近年のプロ野球では活躍する外国人選手が減少傾向にあるが、今年は躍動する助っ人が多い印象だ。かつて横浜大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木 豊氏に、注目している新助っ人について聞いた。
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巨人は絶対的4番・岡本和真が試合中のケガで長期離脱し、苦しい戦いが続いている。そんな中、今年から加入したトレイ・キャベッジが一定の活躍を見せている。
「オープン戦の段階から『ある程度は打つだろうな』と思っていましたが、シーズンに入ってからもよくやっているほうだと思います。引っ張るだけでなく、逆方向にも力強い打球を飛ばしますし、軸がブレないのがいい。
打つだけではなく、走塁に手を抜かない姿勢も素晴らしいですね。守りも含めて、助っ人にありがちな穴が見られませんし、いてくれてよかったです。
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やはり岡本がいないと得点力がかなり低下してしまいます。長期離脱から戦列に戻った丸佳浩に今季第1号がやっと出ましたが、キャベッジも含めて長打を打てるバッターが打線に何人かいると、やはり相手もプレッシャーになると思いますよ」
藤川球児新監督を迎え、リーグ優勝と日本一の奪回を目指す阪神。6月8日時点(以下同)で35勝21敗2分けと14個の貯金をし、首位を走っている。
チームの打率(.241)、本塁打数(36本)共にリーグ2位と打線も好調だが、12球団トップのチーム防御率2.05と抜群の安定感を見せるピッチャー陣の働きぶりが大きい。その中で奮闘するジョン・デュプランティエについて高木氏はこう語る。
「シーズン序盤は野手にも足を引っ張られ、打線との兼ね合いで2勝(2敗)にとどまっていますが、8試合に先発して防御率1.54は大健闘です。球持ちがよくて真っすぐが強い上、変化球のキレもよくて三振が取れる(奪三振率11.96)。先発ローテーションの一角として十分やってくれています」
昨季は開幕直後にふたりの助っ人がそろって離脱し、得点力不足に悩まされた広島。今季はサンドロ・ファビアンが3割前後の打率をキープするなど、打線の中軸として機能している。
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「オープン戦ではあまり評価が高くなかったですが、バットが素直に出ていましたし、打ち方としてはある程度対応しそうな気がしていました。広島OBの達川光男さんも当初から評価していましたね。守備も献身的で手を抜かず、優良助っ人だと思います。
大振りしなくても打球が飛んでいきますし、日本人ピッチャーのボールにアジャストするのも早かった。シーズンを通してどれくらいの数字を残してくれるのか期待が持てるバッターですね」
故障で離脱していたエレフリス・モンテロも、日本の野球に順応し始めている。
「バッティングが柔軟で、勝負強いですね。選球眼もいいですし、センター中心の意識が強いのか、バッティングに無理がない。打率が上がるにつれ、自然と長打も増えてくるんじゃないですか。ファビアンとモンテロが中軸の役割をこなしてくれることで、得点力も相手に与えるプレッシャーも全然違いますね」
躍動する新助っ人はパ・リーグにも多い。リーグ最下位のロッテで奮闘するのは、10試合に先発し、防御率2.14と安定した成績を残すオースティン・ボスだ。
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「すごく安定しています。大きく曲がるスイーパーが効いていて、打者も嫌がっている印象ですね。まだ2勝(3敗)ですが、もっと勝っていてもおかしくない内容です。やはり打線の援護がないのは厳しいですね。
それと、フォアボールなどでランナーを出しても落ち着いています。メジャー時代のリリーフの経験も生きているのかなと。種市篤暉や小島和哉、FAで加入した石川柊太らが勝ち星を伸ばせず、ボスにかかる期待と負担は大きいと思いますが、頑張ってほしいです」
昨年は49勝91敗3分けと屈辱的なシーズンに終わった西武。西口文也新監督を迎えて巻き返しを図る今シーズンは、ここまで29勝27敗でリーグ4位タイと健闘している。今年から加入した投打の助っ人の働きも大きい。
「(野手のタイラー・)ネビンは攻守で献身的な働きをしていますよね。4月の終わり頃から4番に定着して打線を引っ張っていて、ファーストの守備も堅実。打率も.269といい数字をキープしていますが、何よりも得点圏での集中力があります(得点圏打率.383)。
昨季の西武は、4番はもちろん、クリーンナップを任せられるバッターが不在と言っても過言ではない状況でしたから、ネビンの加入は本当に大きいと思います」
投げるほうで西武に貢献しているのは、リリーフのトレイ・ウィンゲンターだ。ここまで22試合に登板し14ホールドを挙げ、防御率1.74と活躍を見せている。
「チームが貯金できているのはピッチャー陣の働きが大きく、ウィンゲンターもよくやっていると思います。ここ最近は負けがついていますが、抑えの平良海馬につなぐ役割を果たしてくれています。
真っすぐの割合が高いのですが、ボールに力があり、狙っていてもバッターが打ち損じています。それとスライダーが抜群で、ほとんど打たれていない印象です(スライダーの被打率.103)。外国人が投打共に活躍しているチームが少なくなっている中、このふたりの働きは大きいです」
活躍中の新助っ人たちが、シーズンを通してどれくらいの成績を残せるのかに注目だ。
取材・文/浜田哲男 写真/産経新聞社