
金型や精密機械部品などを製造している京都府宇治市の金森製作所が、自社のオリジナル製品としてアルミ製の高級将棋駒と卓上盤、駒台のセットを開発し、受注販売を始めた。上品な光沢や形状の硬質感はもちろん、指で扱う駒の触感にもこだわった高級品で、1個のアルミ駒から購入できる根付(ストラップ)の注文も受け付けている。
【写真】アルミ駒の根付(ストラップ)は1個単位で受注販売しています
将棋セット「宇治将龍」は、特注の桐箱(きりばこ)入りで141万9千円(税込み)。約4キロの盤は、航空部品やスキー板にも使われる軽くて強度のあるアルミ合金を使用している。
駒は木製の約3倍の重みがあり、彫り駒として加工しやすく、摩耗を防ぐ表面処理をしても落ち着いた色目が保たれる材質から作った。書体は、金属の硬質なイメージに合わせ、細身で端正な筆致に特徴がある「巻菱湖(まきりょうこ)」を採用した。木津川市の駒師熊澤良尊さんから、書体のデザインの基となる大切にしてきた紙を譲り受け、データを工作機械に読み込ませた。
同社が将来の新たな収益源を目指して、自社製品開発のアイデアを社員に募ったところ、熱心な将棋愛好家でもある営業職の紀本洋志さん(38)が、金属製の高級将棋セットを提案した。プロ棋士の藤井聡太七冠がけん引する近年の将棋ブームや急伸するインバウンドの需要も見込めるとあって唯一採用され、昨年夏に試作に取りかかった。
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製品化を技術面で支えたのが、同社会長で金属加工歴約60年の金森勇さん(72)。手作業の木製駒と異なり、エネルギーの大きな工作機械で加工する金属製は素材をしっかり固定する「治具」と呼ばれる補助工具が必要になる。ところが、小さな七面体である駒は表と裏など対となる平面が傾斜していることなどもあり、専用の「治具」を作るには複雑で細心の調整が必須で、デジタル技術では及ばない熟練の技と経験が欠かせないという。
「将棋の駒には、これまでにもいろいろな素材が使われてきたが、金属製でここまで開発に労力を割いて、精緻に作り込んだ品はないはず」と金森さん。経営者として職人の第一線から離れていたが、アルミ駒の開発段階から現場に復帰し、今も製造過程の多くを担っている。
根付は、「王将」と「玉将」(各1万9800円)から「飛車」「角行」(各1万6500円)、「歩兵」(9900円)まで9種類あり、同社のホームページから購入できる。注文を受けてから文字を彫りつけて仕上げる受注生産で、納品まで約1カ月かかる。将棋セットの納期は1〜2カ月という。
紀本さんは「根付は、国内でも記念品として需要がありそう。将棋セットは大手旅行社が関心を示し、空港のショップに展示してもらえる可能性もある。将棋を知らなくても漢字に興味がある外国の方は多いので、自宅の鑑賞用としてお勧めです」と期待している。
(まいどなニュース/京都新聞)
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