米価高騰に対抗するため、新たに農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏の指揮の下、備蓄米が放出された。独特のにおいや味が苦手という人も多いが、おいしく食べる知恵があるという。
“米担当大臣”、小泉進次郎農林水産大臣(44)が力を入れて放出している備蓄米が、6月に入り店頭に並びはじめた。買いやすい価格の米を待ちわびていた消費者が、数時間並んで手に入れる様子などが連日報道されている。
これまで放出されていた「古米」と呼ばれる2023年産の備蓄米は、競争入札方式でJAなどの集荷業者や卸売業者を通し、小売店に至るという流れだった。
だが、小泉大臣の指揮の下、2022年産の「古古米」と、2021年産の「古古古米」を合わせた約30万トンの備蓄米は、随意契約方式で直接小売店に卸す方式がとられた。その結果、放出決定から消費者の手元に届くまでが驚くほどスピーディになったのだ。
5月19〜25日の全国の5キロの米平均税込み価格は、銘柄米は4453円、競争入札方式の備蓄米を含むブレンド米などは3918円だったのに対し、随意契約の備蓄米は2000円程度と安い(農水省調べ)。
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「高くて米が買えない」と嘆いていた消費者が待ち望んでいた備蓄米の放出だが、この恩恵はいつごろまで続くのだろうか。
米の流通事情に詳しい、米流通評論家の常本泰志さんはこう語る。
「“小泉米”とも呼ばれる随意契約の備蓄米は約30万トン。30万トンといえば、国内での消費量の半月分にしかなりません。現在のように、店頭に出せば即売り切れる状況が続くのか、それとも売れ行きが芳しくなくなるかの動向は今後2週間ほどでみえると思います。備蓄米の放出量は最初から決まっているので、なくなれば打ち止め。今後の動向次第にはなりますが、長くはないと思います」
■洗うときは水が先で米が後…順番で味が変わる
価格の安さから、しばらくは家計の救世主になると期待される古米だが、一方で「癖があり苦手」という声も多い。千葉県・まきの米店の店主で、五ツ星米マイスターの牧野基明さんはこう語る。
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「古米の癖の強さは、米が古くなるにつれて脂肪分が分解されることが原因です。これが独特の“古米臭”を招くのです。たとえるなら、サラダ油が酸化したときに感じる、プラスチックのようなにおいです」(牧野さん、以下同)
また、米は古くなるほど、においだけでなく味にも変化が出る。
「水分を多く含み、強い粘りと甘味が新米の特徴ですが、2023年産の古米と新米の味の違いは、一般の人であればほとんどわからない程度だと思います。しかし、古古米や古古古米は収穫した年が天候不順で、もとから質の悪い米。加えて古くなることで水分量が減り乾燥が進み、硬くパサついた食感に。雑味も増すため、甘味が感じられなくなります」
できれば、新鮮な新米を食べ続けたいところだが、減反政策の影響や海外の日本米の需要の高まりなどの要因が解決しない限り、米価の高騰は続く可能性が高い。今後、古い米を食べざるをえない機会も出るに違いないが、できればおいしく食べたいところ。
そこで、牧野さんに備蓄米をおいしく食べる方法を教えてもらった(表参照)。まず、米を洗うときから注意が必要だという。
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「ボウルの中に入れるのは水が先。その中に米を入れると、黄ばみや臭み、雑味のもととなる汚れが浮いてきます」
さらに、乾燥している古米は割れやすいのでやさしい力で洗おう。
「暑くなるこれからの時季は特に水温に注意。炊くときに使う水は冷たいほうが甘味が増すので、冷蔵庫で冷やした水や氷などを活用するといいですよ。古米は銘柄もさまざまなので買うたびに異なるものが入っていると思ったほうがいい。そのため、古米を最初に炊くときは、計量カップで水加減を知っておくと次回以降の炊き上がりが安定します。
洗米後水を切ったら、その米を計量カップで量り、水は米と同量になるよう計量カップで量ります。炊飯した炊き上がりの硬さをみて、次に炊くときは水量を加減すると、好みの硬さにできます」
さらに、日本酒やはちみつなどを加えると、“古米臭”を消し、米のつやを出してくれるという。
「それでも食べづらい……」と感じた場合は調理するのがおすすめ。
「新米に比べ吸水力がある古米は、寿司酢の甘さが中まで浸透しやすいので、寿司店ではあえて古米を使うほど。古米の特性を生かして調理すれば、意外なおいしさを発見できるかもしれません」
気をつけたいのが米の保存方法。
「米は古くなるほど虫がわきやすいので、古米は見た目がきれいだとしても、保管状態が悪ければ虫がわく、カビが生えるといったリスクが高くなります」
古米は新米以上に細心の注意を払って保管したほうがよさそうだ。
「火や水を使うキッチンは高温多湿で結露しやすく、米には過酷な環境。特に年中放熱している冷蔵庫周辺には置かないのが鉄則です」
本来は一度で食べきれる量を炊くのがいいが、すぐに食べられない分は、温かいうちに冷凍しよう。
「冷凍庫に入れるときはご飯の温度で周りの食材を溶かさないように。ラップで包んだご飯をアルミホイルで包んで冷凍庫に入れると、庫内温度の上昇を抑えられます」
新米と比較されがちな古米の味だが、ちょっとした工夫でいくらでも変わる。貴重な備蓄米を無駄なくおいしく味わおう。
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