カナダで開催されている先進7カ国首脳会議(G7サミット)で握手を交わすトランプ米大統領とスターマー英首相=16日、カナナスキス(AFP時事) 【カナナスキス時事】カナダでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、トランプ米政権による相互関税の上乗せ分の発動が来月に迫る中、解決に向けたトップ外交の好機になるはずだった。だが、事態打開にはつながらず、トランプ大統領が早々に帰路に就いたことで進展が望めなくなった。
「英国は(関税賦課から)完全に守られた」。トランプ氏は16日、スターマー英首相との会談後、こう語った。5月に合意した貿易協定の文書に正式に署名。満足げな表情で「彼ら(他国)ができなかったことを(スターマー氏は)成し遂げた」と強調した。
トランプ氏は交渉がまとまった成果を誇ってみせたが、英国との合意は既定路線。他に目立った成果はなかった。
米政権が打ち出したほぼ全ての貿易相手国に対する相互関税の上乗せ分の停止期限は来月9日。各国首脳はサミットを機にした「トランプ詣で」により、事態打開を図ろうと期待していた。
議長国のカナダは、G7サミット前の合意も視野に交渉してきた。トランプ氏は16日、カーニー首相を前に「合意は可能だ」とうそぶいた。だが、ふたを開ければ「30日以内の合意に向けた交渉を進める」との確認だけに終わった。
また、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はトランプ氏との会談後、「交渉を加速させるよう指示した」とSNSに投稿。具体的な結果がなかったことをにじませた。
赤沢亮正経済再生担当相が6度にわたって訪米し、関税見直しを求めてきた日本も、具体的な進展はみられなかった。
さらに、韓国の李在明大統領や関税交渉の先頭集団にいるインドのモディ首相、ブラジルのルラ大統領が招待国としてカナダ入りしたのはトランプ氏が急きょ帰国することが明らかになった後。トランプ氏との面会はかなわず、肩すかしを食らった形だ。
一方、米政権は最近、貿易相手国に対し、協議の加速を目的に、交渉案の提示を要求したことが判明。各国との交渉で成果が出ていないことへの焦りも透ける。ベセント財務長官は、相互関税の上乗せ分の停止期間を延長する可能性に言及しており、交渉の長期化が現実味を帯びてきた。