
荒木飛呂彦の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を高橋一生主演で実写化したテレビドラマの映画版第2作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が5月23日(金)から全国公開された。邦画初となる全編ベネチアロケを敢行した本作で、露伴がベネチアの迷宮に迷い込むきっかけとなる仮面職人のマリアを演じた玉城ティナに話を聞いた。
−このシリーズに対するイメージはどのようなものがありましたか。
高橋さんが演じられている岸辺露伴が人物の解釈も含めて本当にぴったりだと思いました。チーム全体で原作を壊さない意識を持ちながら、どうすれば広げていけるのかを考えている作品だと思っていたので、そこに自分が入った時にどうプラスになれるのかということを考えました。漫画の実写化は難しいというイメージがありましたが、この作品に関してはあまりネガティブな声を聞かないし、スタッフやキャストの皆さんが「やるならとことんやりましょう」という感じで携わられているからこそできることだと思います。高橋さんの岸辺露伴というキャラクターが真ん中にはいますが、毎回キャストもキャラクターも変わっていく中で、露伴のスタンスが原作とはちょっと違ったりもするので、難しいだろうなと思いながらも、それを受け入れる高橋さんの器の大きさや監督の広げる力みたいなことをすごく感じました。今回の衣装はもちろん、ベネチアでオールロケができたこともポイントだと思います。
−最初に脚本を読んだ時の印象は?
マリアが持つ運命や、父親にかけられた呪いを娘が受け継ぐところには、切っても切れない家族の縁みたいなものを強く感じましたし、原作を広げながら脚本でこういうふうに落とし込んでいくんだという驚きもありました。特に私が演じるところは、話を膨らませた部分が多かったので、原作を殺さずに何十倍も面白くできるんだというわくわく感が脚本の時点でありました。
−実際に演じてみて感じたことはありましたか。
マリアという役は感情的になることはあまりありません。彼女がここに来るまでにはたくさんの挫折や恨みみたいなマイナスの感情があったと思うんですけど、私が演じた20代半ばぐらいのマリアは、もうそれを超えて自分を客観視しているような感じだったので、自分の運命の悲しさをひけらかすのではなくて、言葉の言い方や目線でにじませるように演技をしなければならないところが大変でした。脚本から読み取ったものをそのままやった感じです。監督からも何か言われることはほとんどなくて、自由にやらせてもらってかえって不安になるぐらいでした。
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−マリアというキャラクターをどのように捉えましたか。
彼女は生まれながらに呪われた子で、何年もかけてその運命を受け入れてきたのだと思います。ただ運命を受け入れてはいるけれど、このままでいいのだろうかという葛藤もある。彼女の場合は親の呪いが子どもの代まで続いているわけですが、形は違っても、家族にはそういうことは割とあるのかなと。このお話はもちろんフィクションですけど、マリアという役が、見ている皆さんと一番つながりやすいんじゃないかなと思って演じていたので、彼女が発する言葉に寄り添って聞いてもらえると共感できるものがあると思います。
−高橋一生さんの印象は?
共演のシーンが一番多かったのは高橋さんなんですけど、その場にいるだけで、高橋さんが作り上げてきた岸辺露伴というキャラクターに圧倒されました。やっぱり高橋さんだったからこそ5年も続けてこられたのでしょうし、相当な覚悟もあったと思います。今回ベネチアという場所で、私も初めてシリーズに参加させてもらいましたが、「あなたがどういう演技をしても、僕は受け入れますよ」という感じで、どっしりと構えてくださいました。2人のシーンの時は、初めは緊張しましたが、ナチュラルな演技をされる方なので、私も自信を持って、「私のマリアはこうです」と思いながら作り上げていった感じです。「ここを調整しよう」みたいなこともたまにありましたが、今回は感情的なシーンはあまりなかったので、距離感の部分では最初のシーンからマリアと露伴として入れたと思います。
−イタリア語のせりふはいかがでしたか。
イタリア語の講師の方に付いていただいて指導していただきました。せりふが少しずつ変わったり、こちらの発音の仕方がネイティブっぽいとかもあったので、ぎりぎりまで変わるかもしれないと思いながら覚えていました。せりふとしては最初に暗記をして、きちんと言えるようになってから発音や表情を決めていきました。イタリア語をイメージした時に、巻き舌が特徴的だと思うんですけど、イタリア語はおなかに力を入れないとしゃべれなくて、言語の持つ特徴みたいなものを感じました。発音が難しかったですけど、何とかできたのではないかと思っています。イタリア語の映画を見て勉強しながら耳になじませていったような感じでした。高橋さんはイタリア語のせりふが多かったので、それと比べたら全然大丈夫でした。
−ベネチアの魅力についてはどう感じましたか。
日本の田舎とちょっと似ているような気もしましたが、世界中から観光の方が来るので、そこに住んでる人の自信やプライドみたいなものをすごく感じました。歴史的なものも含めて京都みたいなところもあるかもしれません。毎日、目覚めると「ベネチアだ!」という感じの3週間でした。もちろん撮影もあるのでウキウキばかりしてもいられませんでしたが、その中でも飯豊まりえちゃんとお茶をしに行ったり、お散歩をしたりしました。石畳の道、教会、マリアが職場として働いている仮面の工房もそうですけど、朝日も夕日も取り巻くものが全て美しい。だから、ここに世界中からたくさんの方が観光に来たり、住んでいる方もここを離れたくないという気持ちになる場所なんだと思いました。
−最後に、観客や読者に向けて映画の見どころをお願いします。
キャストの皆さんもそうですけど、スタッフさんも、いいものを作ろうとどんどんブラッシュアップして、満足度100パーセントのものができたと思います。このチームだからこそできるものがあるという手応えを感じています。ベネチアの持つ空気感やキャラクターの強みが全て合わさって、今まで見たことがないような映画が出来上がっていると思います。ベネチアを舞台にしてはいますが、描かれていることは人間が持つ欲望や恨みみたいなものなので、身近に感じられる題材だと思います。そしてその中でもマリアは、観客の方に寄り添っているキャラクターだと思うので、その辺りも注目しながら見てもらえるとうれしいです。
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(取材・文・写真/田中雄二)
