航空自衛隊のT4練習機が愛知県犬山市のため池、入鹿(いるか)池に墜落した事故で、空自は15日、空港管制官に異変を伝える交信や緊急事態の宣言が確認されていないと明らかにした。航跡などから、高度約1400メートルまで順調に上昇した後、右旋回中に急降下したことも判明し、突発的にトラブルが起きた可能性がある。
空自によると、機体の識別情報やレーダー情報などを分析し、航跡を調べた結果、墜落機は14日午後3時6分ごろ、愛知県営名古屋空港から北に向けて離陸し、1分ほどで高度約1400メートルまで上昇。東から南に旋回しながら高度5000メートルまで上昇する予定だったが急降下した。離陸直後に中部国際空港の管制官と交信した際、機体の異常などの異変を伝えるやり取りはなかったが、午後3時8分ごろレーダーから機影が消失。脱出装置を使うと自動的に発信される救難信号も確認されていないという。
墜落機は1989年に製造され、フライトレコーダー(飛行記録装置)は搭載していない。空自の事故調査委員会による調査は難航も予想される。
墜落原因について空自トップの内倉浩昭航空幕僚長は15日の定例記者会見で「予断を持って申し上げることはできない」と述べるにとどめた。また、飛行中にトラブルが起きた場合には被害を最小限に抑えるため人口密集地ではない場所を目標とすることもあり、墜落機が入鹿池を目標としていたかどうかを「確認したい」と言及した。
空自によると、安否不明の搭乗員は、新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)の第5航空団第305飛行隊所属の井岡拓路1等空尉(31)と網谷奨太2等空尉(29)。T4は2人乗りで網谷2尉がT4の前席、井岡1尉が後席に搭乗していた。2人ともT4の操縦資格を有し、機体は前席、後席ともに操縦可能なため、どちらが操縦していたかは不明という。
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2人は14日午前、井岡1尉がF15戦闘機、網谷2尉がT4をそれぞれ操縦して新田原基地を出発。名古屋空港に到着後、F15を定期修理のため企業に預け、2人でT4に乗り新田原基地に帰還途中、名古屋空港から北東に約13キロの入鹿池に墜落した。【松浦吉剛、椋田佳代】
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