「Los Angeles Dodgers」公式Xポストより引用 ドジャースの大谷翔平が好調を維持している。日本時間22日のダイヤモンドバックス戦に指定席の1番指名打者で出場した大谷は、4打数無安打に終わったものの、ライトへのあわや本塁打かという大飛球もあった。
◆打線好調も…苦しすぎる「投手陣の台所事情」
これで5月は19試合に出場し、打率.329、10本塁打。盗塁の数は4月までの9個から2個に減らしているが、開幕から全く伸びていなかった打点数が上昇中だ。春先は低調だったドジャースの下位打線にも当たりが出始めたことで、チャンスで大谷に回る場面も増えてきた。
また、大谷に呼応するようにドジャース打線も好調。22日の試合では、ケガから復帰3戦目のテオスカー・ヘルナンデスが約3週間ぶりとなる一発を放つと、大谷の直後を打つムーキー・ベッツも直近3戦で2本塁打を含む5安打と本領を発揮しつつある。
あとはマックス・マンシーとマイケル・コンフォートが例年並みに打ってくれさえすれば、リーグ屈指の重量打線が完成するだろう。
一方で投手陣、特に先発ローテーションは大黒柱の山本由伸を除き、期待外れに終始している。
ドジャースの投手で規定投球回数に達しているのは山本とダスティン・メイの2人だけで、そのメイも防御率は4点台と好不調の波がある。山本とともに豪華ローテーションを担うはずだったタイラー・グラスノー、ブレーク・スネル、そして佐々木朗希も戦列を離れている状況だ。
先週にクレイトン・カーショーが戻ってきたが、今季初登板は4回5失点。制球、球威ともに課題を残した。グラスノーとスネルの復帰時期も未定で、先発投手陣の台所事情は苦しいままである。
◆大谷の二刀流復帰が前倒しになる可能性も
そんななか、大谷が2年ぶりの二刀流復活へ向けて着実に前進している。
22日の試合前にはブルペンに入り、ウイニングショットの一つ、スライダーも交えて20球以上を投じた。今週末にライブBP(打者相手に実戦を想定した投球練習)を行うプランも浮上するなど、調整は順調に進んでいる。
ただ、チームの方針もあり、現時点で想定されている大谷の復帰時期はあくまでもオールスター明け。まだ2か月近くも先の話だ。
しかし、先述した通り、ドジャースの先発陣は質・量ともに不足している、改善のメドは立っていない。もしグラスノーとスネルの復帰時期が大幅にずれ込むようなら、大谷の復帰時期が前倒しになる可能性も出てくるだろう。そうなると、打者・大谷への影響も少なからず出てくるはずだ。
◆二刀流復帰による懸念点
大谷の二刀流復帰に際して、想定されているのが打席数の減少である。当初は球数と投球間隔をチームがしっかり管理するとみられるが、登板の翌日は休養を取るケースがほとんどとなるだろう。週1回のペースで登板するとなると、少なくとも週1日は全休。体の状態によっては、週に2回スタメンを外れることがあるかもしれない。
さらに昨季終盤に怒涛の勢いで増やした盗塁も、仕掛ける場面がかなり少なくなるのは間違いないだろう。
18歳でプロ入りして以降、二刀流を貫いてきた大谷も今年7月に31歳の誕生日を迎える。10月のポストシーズンまで見据えれば、強行出場させることは考えづらい。
◆思い起こされる2020年の悪夢…
さらに、自身2度目のトミー・ジョン手術から復活を目指している大谷だが、前回の手術後は復帰直後に投打ともに精彩を欠いたことを記憶しているファンも少なくないだろう。
大谷にとって初めてのトミー・ジョン手術はエンゼルス時代のメジャー1年目。18年の秋だった。翌年の19年は打者一本で出場し、ルーキーイヤーに負けず劣らずの活躍を見せたものの、二刀流復帰を果たした20年にプロ入り後の自己ワーストシーズンを味わった。
コロナ禍で7月に開幕したその年は、開幕3戦目に久々のマウンドに上がるも、1つのアウトも奪えず、5失点と炎上。さらに、2度目の登板でも2回途中まで5四球の大乱調で、2点を失ってマウンドを降りた。結局、これがシーズン最後の登板となり、37.80という屈辱的な防御率が残っている。
また、二刀流復帰の負荷もあったか、打者としても44試合の出場で、打率.190、7本塁打、24打点。打撃面でも今では考えられないような不振に陥り、立て直すことなくメジャー3年目のシーズンを終えた。
◆本格化した大谷の二刀流復活に期待
今季も同じように二刀流復活を目指すシーズンとなるが、さすがに5年前の悪夢が大谷の脳裏をよぎることはないだろう。
当時の大谷は開幕した時点で26歳になったばかりで、選手としてもまだ完成の域には達していなかった。その後、本格化した大谷は、23年に肘を痛めるまで二刀流として大活躍。打者に専念した昨季も含めて、MVPを3度獲得している。
5年前と今の大谷を比較するのは見当違いだが、2年ぶりの二刀流復活で、リズムを崩す「最悪のシナリオ」だけは避けてほしいところだ。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。