに「精神科医がこころの病気を解説するCh」を開設し、メディアでも活躍。著書に『精神科医がやっている聞き方・話し方』(フォレスト出版)がある。
取材・文/大貫未来(清談社)