写真 風薫る季節に、子どもたちの笑顔がまぶしく映えていた。「さいたま市民の日」である5月1日(木)、浦和レッズが市民の日の特別企画として「浦和レッズ選手バス体験イベント」を開催。さいたま市の小学生を対象に、三菱重工浦和レッズレディースのチームバスで浦和駒場スタジアムへ行き、選手と同じ導線でピッチに入場し、最後はゲームで締めくくるというスペシャルな体験イベントが行われた。この企画は、試合日の選手と同じアクティビティを地域の小学生に体験してもらうことで特別な一日を演出するとともに、これまでサッカーや浦和レッズに馴染みのなかった子どもたちにも、サッカーやスポーツの楽しさを知ってもらうことを目的として開催されたものだ。
浦和レッズはサッカーをはじめとするスポーツの感動や喜びを伝え、スポーツが日常にある文化を育み、次世代に向けて豊かな地域・社会を創っていくという理念を持っている。選手バス体験イベントなどの活動は、その理念に基づくもの。ボールを蹴るという枠にとどまらず、別の側面からサッカーの楽しさを体験してもらうこともまた、スポーツが日常にある文化を創っていくことにつながるものであり、昨年11月14日の「埼玉県民の日」には埼玉県内の小学生を対象に、浦和レッズトップチームの選手バスに乗って埼玉スタジアムへ行くという体験イベントを開催している。
選手が試合の日に使うバスと同じものに乗り、選手が見るのと同じ光景を車窓から見ながらスタジアムへ移動するという体験は、通常ならあり得ないこと。浦和レッズが地域の未来を担う子どもたちを心から大切にしているからこそ実現した企画と言える。
そして、今回の「さいたま市民の日」に行われたのは、選手バスへの乗車や試合日の選手アクティビティ体験に加えてレッズレディースの柴田華絵選手と栗島朱里選手も一緒に体を動かすという、さらにスペシャルなイベントだった。当日はおよそ5倍の倍率から抽選を経て選ばれた23人がさいたま市役所に集合し、真っ赤なチームバスに乗り込むところからスペシャルな体験がスタート。浦和駒場スタジアムに向かう行きの車内で柴田選手と栗島選手によるビデオが流されると、子どもたちの目がビデオに釘付けになった。
2人はいつも座っている席がどこなのかについて細かく説明。柴田選手は「一番後ろの右側」に座っていると言い、「年上の選手が後ろの座席になることが多いんですよ」と丁寧に付け加えた。栗島選手の定位置は「ここ2年くらいは後ろから2番目の列の左側」とのこと。「後ろは池田咲紀子選手、前は高橋はな選手、私と同じ列の一番右側には伊藤美紀選手が座っています」と具体的な選手名が次々に出てくると、子どもたちの表情がキラキラしていった。2人とも子どもたちをできる限り喜ばせようと気配りをしながら語っている。
柴田選手が「皆さん、レッズレディースのバスはどうですか? バスの席に座ったら、席を倒してみたり、足のところのマットを上げてみたり、いろんなことをやって楽しんでください」と語りかけると、栗島選手も「私たちがいつも試合に入っていく流れをみんなに体験してもらって、私たちと一緒に楽しみましょう」とニッコリ。子どもたちにも笑顔が広がる中、一行は10分余りで浦和駒場スタジアムに到着した。
スタジアムではビデオに登場した柴田選手、栗島選手が入り口で待ち受けており、子どもたちのテンションはさらに上がった。選手がハイタッチで出迎えたあとは、選手と同じ導線でスタジアム内に入場し、まずはマッサージルームやロッカールームを見学。ロッカールームでは試合日さながらに選手のユニフォームが掛けられており、子どもたちは興味津々だ。
ここからは栗島選手と柴田選手に柳田美幸強化担当も加わり、普段は聞くことのできない貴重な情報を子どもたちにレクチャーしていく。
「試合前にロッカーで流す音楽をセレクトしているのは石川璃音選手です」
「柴田選手と栗島選手のロッカーの場所はずっと同じです」
「試合前に食べるのはバナナがオススメです」
目の前の選手たちから直接聞いているからだろう、子どもたちの目がさらに輝いていく。
その後はいよいよ試合の疑似体験だ。運動着に着替えた子どもたちは緊張の面持ちで選手入場時の待機エリアに集合。レッズレディースの試合でいつも流れている入場曲『Infected』が流れると、うれしそうに、そして足取りも軽やかにピッチに入場した。ピッチではレッズレディースの選手が普段の試合前にピッチで行っているメニューと同じウォーミングアップを体験した。公式戦と同じフルサイズのピッチでゲームも行った。
試合後は柴田選手と栗島選手への“取材体験”も行われた。試合でも使っている会見室での、こちらもスペシャルな体験。子どもたちからは「サッカーを始めたきっかけ」や「子どもの頃の夢」「一番印象に残っている試合」など、次から次へと質問が出る楽しい時間となった。
そして、バス体験の締めくくりは往路と別バージョンのビデオ。柴田選手が「選手はこんなふうにやっているんだなと思いながら、試合の応援に来てください」と優しく語りかけると、栗島選手は「私たちもみんなと一緒に今日のような体験ができて楽しかったです。また浦和駒場スタジアムに試合を見に来てください」とこちらも笑顔で子どもたちに語りかけていた。
イベント後、柴田選手と栗島選手に感想を尋ねた。
柴田選手は笑顔を浮かべてこう語った。「選手と同じ流れを体験しているときの子どもたちの反応がとても良く、みんながキラキラした目で来てくれて、いろいろなことに興味を持って楽しそうにやってくれたのがすごくうれしかったです。今日は実際にピッチに立ってサッカーをしてもらったので、次に試合をスタンドから見るときは『あんなに走ってすごいな』と思ってくれるんじゃないかな」
栗島選手は「今日は近い距離で子どもたちと話をすることができたので、直接会った選手が試合のピッチで頑張っている姿を見ると刺激を受けてくれるのではないかと思いました」とコメント。さらに、「浦和レッズのユニフォームを着てくれている子が何人もいて、やはり浦和レッズやレッズレディースは子どもたちの夢なんだとあらためて思いました。浦和レッズを背負っている責任と誇りを持って、子どもたちに夢を与えられるよう頑張ります」と力強く言った。
柴田選手は「サッカーをしたことがあるかないかは別として、その場を楽しんでくれている様子は、やはりすごく子どもらしく、素敵だなと感じました」とも語っていた。その言葉が表すように、スポーツが身近にある日常は子どもたちを健全に育んでいく道筋となっていくはずだ。
浦和レッズが常に大切にしている次世代を担う地域の子どもたち。「さいたま市民の日」のスペシャルイベントには、子どもたちがサッカーやスポーツの楽しさを感じながら健やかに成長していけるよう、そして、スポーツが日常にある豊かな地域・社会になっていくよう、さまざまな角度から貢献していこうという浦和レッズの姿勢が示されていた。
文=矢内 由美子