大阪・関西万博は、チケット購入や入場から施設予約、キャッシュレス決済、SNS撮影まで、事実上スマートフォンの使いこなしが必須のイベントだ。今後の連休や夏〜秋シーズンで観光しに行く予定の人もいるだろう。
そこで気になるのが、万博会場の5G通信環境や、万博会場で困らないスマホの活用方法だろう。この記事ではスマホを切り口とした、万博へ向かうさいに絶対知っておくべき通信環境やモバイルバッテリー、アプリの情報について紹介していく。
●5G基地局だらけの万博、4キャリアの通信品質は?
会場をモバイルネットワークに関心を持っている人が回ると、どのエリアでも茶色い基地局アンテナが目につく。万博の会場は西新宿やランドやシーを合わせた広大な面積だが、会場内に多くの5G/4G基地局を配置することでカバーしている。実際、各社のエリアマップでも万博会場の全域が高速・大容量なSub6帯5Gエリアとなっており、力の入れ方がよく分かる。
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これらの基地局設備は、近年利用が増えつつある基地局シェアリングによる共用設備を用いてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのネットワークを整備することにより実現している。具体的には、Sharing Designが5Gや4Gの共用アンテナや共用の給電線を整備している。
また、混雑対策として最新の5G基地局設備も導入されている。万博の会場内には開催期間中に入れ替わりでイベントやライブを行う施設が複数あり、その中でも最大の屋外イベント会場がEXPO アリーナ「Matsuri」(最大約1万6000人)だ。
KDDIはこのアリーナに向ける形で「Dual Band Massive MIMO Unit(DB-MMU)」を投入した。これは、KDDIが利用できる2つのSub-6周波数帯(3.7GHz帯/4.0GHz帯 100MHz幅×2)を同時かつ、エリア内の通信容量をより増加させるMassive MIMO(MU-MIMOとビームフォーミングによる空間多重)によって周波数利用効率を向上させて大容量通信を提供する技術だ。さらに、近年の5G SA対応スマートフォンなら、2つのSub-6周波数帯を重ねてより高速、または快適な通信を利用できるキャリアアグリゲーションにも対応している。
会場を見た限り、KDDI以外も高度化した基地局を運用しているとみられる。会場でより快適な通信を利用したいなら、比較的新しい5Gスマートフォンを使い、ドコモ、au、UQ mobile、ソフトバンクの契約者なら5G SAの利用設定も行っておきたい。
●通信混雑で話題になった「東ゲート」をスピードテストでチェック
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万博オープン日に報道された通信の混雑の話題も気になるところだろう。オープン初日の東ゲートで9時半から14時半頃にかけて通信しづらい状態が発生した。オープン前から数万人が入り口の東ゲートに並んだことで通信が混雑し、アプリで入場用QRコードを表示しにくくなったことで、入場手続きによる行列の解消をスムーズにできなかった。オープン初日クラスの混雑や、入退場や地下鉄で問題が起きた場合に想定されるトラブルといえる。
参考までに、4月28日に、東ゲートに4000人ほどが滞留した状態で各社のスピードテストを実施した結果を掲載しておく。通常の入場では、5Gスマホなら快適に利用できるとみていいだろう。だが、数万人単位の行列ができると通信が混雑する可能性もある。現在は各社とも基地局車などを配備しているようで、必要に応じて活用されるとみられる。
東ゲートで4000人ほど滞留した状況でのスピードテスト結果
・ahamo(NTTドコモ):下り341Mbps/上り17.5Mbps
・UQ mobile(KDDI):下り483Mbps/上り39.9Mbps
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・Y!mobile(ソフトバンク):下り244Mbps/上り76.1Mbps
・楽天モバイル(楽天モバイル):下り332Mbps/上り21.2Mbps
●大阪・関西万博をモバイル装備で攻略する
続いて、大阪・関西万博へ向かう際に知っておきたい基本情報やアプリ、スマホのモバイルバッテリーに関する情報を紹介していこう。
会場の面積は、関東で例えると西新宿の一帯に相当する。テーマパークで例えるとランドとシーの合計ほど、関西ならUSJの1.5倍ほどとなる。パビリオンなどの数は180以上もあり、開場時間は9時から22時までと長めだが全体を楽しむには数日が必要になる。
大阪・関西万博へ向かう前に知っておきたいこと
・開場は9時から22時まで。安価な夜間券(17時以降)もある
・1日で全体を見て回るのはやや難しい。全体を楽しむには数日必要
・アプリで確認できる、毎日各所で行われているイベントは狙い目
・夏場は本格的な熱中症対策が必要、涼しい休憩所は少ない
もし関東から来て1日だけ来場した場合、全体を歩き回って予約施設を2〜3館ほどと、その他のイベントや展示をいくつか見るのが限界だろう。アトラクション的な楽しさは少ないが、世界各国や日本のイベントや食、技術が凝縮したお祭り感や、旅行好きの人は数日間の来場や通期パスの購入を考えよう。
実際に来場する際は、スマホのモバイルバッテリー、アプリでのチケット購入、施設予約、といった準備が必要になる。また、会場では軽量かつ長距離を歩ける装備が必要だ。これらを確認する、しないで来場後の快適さが大幅に異なる。
万博来場前に、早めに準備すべきこと
・スマホの利用機会が多いので、大容量モバイルバッテリーを必ず持参
・スマホ公式アプリの「EXPO 2025 Visitors」を入れ、チケット購入と施設予約や予約抽選を行う
・会場案内アプリ「EXPO2025 Personal Agent」を入れておく
・2万歩ほど歩くので、ランニングシューズなど歩きやすい靴で来る
・荷物は最小限で。長距離を歩く上に基本預ける場所はない
・夏場は休憩所がない前提で、考えられる限りの熱中症対策を行う
●会場での充電は期待できず、1万mAh以上の大容量モバイルバッテリーは必須
実際に万博へ行くなら、スマホを充電する大容量モバイルバッテリーと充電ケーブルが欠かせない。これから購入するなら、早めに「USB PD対応かつ容量1万mAh以上」のモバイルバッテリーを購入し、すぐに開封してモバイルバッテリーをフル充電しよう。もちろん、「充電ケーブル」も忘れてはいけない。
実際に来場すると、記念撮影やSNS送信、施設入場やキャッシュレス決済、アプリでの案内、待ち時間の暇つぶしとスマホを利用する機会は非常に多い。さらに、夏の日中屋外でスマホを操作するとバッテリー消費がさらに大きくなるので、できれば省電力効果が高いダークモードに変更して利用することをお勧めする。ガジェット好きなら撮影用スマホやデジカメを持っていき、メインスマホを操作する機会を減らすのも手だ。
もし会場内でバッテリー不足になった場合、解決手段はかなり限られている。
まずは、モバイルバッテリーレンタルの「ChargeSPOT」を利用できないかを確認しよう。このサービスでは、充電済みの容量5000mAhのケーブル付きモバイルバッテリーを借りられる。スポットは、会場の東ゲートと西ゲートの横で来場者向けレンタルサービスを提供する「ビジョン」ブースに置かれている。ここでは充電済みモバイルバッテリーの販売も行っており、ChargeSPOTのバッテリー貸し出し数がなくても解決する場合がある。
会場内のコンビニ(ローソン、セブンイレブン、ファミリーマート)だが、街中の店舗と違って今のところChargeSPOTは置かれていない。新品のモバイルバッテリーを購入できる場合もあるが、新品はバッテリー残量が少なめの場合もあるので注意したい。万博のお土産を取り扱う店舗では、モバイルバッテリーに関連したグッズは見られなかった。レンタルサービスの提供や、万博限定モバイルバッテリーのような製品の追加を期待したい。
会場の充電設備を利用することは現実的ではない。電力館と未来の都市館前にはQi対応充電器付きベンチはあるが、ワイヤレス充電なのでかなり低速だ。夏場は熱で充電が進まない恐れもある。パソナ館前や会場西側のベンチOPTree2に充電用USBポートがあるが、ケーブルがないと充電できない。ラウンジ施設のデジタルウォレットパークは、利用に万博独自のポイントと予約が必要になる。
結論としては、万博にモバイルバッテリーと充電ケーブルは必須だ。出発後に忘れたことに気づいたら、途中の駅やコンビニで「ChargeSPOT」や「充レン」をレンタルして持っていこう。新品のモバイルバッテリーを購入してすぐに使う場合は、購入直後のバッテリー残量が50%前後やそれ以下の場合もあるので注意したい。
●万博アプリは公式アプリとNTTのアプリを活用しよう
大阪・関西万博のアプリやID周りの仕様や使い勝手は、決していいものではない。
関連アプリだけでも5つ以上ありいずれも使い勝手が異なる上に、アプリによっては万博ID以外の情報登録を行う場合がある。アプリ多くして船山に登るといった状況だ。さらに、アプリ間でデザインが統一されていない、起動時に数秒間ロゴなどの表示で待たされるなど、今どきの一般アプリや決済アプリに慣れている人だと不親切に感じるだろう。ここは改善を期待したい。
アプリで利用できる万博のために用意された決済やポイントも、デジタルプリペイド型のVisaタッチ決済「ミャクペ!」、独自ポイント「ミャクポ!」、ステータスポイント「ミャクミャクリワードプログラム」、NFT「ミャクーン!」と統一されておらず分かりにくい。なお、これら複数のアプリの利用登録や連携や利用と対象パビリオンの来場を繰り返すと、抽選特典などを利用できる。ただ、万博に1〜2回訪れるだけだと応募条件を満たすのは難しく、これらの作業を行う必要は薄いと感じられた。
1度や2度訪れるだけなら、必須アプリの利用だけに絞って問題ない。公式かつ最新の運営情報が提供される「EXPO 2025 Visitors」と、会場のナビとして使いやすいNTTの「EXPO2025 Personal Agent」を入れておこう。
会場でより積極的に活用したいアプリは、NTTの「EXPO2025 Personal Agent」だ。マップやARナビゲーションによる施設案内や、会場内や施設、トイレなどの混雑情報の提供、AIによる周遊プランの提案といった機能を備える。後は、毎回の起動時に表示される映像と、認証とは別のサインイン操作が不要になればいいのだが。
万博会場内は各社のキャッシュレス決済を利用できる。ただ、海外パビリオンでは各国のスタッフがレジを担当していることが多く、クレジットカードのタッチ決済(英語だとコンタクトレスペイメント)が一番通じやすい。iPhoneのApple PayやAndroidのGoogle Payにクレジットカードを登録し、いつでもタッチ決済を使えるようにしておこう。クレジットカードを持っていない場合は、上述のミャクペ!を登録すると、プリペイド型のタッチ決済として使える。
最後に通信事業者の関連しているパビリオンだが、東ゲートすぐの位置に「NTTパビリオン」、西ゲート近くにKDDIも協賛する「未来の都市」パビリオンがある。
NTTパビリオンは通信手段の変遷から、光電融合技術IOWNを用いた空間・触感伝送や、遠隔地のデータセンターに接続する光コンピューティングを用いたパビリオン施設とプログラムを提供している。所要時間は20分と手頃なので、予約・抽選は必要だがぜひ訪れてみてはいかがだろうか。
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