世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)ある視点部門に出品された日英合作映画「遠い山なみの光」(石川慶監督、今夏公開)が15日、同映画祭の劇場、ドビュッシーで公式上映された。
吉田羊が、カンヌ映画祭に初参加した。公式上映の感想を聞かれ「皆さまの感動が伝わってきました。皆さんの反応が気になって、お客さまの反応を一緒にこう目の端にとらえながら見ていたのですが、本当に皆さまぐっと物語の世界に入ってくださって、それをスタンディングオベーションという形で示してくださって本当に感謝だなと思いましたし、この映画に携わった全てのスタッフ・キャストの思いが報われた瞬間だなと感じました」と感激した。
初参加のカンヌ映画祭については「本当に街のいたるところに映画館があって、そこで入場を待つ人々の行列があって、皆さん一様に高揚した雰囲気で映画の開場を今か今かと待っている様が、街全体が映画愛にあふれて、街をちょっと歩いただけでも世界中の映画ファンが集まっている場所だと実感しました」と新鮮な感動を口にした。
「実は私、2020年の1月、コロナの直前に旅番組の取材でカンヌに来ていて」と言い、カンヌの街自体は訪れたことがあったと明かした。
「その時に4代でカメラマンをやっている有名なジルさんという方に連れてきていただいて『ここがレッドカーペットだよ、歩いてみな』と言われたんですけど『本番に取っておきます』と歩かなかったんです。なので今回、その夢がかなったので本当に感無量です」と、出品作品の出演俳優として、カンヌ映画祭のレッドカーペットを歩けた感慨を口にした。
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「遠い山なみの光」は、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロ氏(70)の、1982年(昭57)の長編デビュー作の映画化作品で、同氏が生まれた50年代の長崎と80年代の英国が舞台。主演の広瀬すず(26)が演じた主人公の悦子は、長崎在住時代に原爆を経験し戦後、英国に渡る。英国に渡って以降の、80年代の悦子は吉田羊が演じた。悦子は、英国人の夫との間に生まれた娘ニキが、大学を中退し作家を目指そうと執筆のために自宅を訪れ、数日を共にする中で、最近よく見る長崎で暮らしていた頃に知り合った謎多き女性・佐知子と幼い娘の夢について語り始める。
囲み取材では、広瀬と吉田に2人1役を演じたことについて質問が出た。
まず、広瀬が「私は、ある意味すごく素直に台本に沿って演じた感覚でした。先に私たち長崎パートの撮影が進んでいて、それが終わってから1カ月後とかにイギリスパートの撮影だったのですが、羊さんが現場に見に来てくださったりして。私は終わってから完成版を見るまでは、どんなシーンになっているのかという情報がむしろゼロだったので映画を見て不思議な感覚になりました」と振り返った。
吉田は、英国パートの撮影に主に参加。撮影直前に単身、渡英して短期留学し、現地でのホームステイで磨きをかけた流ちょうな英語を駆使し、劇中ではほぼ全編、英語での演技に初挑戦した。
「すずさんがおっしゃったみたいに、長崎の撮影をしてる時に、何かすずちゃんのお芝居からヒントをもらえないか、何か共通するクセみたいなものを盗めないか、という、邪な気持ちで見学に行ったんです。その後、長崎で撮った映像もイギリスに行った時にずっと追って見させていただいていたんですね」と広瀬の芝居を参考にしたと説明。
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「でもやっぱり全部、断片的なので、それがどう繫がるかわからない状態で、結局自分はイギリスで今目の前にいるニキとお芝居をすることでしか悦子はつくれないということに気づいて。とにかく現場でもニキとのお仕事に集中して作らせていただいて」と、ニキを演じたカミラ・アイコとの芝居に注力したと続けた。
完成した作品については「完成したものを見たら、長崎編の皆さんがすごく生き生きとして生命力にあふれていて、そして希望があって」と評した。
さらに「その中で特に、やっぱりすずさんが演じる悦子が、先進的で多彩で。やっぱりこの時代にバイオリンが弾けて英語がしゃべれる、そしてイギリス人ジャーナリストについて、イギリスに行ってしまうっていう感覚って、すごく最先端ですよね。その彼女の自分の人生に対して前向きな姿勢ですとか、精神性みたいなものが本当に場面からあふれていて。で、クライマックスで佐知子と悦子が2人で、女性は変わらなくちゃいけない、と言うシーンで、今日も涙が出てしまって」と続けた。
「本当にこの悦子の姿に私も励まされましたし、この映画を見ると、自分らしく生きたいと思う女性たちが多く励まされていくんだろうなという風に思いました」と絶賛した。
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