那須川天心が前哨戦に勝利、世界タイトル挑戦に前進! キック時代からの好敵手・武居由樹とのドリームマッチ実現の可能性は?

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2025年06月13日 13:10  週プレNEWS

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「自分は天心選手と戦うためにもボクシング界に来たので、やりたいと思います」

6月8日、那須川天心の世界前哨戦として行なわれたVSビクトル・サンティリャン(ドミニカ共和国)はAmazon Prime Videoで配信されたが、解説席にはWBA世界バンタム級王者・堤聖也(角海老宝石)とともに、WBO世界同級王者の武居由樹(大橋)が座っていた。

冒頭の発言はアナウンサーから那須川との夢の対決を聞かれた際の武居のアンサーだ。

知っての通り、武居と天心はともにキックボクシング出身。アマチュア時代には4回直接対決が実現し、天心の3勝1分に終わっているという。当然プロ転向後もライバル対決が期待されたが、天心はRISE、武居はK-1と交流のないプロモーションを主戦場としていたので相まみえることはなかった。

しかし、2020年12月に武居がボクシングに転向したことで、風向きは大きく変わる。この時点で那須川はまだキックボクサーとしての活動を続けていたが、自分の実力に見合う対戦相手選びが難しくなってきており、「近い将来、ボクシングに転向する」と囁かれていたからだ。

実際天心も22年帝拳ジムに入門すると、ことあるごとに武居と比較されるようになっていく。アマチュアキック時代から切磋琢磨する関係にあり、ともにキックボクサーとして一時代を築き上げた存在なので、そういう流れになるのはしごく当然だった。


ふたりは間違いなく両思いだ。時には素っ気ない態度をとることもあるが、タイミングを見計らってラブコールを送り続ける。昨年10月14日、天心はプロ5戦目でWBOアジアパシフィックバンタム級王座を判定で獲得した。その直後、リングサイドで観戦していた武居に向かってこう叫んだ。

「勝ちましたよ、武居君」

巷では2026年の実現が期待されている井上尚弥(大橋)VS中谷潤人(M.T)が話題になっているが、天心VS武居もドリームマッチであることに変わりはない。歴史に残る激闘となった中谷VS西田凌佑(六島)を例に挙げるまでもなく、最近は堤VS比嘉大吾(志成)、寺地拳四朗(B.M.B)VSユーリ阿久井政悟(倉敷守安)と、日本人同士による世界戦も出し惜しみなく組まれるようになった。

その魅力と対外的な影響について、ボクシングアナリストの増田茂氏は次のように分析する。

「配信メディアからの高レベルのコンテンツ要求に応えるために、複数の世界戦興行が組まれました。日本人同士のタイトルマッチは、その中から生まれた優良物件だといえるでしょう。それは同時に、海外メディアの『日本の繁栄は軽量級限定』というシニカルな見方に対する防波堤としても機能しています」

いずれのマッチメークも、試合内容ではハズレなしというデータも大きい。

「日本人同士の世界戦はインテンシティ(試合強度・密度)が極めて高いです。"闘わないボクサー"が増加傾向にあり、プロボクシングの本質的な部分で危機的状況にあるアメリカなど他国の世界戦に欠落しているスペクタクル(観客の興奮を引き起こすパフォーマンス)にも富んでいます」(増田氏)

すでに武居、天心とも次戦は内定済み。武居は9月に指名試合としてWBO世界バンタム級1位のクリスチャン・メディナ・ヒメネス(メキシコ)との3度目の王座防衛戦に臨む。かつてヒメネスは西田と対戦したこともあり、日本のファンにも馴染みのあるボクサーだ。

一方、天心は11月にもいよいよ世界王座に挑戦する流れになっている。今春まで世界バンタム級王座は4団体とも日本人が王者として認定されており、そのままだと天心も日本人王者との対戦になる予定だった。

しかしながら容赦ないインファイティングで西田の右肩脱臼を誘発し、6R終了時にTKO勝ちを収めてWBCとIBF王座を統一した中谷は、きたるべき井上との一騎討ちを見据え、スーパーバンタム級への転向を示唆している。


もうひとりの世界王者である堤はケガのため休養王者として認定されたばかり。今秋には復帰する予定ながら、まだ先行きは不透明な状況だ。ならば、天心は王座が空位となる公算が高いWBCやIBF王座を狙うという流れが自然だろう。

このように書くと、「武居が保持するWBO世界王座に天心が挑戦する可能性はないのか?」という突っ込みがあっても不思議ではない。ちなみに天心は5月更新のWBO世界ランキングでバンタム級2位に入っているので、挑戦資格は十分にある。

しかしながら、この極上ともいえる夢の対決を実現させるならば、天心も世界王者になって、お互いの立場をイーブンにした状態でマッチメークした方がさらに盛り上がるだろう。

ただ増田氏は、「天心が世界王者になったとしても、一度は防衛戦をクリアしていないと、名目上のイーブンファイトにはなりえない」と考える。確かに武居はすでにWBO世界王者として2度の王座防衛に成功している。同じ世界王者といえど、防衛に成功している者とまだ獲ったばかりの者とでは格が違う。

このあたりのさじ加減はひじょうに難しい。以前、武居は「(天心との対決は)早い方がいい。ボクシング界はいつまでもトップでいるのは難しいので、チャンピオンのうちにやりたい」と語っていた。

決戦の日は、ボクシングの神だけが知っているのか。

取材・文/布施鋼治 撮影/ヤナガワゴーッ!

【写真】子供のような笑顔を見せる那須川天心

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