【F1】角田裕毅は周囲の雑音もどこ吹く風 キャリア通算100戦で積み重ねた自信は1ミリも揺るがない

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2025年06月13日 18:20  webスポルティーバ

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 オレンジ色にデザインされたヘルメットを見れば、F1にやってきた頃の角田裕毅の姿がありありと浮かぶ。しかし、あれからあっという間に5年の月日が流れ、角田のF1参戦レース数は100戦目を迎えることとなった。

「ちょっと変な気分ですね。まだF1で走り始めたばかりのような気もしますし、でもずっと僕の人生の一部だったような気分でもあります。どのレースも特別に感じられますし、このF1という世界で100戦を迎えることができたのは、とても幸運なことだと思っています」

 そう言いながらも、本音では「日本人最多」や「100」といった記録や数字のことなど、特に何も気にしていないのが「角田裕毅」というドライバーだ。だが、彼が歩んできた道のりと、その過程で遂げてきた成長は、おそらく彼自身が思っているよりも何倍も長く大きい。

 F1にデビューする前、F2やF3で戦っていた頃の角田と今の角田では、顔つきも肉体も、言葉も考え方も、そして戦っている場所も、あまりにも違う。それが100戦の重みであり、100という数字ではなく一つひとつの学びと成長が、今の角田裕毅を形づくってきたのだ。

 その土台があるからこそ、目の前の結果が出ない今の状況に周囲の雑音がどれだけ大きくなろうと、角田の信念が揺らぐことはない。

「自分自身のパフォーマンスを発揮しきれないことで(今後の契約が)どうなってしまうかはわかっています。このポジションは本来自分がいるべき場所じゃないことも、自分自身がよくわかっています。

 僕としては力強く挽回できると自信を持っています。みなさんがレッドブルのセカンドシートはああだこうだと言いたいのはわかりますけど、自分の能力は去年までや今年の序盤戦ですでに証明済みですから」

【新たなアプローチをトライ】

 イモラでは予選Q1でミスを犯し、モナコでは予選Q2の戦略がつたなくて敗退。バルセロナでは週末を通して原因不明のグリップ不足に見舞われた。

 結果はたしかに、この3戦で1ポイントのみと低迷している。

 だが、結果ではなく本質に目を向ければ、速さは衰えるどころか、着実に伸びている実感がある。予選で結果につなげられないレースが3戦続いたが、マシンへの理解は深まり、速さは増している。

 角田自身には、その手応えがあるのだ。

 スペインGPを終えたあと、角田はバルセロナに居残ってTPC(旧型車テスト)と2026年型タイヤ開発テストを行ない、2日間にわたって走り込んだ。

「(初日は2023年型の)RB19でかなりの周回数を走り込みました。レース週末に走った同じサーキットを走ったことによって、(TPC用の)アカデミータイヤとはいえ比較がクリアにできました。チームに対していいフィードバックができたと思いますし、僕自身としても改善したり、RB19のよさを生かすためのアイデアが得られたかなと思います。

 あと(2日目は)2026年型タイヤの開発テストでフィードバックに専念しました。ミルトンキーンズのファクトリーではシミュレーター作業も行なってきました。スペインGPがあのような結果になってしまっただけに、今週末は予選でしっかりといいアタックを決める必要があると思っています。そのための作業をしっかりとやり込んできました」

 そのなかで得たアイデアから、スペインGP週末の不調原因を把握し、カナダGPに向けて新たなアプローチをトライする。

 角田は「もしそれがうまくいけば、どんなことだったのか言います。うまくいかなかったら、黙っておきます(笑)」と詳細をはぐらかしたが、着実にマシンへの理解が進んできたこのタイミングだからこそ試したいことがあるのだろう。それが次のステップにつながると考えてのトライだ。

【カナダGPは走れる縁石】

 カナダGPの舞台ジル・ビルヌーブ・サーキットは、1967年のモントリオール万博と1976年のモントリオール五輪のために造成された人口島の公園周遊路を使った半公道サーキットだ。

 4本のストレートをヘアピンやシケインでつないだ比較的シンプルなレイアウトだが、パワーだけで乗りきれるサーキットではない。シケインは140km/h前後でクイックに切り返す空力性能が必要で、鈴鹿並のダウンフォースレベルで走る。

「パワーサーキットと言われますが、PU(パワーユニット)的にはそれほど(パワーの)ラップタイム感度は高くなくて標準的です。予選では(スロットル全開時にはすべてディプロイメントを利かせる)フルディプロイができますし、レースでのエネルギーマネージメントに関しても特に厳しいということはない。ほかのサーキットと似たようなレベルで、通常どおりの準備を進めていくことになります」(ホンダ・折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー)

 そしてシケインでは、やや古いスタイルの縁石を大きくまたぎ、マシンを跳ねさせて向きを変えていくゴーカートのような乗り方が求められる。

 レッドブルのマシンはこうした縁石を絡めた走りが苦手だとされる。だが、モナコやシンガポールの縁石とはまた違うと、角田は言う。

「実際に走ってみるまでわかりませんけど、ここの縁石はほかのサーキットとかなり違っていて、(積極的に使って)走れる縁石なんです。だから走る前からRB21がこのサーキットに合わないと、結論づけてしまう必要はないかなと思います。

 去年のレッドブルは(優勝していて)まったく問題ありませんでした。なので僕らにとって、苦手なサーキットだと思っていません」

 今の結果が結果だけに、何の根拠もない噂や想像の産物ですら、信憑性を帯びてしまう。それが日本語に翻訳され、あたかも事実であるかのように報じられてしまう時代だ。

 だが、そんな周囲の雑音は根拠も信念もないからこそ、目の前の結果ひとつで簡単に消え去りもする。賞賛の声に180度、変わりもする。

 100戦錬磨の角田は、そんな雑音に惑わされることなく、自分の道を突き進む。100戦で積み重ねてきた経験と速さ、そして自信は、1ミリも揺らいではいない。

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