※画像はイメージです 世間に衝撃を与えた飲食店での迷惑行為。記憶に新しいケースでは、備え付けの具材に指を入れたり、店内のテーブルに土足で上がり騒いだりと、とんでもない輩がニュースで取り上げられていました。それらは、SNSの視聴回数稼ぎの場合も多く、勝手極まりない行動です。
ただ、中には当人が迷惑だと気づいていない『無意識な迷惑行為』もあるようです。一体どのような迷惑行為だったのでしょうか。
◆半個室が人気の居酒屋
渋谷の道玄坂を少し上がったところにあるおしゃれな居酒屋。一級建築事務所を経営している三村さん(仮名・45歳)は、部下の誕生日を祝うため、他のスタッフも引き連れて訪れました。
「ここの店長は私の後輩で、お店の設計も私の会社で請け負ったんです。客として訪れるのは初めてだったのですが、自分が言うのも変ですが、とてもおしゃれな店内で、予約も取りづらいほどの人気店になっているそうです」
高評価なお店だけあり、続々と予約客が訪れてあっという間に満席になったそうです。店内の雰囲気もさることながら、週替わりの創作料理も人気なのだそうです。
◆隣の個室から怒鳴り声が…
料理もおいしく、地酒も豊富で、三村さんたちは大いに盛り上がったそうです。ところが、しばらくして隣の個室から怒鳴り声が聞こえてきたといいます。
「この日は部下の誕生日だったので、店長の粋な計らいでケーキまで用意されていました。ところが、部下がローソクの火を吹き消そうとした時、となりの部屋から『バカヤロー!』という怒鳴り声が聞こえてきたんです。
途中でトイレに行った際、少し開いた開戸から隣の様子が見えたのですが、普通のサラリーマン風の5人組だったように記憶しています」
さきほどまで和やかなムードだった三村さんたちでしたが、隣から聞こえてくる怒号やテーブルをたたく音で一気にトーンダウンしていったといいます。その後、いったんは静かにりましたが、何やら男性が説教するような声がそれからも続いたそうです。
◆再び騒がしくなり、ついに…
まるでお経を唱えるかのような男性の低い声が隣の個室から断続的に聞こえてくる中、三村さんたちは聞き耳を立てながら隣の様子を伺っていたといいます。
「オーダーした料理やお酒がどんどん運ばれてきますが、みんなの関心は完全に隣室に向いていましたね。
たぶんですが、説教されている人はずっと『はい。わかりました。はい』と、言うばかりで、それを無視するかのように、上司らしき人の声が再び大きくなっていったと思った次の瞬間『パチン!』という音がしたかと思うと、人が倒れるような鈍い音がしたんです」
明らかに異常な雰囲気に、三村さんは呼び鈴で店員を呼んだそうです。すると、店員ではなく店長自らが飛んできたそうです。
「後で聞いた話ですが、三村さんたち以外の個室からも怒号に対する問い合わせが入っていたそうで、店長も状況を理解しているようでした」
◆せっかくの誕生日会が台無しに
ガラガラという引き戸を開ける音とともに、隣の個室に店長が入っていくと、それまで騒がしかった様相が一瞬にして静まり返り、しばらく店長と上司と思しき人が会話している声が聞こえてきました。
「あまりにも気になったので、私は部下の一人と一緒に少し開いた引き戸から隣の個室の様子を確認しました。すると、そこには異様な光景がありました。
テーブルに出された食事には一切手がつけられておらず、ビールも口をつけた形跡がないほどジョッキにたっぷり入っていました。なぜそうなったのかはわかりませんが、本当であれば楽しい宴会になるはずが、どこかのタイミングで上司の激昂スイッチが入ったのでしょうね」
それからしばらくして、隣の一行はゾロゾロと退店していったそうです。その際、上司と思しき男性が三村さんの個室に出向き「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と一言謝罪して帰っていったといいます。
「今までも、飲食店でいろんな迷惑行為に遭遇してきましたが、隣の客の怒号が原因で美味しく食事が取れなくなるほどの被害は初めてでした。公共の場ということをもっと意識してほしいですね」
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営