ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した111億年前の初期宇宙の棒渦巻銀河「J0107a」(写真左)とアルマ電波望遠鏡で撮影されたJ0107a内部のガスの分布(同右)(米航空宇宙局=NASA、ALMA提供) 国立天文台と名古屋大、静岡大などの研究チームは、111億年前の初期宇宙で見つかった巨大な「棒渦巻銀河」をジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)と南米チリのアルマ電波望遠鏡で詳細に観測し、内部で大量のガスが激しく吹き荒れ、活発に星を生み出している様子を明らかにした。論文は22日、英科学誌ネイチャーに掲載された。
棒渦巻銀河は、中心部に星やガスからなる棒状の構造があり、その両端から渦巻きの「腕」が伸びた形で、太陽系がある銀河系(天の川銀河)もその一つ。一般的に、内部での星形成活動は落ち着いていると考えられていた。
国立天文台の黄爍特任研究員らは、くじら座の方角111億光年先にあり、天の川銀河の300倍のスピードで星が形成されている「J0107a」をJWSTとアルマ望遠鏡で観測。内部の構造や星形成の様子などを詳しく調べた。
初期宇宙で激しく星を形成する「モンスター銀河」は、銀河同士が衝突、合体している例が多かった。しかし、観測の結果、J0107aに衝突の形跡は見られず、天の川銀河のようなきれいな棒渦巻銀河であることが分かった。
一方、中心部で星の材料となるガスの割合は、50%と、天の川銀河(10%以下)より多かった。中心から半径2万光年の範囲で、秒速数百キロという高速でガスが吹き荒れており、これが大量の星形成を引き起こしていることも分かった。