自衛隊機が墜落した入鹿池で、回収した機体の一部とみられる破片をボートで運ぶ自衛隊員=15日、愛知県犬山市 航空自衛隊の練習機「T4」が愛知県犬山市の入鹿池に墜落した事故の発生から、21日で1週間となった。機体の状況などを記録するフライトデータレコーダー(FDR)が搭載されておらず、原因究明の難航が予想される。T4の飛行が見合わせとなる中、空自は安全性確保とパイロットの練度維持とのはざまで飛行再開に向けた難しい判断を迫られている。
空自によると、事故機は14日午後3時6分に小牧基地(愛知県小牧市)を離陸。旋回しながら高度約1400メートルに上昇したところで急降下し、同8分ごろ、小牧基地の北東約13キロの犬山市付近上空でレーダーから機影が消えた。
離陸して約1分間は安定して上昇を続け、空港の管制官との交信でも異変を伝えるやりとりや緊急事態の宣言はなかった。脱出する際、自動的に発信される救難信号も確認されず、緊急時の対応を取れないほど突発的なトラブルだった可能性が高まっている。
「一体何が起きたのか」。ある自衛隊関係者は、事故原因を特定できない現状に頭を抱える。
T4は前席と後席の両方で操縦でき、不明隊員2人のうち1人は総飛行時間が1000時間を超える熟練パイロットだった。左右のエンジンはそれぞれ油圧系統が独立しており、原因究明には主翼を含めた機体主要部分の回収、分析が待たれる。
ただ、入鹿池の中は泥がたまっており、ダイバーの視界が遮られるなどして捜索が長期化している。機体には原因究明に重要な役割を果たすFDRも搭載されていなかったことから、調査は難航する見通しだ。
空自は事故を受け、保有するT4約200機の飛行を見合わせ、緊急点検を実施。内倉浩昭航空幕僚長は点検と隊員の安全教育が終わり次第、事故原因の分析を待たずに飛行を再開する可能性も示唆している。
ある防衛省関係者は「安全確保が最優先事項」とした上で、飛行見合わせが長期化することによるパイロットの練度低下を懸念する。別の関係者も「安全性、技量の維持はどちらも大切だ」とジレンマを口にした。
空自は21日、これまでの捜索で離陸時に揚力を増す「フラップ」などの主翼や水平尾翼の一部とみられるものを発見、回収したと明らかにした。