ビーチバレー界期待の新星「のあめい」がトップツアーで奮闘 「世界」を見据える若きふたりの可能性

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2025年05月14日 18:10  webスポルティーバ

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 国内ビーチバレーのトップツアー『ジャパンビーチバレーボールツアー2025 第2戦グランドスラム グランフロント大阪大会』(5月9日〜11日)が、グランフロント大阪うめきた広場特設コート(大阪市北区)で行なわれた。

 同週末にはAVC(アジアバレーボール連盟)ビーチツアーが中国で開催されており、国内トップチームの多くはそちらに参戦。グランフロント大阪大会のフィールド全体のレベルはやや低くなってしまったものの、注目ペア「のあめい」が出場し、大器の片鱗を示した。

「のあめい」とは、宇都木乃愛(うつぎ・のあ/18歳。産業能率大)と森愛唯(もり・めい/19歳。トヨタ自動車)のペア。ともに共栄学園高(東京)を卒業したばかりの期待の新星だ。

 ふたりは、昨年の全日本ビーチバレーボール高校女子選手権(マドンナカップ)で優勝。高校ビーチ界の頂点に立った逸材ペアである。インドアでも、今年1月に行なわれた全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)で共栄学園高のメンバーとして優勝。宇都木は優秀選手賞(ベスト6)にも選ばれている。

 マドンナカップと春高バレー。高校のビーチとインドア双方のビッグタイルを獲得したペアが、ビーチバレーの舞台に登場するのは、20年ぶり。同ペアはすでに年代別日本代表にも選ばれており、昨年のFIVB(国際バレーボール連盟)ビーチバレーボールU19世界選手権に出場。日本代表として、過去最高の9位という成績を残している。

 そうした実績を引っ提げて出場した今回の国内トップツアー。若きペアの動向は大きな注目を集めた。

 大会1日目、雨のなかで始まった予選の試合は、藤井桜子(34歳)&オト恵美里(24歳)ペアと対戦。藤井は気迫のこもったプレーをする経験豊かな選手で、彼女もまた、かつてのマドンナカップ覇者である。オトは恵まれた体格から繰り出すパワーあふれる強打が武器で、年代別日本代表に選ばれた経験を持つ。

 そのふたりが強打を中心に仕掛けてくる攻撃に対して、宇都木&森ペアは第1セット序盤から劣勢を強いられていた。だが、ふたりは高校を卒業したばかりとは思えないほど、落ちついた試合運びを披露。敵のプレーを冷静に見極め、「相手のトスがネットから離れるので、(森)愛唯だけのブロックではなく、自分も跳んで相手と駆け引きしたほうがいい」(宇都木)と判断すると、高さのある森がネットについて跳ぶブロッカー、宇都木が後ろに構えるディフェンダーを務める本来の「ワンブロック」システムを、ふたりがブロッカーとディフェンダーを交互に行なう「ツーブロック」に変更して対応した。

 そうして、次第に挽回して同点に追いつくと、レシーブしたボールをそのまま打つ森の「ツーアタック」や、ツーアタックと見せかけて相手ブロッカーを引きつけ、トスを上げる「ジャンプセット」など、難度の高いプレーも繰り出して逆転。終盤に入ってから再び相手にリードを奪われてしまうが、最後まで落ちついて対応し、宇都木&森ペアが粘り勝ち。26−24で第1セットを奪取した。

 これで勢いに乗ったルーキーペアは、森のサーブで押し込んで相手のミスを誘う。藤井&オトペアも宇都木にボールを集めて反撃の機会をうかがうが、宇都木&森ペアはそれにも動じず、強打を打ち込んで対抗。終始主導権を握って21−18で第2セットも奪い、セットカウント2−0で勝利を飾った。

 大会2日目は、本戦1回戦。対戦相手は、中川知香(29歳)&坂本実優(33歳)ペアだった。高さや力強いショットこそないが、早いテンポで攻撃を仕掛け、ボールを前後左右に落としてくる技巧派のチームだ。

 前日の雨も止んで天候は回復していたが、コート上は風速3〜5m/sの風が吹いていた。大阪駅前の高層ビル群に囲まれた特設コートは、時折強い風も吹き抜ける。宇都木&森ペアにとっては、風への順応力も試される試合となった。

 試合は第1セットから、ゲーム巧者の中川&坂本ペアがリード。宇都木&森ペアは防戦一方となっていた。中川の風を生かしたサーブに翻弄され、素早いショットで前後に動かされてリズムを失った。

「(序盤から)バタバタしてしまった。(相手は)前後の攻撃が多いのはわかってはいたけど、攻守の切り替えを素早くできなかった」と森。攻撃の軸となるサーブも、風に合わせて効果的に打つことができず、若きペアは反撃の糸口さえ見つけられなかった。結果、第1セットは16−21で落とした。

 第2セットに入っても、宇都木&森ペアは状況を変えることができなかった。攻守において相手に動きを読まれて、「攻撃が単調になってしまった」と宇都木。大きな点差をつけられることはなかったものの、常にリードを許して18−21。第2セットも落として、セットカウント0−2で敗退した。

 試合後、若いふたりは次のように敗因を挙げた。「風のなかのサーブでミスが多くなってしまい、もったいなかった」と森。宇都木は「ディフェンスの駆け引きも、相手のほうがうまくてハマらなかった」と言って唇をかんだ。風への順応、タイムアウトを取るタイミングなど、経験の差が出ての結果であることは間違いない。

 ともあれ、期待の新星ペアは大会を通してツーアタックやジャンプセットなどをトライし続け、さらには強打で勝負しようとする姿勢を崩すことはなかった。思いきりのよさや、プレーの想像力、ゲームの組み立てを考える力など、持っている潜在能力の高さを存分に示して見せた。

 そんな彼女たちの視線は、すでに次へ向いていた。ふたりのターゲットである"世界"だ。出場が決まっている6月の『AVCアジアU21ビーチバレーボール選手権(タイ)』を経て、9月に開催が予定されている『2025FIVBビーチバレーボールU21世界選手権』への出場と、同大会での上位進出を目指している。

 高校の3年間、ビーチとインドアの二刀流を続け、双方で頂点に立った「のあめい」。彼女たちがこれからの戦いの舞台にビーチを選んだことは、大いに注目すべき点である。春高バレーの優秀選手6人のうちのひとりに選ばれた宇都木は「インドアに未練はない」とキッパリと言う。

「春高の優勝で、私を通じてビーチのことを多くの人に知ってもらえましたし、私がこれから活躍することで、もっとビーチのよさが高校生にも伝わると思っています。この前も『私もビーチを始めました』と連絡をくれた女子高生の子もいました」(宇都木)

 ビーチとインドアをつなぐジョイントとなり、世界へ羽ばたこうとしている「のあめい」。そのファーストステップとなる今シーズンのプレーから目が離せない。

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